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あとづけ日記 / 07年12月分 [いつかの出来事]

  【1】第92回院展を観る

第92回院展.jpg

 普段から旅行のお土産を頂戴するなど何かと気を遣ってくれる友人たちへ、何かお返しにクリスマス・プレゼントでもと出掛けた横浜そごう。何にしてよいやらサッパリ思いつかず、これでもない、あれでもないと散々に悩みまくって売り場をウロウロ。次第に頭が混乱して来てしまって何も決められない。よく効いた暖房のせいも有ってか、頬が火照り始める。次第に頭がボーっとのぼせるような心地もしてきて、買い物が終わらない内からひどく疲れてしまった。これはひとまずお茶でもささっと飲みながら作戦を練りなおした方が好いみたい。そう思って向かったエスカレーターの脇に、この第92回院展のちらしが置いてあったのに気が付いた。エメラルド色したヴェネツィアの海を白く照らすのは、落ち行く夕日?、それとも黄昏の赤い月だろうか。幻想的に浮かぶ“沈み行く都”。詩情を掻き立てられるようなその光景に目を奪われる。ふと、大好きな塩野七生の作中、ゲーテが「ヴェネッツィアには海から入るべし」と云ったとか云わないとか、そんな話を思い出した。

 そうだ、お茶を飲むより、これを観てクール・ダウンするのも悪くないかもね。

 この絵のヴェネツィアに誘(いざな)われるように、僕はそごう美術館の中へと入って行った。




 僕は絵が好きなので、年間を通じてそこそこ展覧会へ出掛ける方ではあると思うのだが、やはり観るのは西洋美術中心。現代日本画はほとんど目にする機会が無いと云ってよい。その類の展覧会はず~っと遙か昔の学生時代に、女子美に通っていたガールフレンドに連れられて行った日展以来だろうか。要は自発的に現代日本画を観ようと思ったのは初めて。そして、そごう美術館に来たのも随分と久し振り。こちらはいつ以来だか、すぐには思い出せない。

 平日の18時半過ぎ。館内の人影はちらほら。ちらしのヴェネツィアの絵は、入ってすぐの右突き当たりに展示してあった。松尾敏男さんという作家さんのその画は、残念でした夕日でも赤い月でもありません、の『朝光のヴェネツィア』と云うタイトルだった(苦笑)。

 ヴェネツィアに行ったことがない僕にとって、彼の地のイメージは映画で観る世界。今年観たDVDにも『ベニスに死す』『夏の嵐』という2本のヴィスコンティ作品がある。そのどちらもハッピー・エンドとは云えない、むなしいエンディングの映画。そんなことのせいで、この絵の印象を即座にヴェネツィア→退廃→黄昏若しくは落日と連想付けてしまっていたのかもしれない。そんな当初の印象も、そうか、朝日なんだと知らされれば、それは途端に明るく輝くイタリアの陽光にも思えて来てしまうからゲンキンなもの。僕の持つファースト・インプレッションなんて、如何にいい加減なものなんだか判ろうと云うものデスね(^^;。


 それにしても、さすがに現代日本画壇を代表する作家たちが一同に作品を揃える「院展」とはなかなかに面白いものではないか。皆さんは当然現在進行形でご活躍の方ばかり。作品には当然著作権が絡んでしまうので、ここで見やすいサイズの画像ではご紹介出来ないのだが、それが心底悔しいくらいに心動かされる作品が幾つも出展されていた。銀地に墨色で力強い祭りの男たちを描いた松村公嗣さんの『はだか祭』、同じく銀地(切り箔?)に散りゆく桜の花びらを降らせ、その中、セーター姿で乗馬する女性を描いて日本画の伝統性と現代感覚をロマンティックに交差させている西田俊英さんの『惜別・櫻』、まるでマリメッコの服地を思わせる北欧風デザインの琳派とでも喩えようか、伊藤髟耳さんの『秋田・玉川・そよ風』、抑えられた日本絵の具の色調の中にルドンのような華やかさを湛える山田伸さん『幻影』、モノクロームの母子の肖像に同じくルドンの色彩(『ブッダ=Le Boudda :1905』を思い出させる!)を与えたような宮北千織さんの『母子』と、気に入った作品を並べていったらきりがない。年の最後に、思い掛けずとても良い展覧会を観られたと嬉しくなってしまった。

第92回院展_02.jpg
(作品上段左、平山郁夫 : 『古代ローマ遺跡 エフェソス・トルコ』 同右、松村公嗣 : 『はだか祭』、中段左、伊藤髟耳 : 『秋田・玉川・そよ風』 同右、福井爽人 : 『儚』、下段左、吉村誠司 : 『雛祭』 同中、西田俊英 : 『惜別・櫻』 同右、手塚雄二 : 『憬』)


 唯一残念だったのは、予算の所為だろうか、図録の出来映えに魅力を感じなかったこと。日本画は、その大きさも魅力の内。このカタログに収められた小さな写真では、到底この日目の当たりにした実物の素晴らしさなど決して甦らせてはくれないだろうと、購入する気に至らなかった。惜しいなぁ。



  【2】葡萄組関東支部忘年会

 そごうで頭を悩ませていたのは、この日会う方々へのプレゼント選び。みなさんそれぞれ個性的でおられるので、本当に悩みました。特に某J嬢の分(笑)。

4_葡萄組忘年会2007_02.JPG

 これはこの日皆で持ち寄ったワインたち。僕は久々に手に入れたRMシャンパーニュ、雑誌ブルータスのお陰でなかなか買えなくなってしまったベレッシュを持参。この黒いラベルのレセルヴは初めて飲むキュヴェ。Tねーさんは僕が飲みたいと云ったルネ・ジョリィのロゼを持って来て下さった。大好きなんですよね~、このロゼ[ハートたち(複数ハート)]。で、J太くんは何故か意表を突くイタリア・ワインとカヴァ。これはきっと普段の僕の飲んでるワインを見て、cdmせんせが何らかの差し金を入れたに違いない(って、勘ぐりすぎ?・・・笑)。

4_ferre.JPG

 シャンパーニュがこの先値段高騰は免れそうもない、って話題からこのカヴァを持って来てくれたそうなんだけど、確かにこれは美味しい泡。おそらく市場には2000円台で出回るだろうとのこと。後半だともう少し足してシャンパーニュに行っちゃうだろうけど、前半なら嬉しいね。

 それはそうと、持って行ったプレゼントはそれぞれ予想どおりの反応が返って来て面白かった。物はビレロイ・ボッホのマグ・カップを絵柄違いにして。お1人分は明るい図柄ながら品の良い雰囲気の漂う物に。お次はちょっぴりエスニックな雰囲気のカジュアルな図柄。これらはすんなり決まったのだけど、問題は最後の1人(笑)。どうしたって趣味が相容れないだろうと予め思って、散々迷った挙げ句、自分なら絶対選ばないだろう物を敢えてチョイスしてみた。それは70年代のブラック・カルチャー風味に女の子が描かれている絵柄で、大凡ヨーロッパ的な雰囲気を持つビレロイ・ボッホ本来のブランド・イメージとは随分かけ離れているようなデザイン。マイルス・デイヴィスがアルバム『ON THE CORNER』のジャケットに描いていたようなポップなイラストのイメージを思い浮かべたんだ。ニューヨークに住んでた事もあるって云うし、もうこれでいいや、と(^^;。

Miles Davis_On the Corner.jpg

On the Corner

  • アーティスト: マイルス・デイヴィス
  • 出版社/メーカー: Sony/BMG Japan
  • 発売日: 2000/08/03
  • メディア: CD


 結果は案の定唇をとがらせ文句の雨あられ。「なんで私のだけこんなんなんですか~[むかっ(怒り)]、そもそもワタシ、コーヒー嫌いで飲まないし!!」との真顔の抗議にみんなは大爆笑。ま、そんなリアクションも誰かさんらしくて楽しかったけどさ(^^。適当に職場の湯飲みにでも使って下さいな。

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TaekoLovesParis

yk2さん、ヴェネツィアにいらしたことがなかったんでしたっけ?
「ヴェニスを見てから死ね」という言葉があるほど、美しい別世界なんですよ。ぜひ、ぜひ、ぜーひ、いつの日か。

プレゼントってもらうと、その品物に関心がいってしまい、それを探すために、どれだけの苦労があったかまで考えが及ばなくて、「これ、探すの大変だったのよ」といわれて気づく。このときも、沸きましたね!大笑い。J嬢は、「なんでコレが私の分なのよ」って不満いっぱいだったし。
マイルスのアルバムからの発想とは思いもよらず、、あの時の話題の
別のJ嬢の名前も出ちゃうし~。今、思い出しても笑えます。
すっかり忘れた頃、あのカップは今、<ミルキーの入れ物に>
というコメントが、せんせからはいるし~で、yk2さん、いい選択でしたよ。ヒットです。

私は、素直に喜んで、コーヒーカップとして使っておりますからご安心を。

by TaekoLovesParis (2008-12-22 21:05) 

yk2

taekoねーさん、こんばんは。

出発直前に、それもこんな1年前のお話(爆)にコメント頂いて恐縮でございます(笑)。

ヴェネツィアねぇ、行ったことないんですよ~。
洋一さんのお話だと全てが観光地値段で物価がイタリア1高いとのこと。それはやだなぁ~(^^;。
本場でベリーニとカルパッチョを味わいたい気もしますが、彼の地が沈む前に果たしてワタクシが行く事はあるのでしょうか(笑)。

>私は、素直に喜んで、コーヒーカップとして使っておりますからご安心を。

ありがとーございます~。
ヨメに出した以上は焼くなり煮るなりもうどうされても構わないのですが、どっかの誰かさんと違ってちゃんと使って頂いているとのこと、嬉しゅうございます。大体ですね、身内なら兎も角、友人にプレゼント買ってあんなに文句云われたのは、初めてですよ、まったくもうアヤツは(苦笑)。

あのデザインのカップはコーヒーの産地に因んだ絵柄だそうで、今年も同じコンセプトでまた違った柄のコーヒー産地シリーズがリリースされてるみたいですね。

by yk2 (2008-12-22 22:38) 

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