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「黒猫ナイト」原画展 [本]

 ひょんなことから、自分の為に絵本を一冊買ってみた。
 誰かにプレゼントするためでなく、自分自身が読むために絵本を買うだなんて、よくよく考えてみればこの歳になって初めてのことかもしれない。

 きっかけは2月の末に、横浜は伊勢佐木町の書店、有隣堂で行われた東京イラストレーター・サエティーの会員108人による展覧会、「わたしとJAZZ展」を観に行ったこと(参照過去記事→http://blog.so-net.ne.jp/ilsale-diary/2007-03-25)。そして、その時の展覧会のポスターに採用されていた作品が気に入り、その感想を自分のblogに記したことからだった。そこで「もしも僕がアルバムをレコーディング出来る様なミュージシャンで、この日の出展作品の中から自分のCDのジャケットの為に、1枚の絵を選ばなくてはならなかったとしたら、きっとこの絵にするだろう」なんて勝手気ままな感想を述べていたら、或る日、その作品を描かれた御本人、イラストレーターの山崎杉夫さんがひょっこり現れて、コメントを残して行って下さったのだ。

 そのコメントの文末には個展の告知が一言添えられていた。
 




「昨日(4月10日)より22日(日)まで 元町・代官坂にある日本茶専門のカフェ「茶倉」(http://www.sakura-yokohama.com)にて個展を開催しております。元町にあるバーをモチーフにして書き上げた絵本『黒猫ナイト』の原画展となっておりますので、御興味ございましたら、お立ち寄りいただければ幸いです。」


 「黒猫ナイト」?、絵本の原画??。

 僕が山崎さんのお名前を知ったのは、失礼ながら前述の「わたしとJAZZ展」でのこと。
 故に、山崎さんのそれまでの活動やその他の作品等については何も存じ上げない。件のポスターになっていたイラスト1枚しか知らないわけだ。それならばと、早速Netで「黒猫ナイト」を検索してみた。

 そうして見つけた絵本の表紙(写真上)は、一目見ただけで思わずニンマリ。だって、そこには如何にも横浜のどこかの裏通りにひっそりと存在していそうなBARが1軒が描いてあって、その名も“BAR NEGRO”だなんてスペイン語で付けられている。これはどう想像してみたって、純然たる子供向けの絵本じゃないのは明らかじゃないか。何だか面白そう。お知らせ頂いたのも何かのご縁。喜んでお邪魔させて頂くことにした。


 今回の個展の会場となるカフェ、茶倉(さくら)は横浜・元町のメインストリートからちょっぴり外れた代官坂に在る。

 この代官坂って場所は元町商店街から山手の住宅地に向かう道で、さっきまでの賑やかな喧噪を離れて途端に人通りが少なくなる静かな通。かつてここには中~高校生の頃の僕が背伸びして通ったインポートがメインの小さな洋服屋さんが在ったりして、僕にとってもなかなか懐かしい場所だったりする。ただ、その店にあまり行かなくなってからは殆ど歩かない場所になっているので、この日は本当に久し振り。きっと5年振りくらいなのだろうか。とても懐かしい気持ちで、短い間に色々なことを思い出しながら歩く。

 着いてみると、茶倉はその僕が馴染みだった店の真向かいだった。
 如何にも女性に支持されそうな、すっきりとして洒落た店構えのカフェ。知らなければ日本茶専門店とは思わないだろうモダンな雰囲気で、前述の様に人通りが少なく静かな場所なので外観からも落ち着いてくつろげそうなイメージが漂っている。

 ただ、僕はこの日1人で出向いたのでちょっぴり腰も引け気味。普段から飲食店に1人で入るのは大の苦手だし、女性の多そうな店でお茶だなんて最も不得意なところ。待ち合わせだってどうにか相手よりも先に到着したくないくらいなんだから(苦笑)。けれども、この日はそれを我慢しないと、ここまで来て個展が観られないワケで、ひとつ大きく息を吐いてから、意を決して(おおげさ~・・・^^;)店内へ。


 店内に入ると、そこは外観以上にモダンな造り。壁の白を基調に、キャラメリゼされたような色合いの木製調度品がアンティークな雰囲気を醸し出していて、緑茶の葉独特の芳しい香りが立ちこめているのと相まって、とても居心地の良さそうな、感じの良いお店だった。

※「茶倉」につきましてはバニラさんのblogに詳しく紹介されています→http://blog.so-net.ne.jp/in_the_moonlight/2006-04-22
 

 その店内をぐるりと囲む様に、山崎さんのイラストが展示されている。

 この日飾られていた山崎さんの作品は、そのどれも角が無くてほんわりとしたもの。ハードボイルドなテーマを描いて居られるのでこう書かれるのは不本意に思われるかも知れないけど、探偵物語を思わせるサスペンス風の一場面でさえ何だか穏やかで、楽しく和めてしまう画風なのだ(^^。

 ずっと以前からそこに飾られている様に、お店の雰囲気にもとてもよく馴染んでいて、お茶を楽しみながら静かに、柔らかく流れる時間にぴったりだった。1人でのお茶が苦手の僕もアイス抹茶を頂きながら、いつの間にか、まったり(笑)。


 店内がほぼ満席で、それぞれのテーブルの後背に飾られた作品は遠目にしか眺められないのが少しばかり残念だったけど、壁に飾りきれない原画が何枚も収められたファイルも見せて頂き、一枚一枚自分のペースでじっくり堪能出来たので大満足。
 とても心地が良い時間を過ごせたな。来て良かった。


 お店の方から、夜7時頃になれば山崎さんもお見えになりますよ、と聞かされたのだけど、さすがに1時間も2時間もお茶だけでは過ごせない元来アルコール派の僕なので(苦笑)、この日この場所に来るに至った経緯をお話しして、山崎さん宛に「ご案内ありがとうございました。とても楽しめました」との伝言をお願いしてお店を後にした。

 もちろん、『黒猫ナイト』の絵本を自分の為のおみやげにしてね。



 

黒猫ナイト

黒猫ナイト

  • 作者: 山崎 杉夫
  • 出版社/メーカー: 長崎出版
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 大型本


【あらすじ】  とある港町に在る酒場バー・ネグロの専属ギター弾きのおじいさん、セニョール・パタタはみんなの人気者。そしてその店ネグロには1匹の黒猫が住んでいました。
 ある日をさかいに、パタタおじいさんが突然お店に現れなくなりました。ネグロのマスターとお客さんとの会話から、悪だくみをして店を潰そうしている一味におじいさんがさらわれたのではないかとの噂を耳にした黒猫は居ても立ってもいられません。大好きなギターを弾いてくれるおじいさんを探し出して助けなくては!。黒猫は夜の町へ飛び出して行ったのです。

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コメント 21

manbou

いい感じの個展ですね~私好みです。
「黒猫ナイト」も欲しい・・・
by manbou (2007-05-04 11:09) 

TaekoLovesParis

前の記事でyk2さんが、山形さんの作品を「しっかりと音が見える作品」と
気に入って「ご自分のCDジャケに選びたい」、とおっしゃっていた、、続編
ですね。あのとき、山形さんからのコメントを読みながら、私も近かったら茶倉に行きたいな、と思いましたよ。茶倉はバニラさんのオススメの店で
気になっていたし。

絵を見て、「あ、yk2さんのツボ!」ジャズとお酒と本が好きでおしゃれな
yk2さんだから。
木のぬくもり、骨太の輪郭、無駄がなくすっきりと。デザイン的な感覚の絵
ですね。もっと山形さんの絵が見たくなりました。
by TaekoLovesParis (2007-05-04 11:20) 

怪鳥

代官坂・・・いかにも「山手~」なお上品スポットですね。
奥様方、老夫婦のような皆様がよくランチしていらっしゃいます。
中高生でここに通ってたなんて生意気です(笑)
by 怪鳥 (2007-05-04 13:50) 

Sleepy

ああ...。
コレはイイなあ。
素敵な絵本の紹介をありがとう。
by Sleepy (2007-05-04 19:43) 

noriko

残念。
原画展は終わっているのですね。
でも、こちらのお店よさそう。
こんど元町に行く時に覗いてみます。
by noriko (2007-05-04 20:42) 

バニラ

わぁ~♪ 
茶倉でこんな素敵な原画展があったのですか! あそこではコンサートがあったり(あんな狭いところで!ですが) お茶だけでなく面白いところなんですよねぇ。 わたしなんて1~2時間は平気でいるけど やっぱり男性がひとりで来られるとちょっと目立つことは確かかも... でもお茶もおいしかったでしょ?
by バニラ (2007-05-04 21:35) 

julliez

黒猫ナイト、興味津々♪
yk2さんのイメージと(絶対に)違うと思うのですが、私は山崎さんの絵を拝見すると無性にアラン・パーソンズ・プロジェクトが聞きたくなります。
特にアンモニア・アヴェニューのアルバムあたりで。
モダンジャズもピッタリ(過ぎる)でしょうが、あえてこの辺りの音と一緒にお酒を。^^
by julliez (2007-05-05 01:13) 

yk2

manbouさん、nice&コメントありがとさんです。

個展も楽しかったし、会場となった茶倉さんも居心地良くって。
気持ちが穏やかに和んだ土曜の午後でした。

黒猫ナイトは大人も読めちゃう“ハードボイルドなおこちゃま養成絵本”です(笑)。楽しいよ。
by yk2 (2007-05-05 10:19) 

TaekoLovesParis

↑のコメントの訂正です。
山崎杉夫さん、お名前まちがえて、ごめんなさい。。
by TaekoLovesParis (2007-05-05 10:29) 

yk2

taekoさん、「山形」さんではありません。「山崎」 さんでございますので、念のため!。

と、書いてる途中でtaekoさんから訂正コメントが入りました(笑)

山崎さんの作品。そうですね、確かにツボにはまる物が多いです。次回の個展のご案内が頂ける様であれば、taekoさんにも是非お知らせしますね。

茶倉さんはね、確かに「ああ、バニラさんのblogに出て来そう」って感じのお店さんでしたね。オトコ1匹の僕がお茶を頂くのはちょっと照れくさかったです(^^;。でも元町散策にはとても良いお店だと思いますよ。この代官坂の先にはとても静かな元町公園(外人墓地の隣)もあって、意外な穴場なんです。この日は丁度その公園の花壇に咲くチューリップが見頃でした。
by yk2 (2007-05-05 10:34) 

yk2

怪鳥さん、おはようございます。
今年はスタジアムに通うのが楽しいでしょ?(笑)。
僕は来週神宮で古田ヤクルトとの遺恨試合(?)を観る予定でございます。

代官坂は今でこそお店も増えてきたけど、僕が15歳くらいの頃なんてなーんにもなくて寂しいトコだったんだよ~。元町の裏通りなんて誰も歩かない頃だったんだから。霧笛楼がそのちょっと後に出来て、それから段々にお店が増え始めたんだよ。僕がここを歩いていたのも、友達の家が山手に在って、石川町から徒歩で行くにはここが通り道だっただけなのです。
by yk2 (2007-05-05 10:44) 

yk2

sleepyさま、はじめまして。
(ですよね?、間違ってしまっていたらすみません・・・汗)

コメント頂き、もう少し絵本の紹介も足しておこうとあらすじを文末に加えましたのでご参考になさってみて下さい。
by yk2 (2007-05-05 10:53) 

Sleepy

コチラでははじめまして。(かな?)
"jazzっぽいの、好き?"では何度か...。
違ったかなぁ。
ロムってただけかなぁ。
by Sleepy (2007-05-05 11:05) 

yk2

てんとうむしさんは元町界隈にはよく行かれるでしょうから、茶倉さんはオススメ出来るカフェですね。この絵本のモデルとなったバーも元町に在るそうなので、そっちに行くのも楽しそう。
by yk2 (2007-05-05 11:07) 

yk2

バニラさん、こんにちは。
生まれて初めて抹茶をアイスで、それもストローで飲んだのは、なんとも妙な気がする体験でした(笑)。

taekoさんのコメントからバニラさんの茶倉の記事も読ませて頂きました。
僕はアイス抹茶しか飲んでないので(^^;、ちゃんとカフェのメニューのご紹介も出来てませんでしたので、せっかくなので本文にURLを追記、リンクを貼らせて頂きました。

ついでに見つけた本丸亭の塩ラーメンの記事。
ここ、前からかなり気になってたんです。僕もラーメン、ほとんど外で食べないんですが、読んだら益々行きたくなってしまいました(><)。。
by yk2 (2007-05-05 11:48) 

newyork

山崎さんの作品、本当にツボにはまりそうな感じの感覚の絵ですね。1枚ほしくなってしまいました。
by newyork (2007-05-05 11:52) 

yk2

julliezさん、こんにちは。
アラン・パーソンズね~、僕らが高校生くらいの頃にはかなり売れてました。でも、うん、お察しのとおり、僕はほとんど聴いたコトありません(苦笑)。

ネコはスラングでジャズ・ミュージシャンのことなので、「黒猫ナイト」も1ページ毎に似合う曲をジャズの楽曲から探してみるのも楽しい楽しいでしょうね。でも僕が先ず最初に思い出したのは純正ジャズじゃなくって、バーシアがいた頃のマット・ビアンコの「探偵物語」でした。結構ベタだよね・・・(苦笑)
by yk2 (2007-05-05 12:10) 

yk2

sleepyさん、「jazzっぽい」の方のお客様でしたか。
それはそれはありがとうございます。
音楽記事がすっかり滞っておりますが(苦笑)、そんな中でのご訪問、ひとえに感謝感謝でございます・・・(^^ゞ。

拙いことばかり書いておりますが、今後ともよろしくお願い致します。
by yk2 (2007-05-05 12:16) 

yk2

newyorkさん、こんにちは。

newyorkさんの場合は「1枚欲しい」とかそんなレベルでなく、いつの日か、子どもも大人も分け隔て無く楽しめるピアノ・アルバムをレコーディングなさって、山崎さんにそのジャケットを依頼されては如何でしょうか?。きっと愉快な作品になると思いますよ(^^。
by yk2 (2007-05-05 12:27) 

バニラ

リンクありがとう♪
茶倉は実家の母にも紹介してから
母は茶倉から毎月お茶を取り寄せているんですよ。
by バニラ (2007-05-06 08:48) 

yk2

バニラさん :

へ~、お茶の取り寄せも出来るんだ。
バニラさんがそうなさるくらいなのだから、かなり美味しいんでしょうね。
そのアイディア、来週用に貰っておきます!。
by yk2 (2007-05-07 22:12) 

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