スティーヴ・カーンのCDジャケットに観るジャン=ミッシェル・フォロン [ART]
月末なので、本当だったら5月のレコメンドCD2枚のネタをまとめ直すつもりでブログの新規作成ページを開いたのですが、途中で気が変わってしまいました。それと云うのも、サイドバー(画面左側)に掲載していたギタリスト、ステーヴ・カーンの『BORROWED TIME』(写真TOP)のアルバム・ジャケットが日米でそれぞれ違うことに気付いたからなのです。国内盤と輸入盤のジャケットが違うこと自体は珍しくもなんとも無いのですが、この違いは僕にとってはかな~り悩ましい問題。だって、どちらも大好きなジャン=ミッシェル・フォロンの絵なんですよ~。内容全く同じなのに、もう1枚買わなきゃいけないのかなぁ・・・(苦笑)
◆“BORROWED TIME”(2007)
※タイトルと年号はスティーヴ・カーンの作品タイトルとリリース年度です。本頁以下同様。
これが僕を悩ますUSバージョンのアルバム・ジャケット。
ううぅ~、フォロンの絵としては圧倒的にこちらの方が魅力的です。もしもLPって選択肢が在ったなら、ポスターを買うつもりになって迷わず即買っちゃうところなんだけど・・・。
ところで、このジャン=ミッシェル・フォロンという画家、僕は1983年から名前を知っているのですが、彼についての詳しいことは何も知りません。画集を持っているワケで無し、展覧会に行ったワケでも無し。彼の作品に触れる機会のほとんどは、ここに掲載したスティーヴ・カーンのアルバム・ジャケットとしてでした。
◆“CASA LOCO”(1983)・・・※廃盤
これが僕がスティーヴ・カーンとフォロンを知るきっかけになった1枚。確かオーディオ・メーカーのトリオ(懐かしい名前です)がレーベルを持っていて、そこからリリースされていたものと記憶してるけど、残念ながら今僕はこの作品のLPもCDも手元に持っていないので確認が出来ません。大好きなアルバムだったのに、どう云うわけか、間違えてCDを処分(!)してしまったのです。仕方無い、いつかまた買い直せばいいや、なんて考えていたのに、90年代初めのリイシュー以降はず~っと廃盤のまま(号泣)。今やまさに幻のアルバムで、それこそコレクターズ・アイテムみたいな作品になってしまいました。
オレンジ色の部屋はほんわりと温かく、宙に漂う淡いグリーンの球体は何やら不思議な幻想感を抱かせます。初めて見た時から忘れがたい親しみを感じ、僕はフォロンの絵に惹かれて行きました。
ただ、当時はいくらフォロンのことが気になったとしても、簡単には情報は得られません。今さらながら、あの頃だったら一体何をどうすればこう云う事を個人が調べられたのだろうと途方に暮れてしまいます。今日の様にインターネットが普及した時代と較べれば、まさに隔世の感がありますねぇ。彼は単にスティーヴ・カーンの友人の画家であるとしか紹介されていなかったのですから。
◆“TIGHTROPE”(1977)・・・※廃盤
フォロン(Jean-Mitchel Folon)はベルギー出身のアーティストで1934年ブリュッセル生まれ。当初は建築家を志していたそうですが1960年代より画家に転向。1969年には自身初の水彩画展をニューヨークで開催すると、その一年後には、東京、大阪、ミラノでも展覧会を開く機会に恵まれ頭角を現します。また、ニューヨーカー、タイムズなど雑誌の表紙や商業ポスター(オリヴェッティなど)の他、アポリネールやカフカ、カミュなどの作品に挿絵として作品を提供するなど活躍しました。残念ながら2年前、2005年に71歳で亡くなっています。
※この文の要旨はベルギー観光局のHPより引用しました→ http://www.belgium-travel.jp/destination/by_theme/culture/folon.htm
◆“THE BLUE MAN”(1978)
ブルーに描かれたこの帽子の男はフォロンの作品の代名詞的存在。
◆“EYEWITNESS”(1981)・・・廃盤
ベルギーで絵画と云えばクノップフをはじめとするベルギー象徴派を思い出しますよね。
この絵の赤い空に浮かぶ太陽らしき球体も輪が掛かり、まるで目の様にも見えませんか?。フォロンも何か別の物を象徴させているのでしょうか?。この不自然に残された線はなんだろう?と思ってよくよく見れば、これが人の顔であるのだろうと気付かされます。目の左は顔のラインと耳、右側が鼻なんですね。昔、初めてこのジャケットをレコード屋さん(CDが未だ無い時代ですから)で見た時はそうと気付かず、随分後になってから「あ~っ」。だからタイトルが「目撃者」ってワケなんだね。
◆“MODERN TIMES”(1982)・・・廃盤
◆“HELPING HAND”(1987)・・・廃盤
「もしかしたら、どこかでフォロンの絵を見たことがあるかも知れない」。これらの絵を見て、もしそんなふうに思う方がいらっしゃったとすれば、それはきっと87年頃に放映されていた東京
そうそう、学究肌タイプで気むずかしげに見えるスティーヴ・カーンは結構お茶目なトコもあるんです。このアルバムには“Dr.Slump”って曲が収められているんですよ。そう、あのアラレちゃんの(笑)。上の『MODERN TIMES』には“PENGUIN VILLAGE”って名付けられた曲も在ったくらいなんですから(^^。
◆HEADLINE(1992)・・・廃盤
◆CROSSING(1994)・・・廃盤
◆GOT MY MENTAL(1997)
こうやって並べてみたら、やっぱり画集が1冊欲しくなってしまったのですが、僕がネット上で調べてみた限りは残念ながらフォロン単独の画集は日本では出版されていない、もしくは現在入手不可能な物の様です。ベルギーには彼の美術館が在るそうなので、そこなら間違いなくカタログも作られているでしょうね。いつか、それを買い求めるついでに、本物のフォロンの作品に会いにベルギーを旅するのも悪くないかも。ただ、それには随分とお金を貯めなきゃね~(^^;。
◆フランス語ですがこんなHPもあります。→http://www.fondationfolon.be/
◆現在一般入手可能なスティーヴ・カーンのアルバムでフォロンの作品が使われているもの
※2007年6月2日現在 Amazon調べ
フォロン、わたしも好きです。
これはUSバージョン、ジャケ買いするしかありませんねぇ。
とってもかわいいもの♪
Dr.スランプ、ぺんぎん村の歌ってどんなのでしょう。 興味津々~
おはこんばんは~とかそんな感じ?
by バニラ (2007-06-01 08:50)
ジャン=ミッシェル・フォロンさんって全く存じませんでしたが
yk2さんの記事を読み進めるうちに
すっかりファンになったいました(笑)
絵本のような感じもするし、なんだか温かい気持ちになったり
ちょっぴり切ない気持ちになったり不思議ですね。
2枚並んでたら・・・オレンジのUSバージョン買っちゃうかなぁ~
だって可愛いし(笑)
でもオレンジってとても素敵な色なんだなぁ~と改めて思いました~
by シェリー (2007-06-01 12:50)
あぁ、やっぱり、東京電力のCM。2枚目を見て、あれ?って思いました。
たくさんの星が降ってくるようなストーリーじゃなかったかしら。
これはジャケットのため2枚買うしかないでしょう(笑)
・・・舞台写真追加、につられて同公演パンフ2部買っちゃう私です^^;;
by pistacci (2007-06-01 14:51)
yk2さんのサイドバーでジャケの写真を見ていたけど、あたたかみのある
色合いの象徴的な絵、と思っていただけ。ところが、2枚目のこのかわいいぼうやの絵!フォロンの名前は知らなかったけど、いっとき、とっても、はやりましたよね、ポスターとかCMで。文明社会をユーモラスにちくっと批判しているファンタジーの世界。
オリベッティのポスターを手がけてたんですね。オリベッティは昔、世界のデザイナーが注目するデザイン最先端のイタリア企業だったんですよ。タイプライターの時代ね。
スティーブ・カーンのジャケだけでも、こんなにすてきなものがたくさんあるんですね!「目撃者」の説明になるほど~と感心しました。顔ね。
HeadLineも楽しい!これも人の顔でしょ?お~、ロン・カーターと共演。
ほんと、画集がほしいですね。
by TaekoLovesParis (2007-06-02 00:50)
バニラさん、こんばんは。フォロン、ご存じなんですね~。
僕はコレクターじゃないので内容が一緒ならCDは1枚で充分。只でさえ毎月たくさんのCDが欲しいけど全ては買い切れないから散々悩んで買ってるというのに、このジャケット違いにはほとほと参ってしまいました(苦笑)。
「んちゃ!」とか言ってそうだと想像しちゃうでしょ?(笑)。
Dr.スランプとかペンギン村ってタイトルに付いてるとなんだかコミカル&キュートで楽しい曲のように思えちゃうのですが、音楽の方はインプロビゼーション中心のやや難解なインストなんですよ。自分でもギター弾いてるようなジャズ好きが喜びそうな音楽なので、まず女性受けは間違いなくしませんね~(^^;。
by yk2 (2007-06-02 01:02)
シェリーさん、こんばんは。
なんだか不思議な魅力の有る絵でしょ?。
例えばブルーマン。
一見穏やかで優しいんだけど、この画面からは誰もいない場所をずっと独りで旅してる様にも思えるし、どこか空虚で孤独な感じもして。でもその孤独って彼が望んでいる事の様な気もするから、決して悲観的なものじゃないんですよね。そんな捕らえどころの無い不思議さが僕は気に入っているのですね(^^。
USヴァージョンはオレンジ色がきれいで一見とても可愛いんだけど、やっぱり何か象徴する意図があるんだろうなぁと思うのです。それが何なのか、知りたいんですよね~。
by yk2 (2007-06-02 01:25)
pistacciさん、こんばんは。
そうそう!、星降る街を帽子の男性が歩いているイメージです。僕も忘れてたんだけど、よく覚えてらっしゃいましたね。
パンフレット2冊のオハナシ、爆笑です。僕の友人にもいるのですよ。些細な違いを見つけては絶対我慢出来ないコレクターくんが。
作る側もその辺はよく心得たものですね。
それでも買ってしまうのがファン心理。pistacciさんもよほどのご執心なのですねぇ(笑)。
by yk2 (2007-06-02 01:35)
taekoさん、こんばんは。
taekoさんがお買いになった国内盤のフォロンの絵は「時間劇場」ってタイトルなんですって。今回スティーヴ・カーンは“BORROWED TIME”ってタイトルからイメージに合うものをフォロンの画集から探し出したそうです。これ、「人生に残された、限りある貴重な時間」って意を込めたタイトルなんですって。
#じゃあ、USヴァージョンはどうなのよ?って訊きたくなっちゃいますが(笑)
オリヴェッティはタイプライターを始め、以前はほんとにかっこいい工業デザインのイメージがありましたよね。でも世のパーソナル・コンピュータへの移行に乗り遅れてすっかり聞かなくなっちゃいましたね。
フォロンの描いたポスターはここで見る事が出来ますよ。
http://www.metropolitan.co.jp/onlineshop/olivetti/s_folon3.html
画集はtaekoさんみたいにフランス語が堪能だったら向こうのものも読めるけど、僕は買っても絵しか眺められないからなぁ。どこかの美術館が展覧会してくれたら手っ取り早いのに。
by yk2 (2007-06-02 02:07)