SSブログ

クリスマスの頃に思い出す映画 [映画・DVD]

081212_01.JPG

 世界的な経済不安が拡がり明るい話題が本当に少ない昨今ですが、それでも季節はもうじきに年の瀬。クリスマス・シーズンですね。華やかにきらめくツリーの電飾の下で、楽しげにはしゃぐ幼い子たちの様子など眺めていると、微笑ましく、ほんの一時ではありますが、世相の暗さを忘れられる様な気がします。

実はこのツリーの写真を撮った日は、今年も何か良いクリスマス・アルバムが出ていないかなぁとCDショップへ出掛けてみたのですが、試聴してみるとどれも今一つ気に入る様な内容ではありません。昨年手に入れたティル・ブレナーエミリー・クレア・バーロウの作品がとても気に入っていたので、これらと同レベルであれば喜んで買って帰って、このblogでレヴューなんぞ書いちゃおうかと考えていたのですが、どうやらあっさり空振りしてしまった模様(苦笑)。

 その代わりと云ってはなんですが、特にクリスマスがテーマでなくとも、クリスマスの頃になると、つい僕が思い出してしまう映画を2つばかりご紹介しておきましょう。




恋におちて_250.jpg
[映画]『恋におちて』

( あらすじ )

 クリスマス直前の暮れ時のマンハッタン。互いの家族のためにプレゼントを買い求める見知らぬ男女が書店ですれ違い、ふとした弾みでそれぞれの妻と夫に買い求めた写真集が入れ違ってしまう。その時はそのまま分かれて二人の間には何も起きなかったのだが、暫くの後、帰宅する電車の中で偶然に再会し、互いが隣の駅に住まっているのだと知る。束の間の会話を交わすも、やがて電車は男(デ・ニーロ)が降りる駅に。別れ際、咄嗟に翌日の朝は電車に乗るのかと問う彼に、戸惑いながらも時刻を伝える女(ストリープ)。二人はそれから同じ電車に乗り合わせる様になり、短い車中、互いの家族の事など語り合うようになる。二人の会話は誠実で、そこには洒落たムードも恋のゲームに誘う甘い言葉もない。しかし、だからこそ二人は互いに心を許し始め、惹かれ合い、やがて恋におちてゆく。


 12月に入ると、毎年必ず風物詩として紹介されるクリスマスの光景の1つに、ニューヨークのロックフェラー・センターのツリーに今年も灯が点されました、って話題がニュースなどで流されますよね。アメリカに行った事の無い僕にでさえお馴染みのこの光景を目にすると、思い出すのはロバート・デ・ニーロメリル・ストリープが主演した『恋におちて』。そもそも、僕がロックフェラー・センターのツリーやスケートリンクを知ったのは、この映画を観たからだったかも知れません。

 僕がこの映画を観たいと思った動機は、実は音楽のせいでした。大好きなフュージョン系ピアニスト/キーボード・プレイヤーのデイヴ・グルーシンが音楽を担当していたから、です。冒頭のシーンから流れるテーマ曲“マウンテン・ダンス”も当然彼の作品。だからでしょうか、当初は映画自体あまり面白かったような印象も残らなかったのです。まだハタチ位で若かったから、中年男女の純愛物なんて、全く興味がなかったのかも知れませんね。それとも、音楽ばかりが気になって、ちゃんとストーリーを頭が追ってなかったのかな?(苦笑)。

 仕方のない事ですが、当時の僕には、こう云った感情を抑えた大人の恋愛物語がまだ理解、実感出来なかったのですねぇ。30歳を過ぎた頃になって、改めて見なおして、ああ、こう云う映画だったんだなぁ・・・と、しみじみ共感出来るようになりました。

 それでも、

 「何もしていない」
 「それの方がよほどひどいわ」

 不穏な空気を察して問い詰める妻とデ・ニーロの間で交わされたこんな台詞は、今なお、どちらがより罪な事なのだろうか考えさせられてしまいます。

 ま、相変わらず結論付けられないってコトは、初めてこの映画を観た20歳の頃よりさして僕の精神が成長してないって証なのかもねえ・・・(^^;。


恋におちて [DVD]

恋におちて [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • メディア: DVD



マウンテン・ダンス

マウンテン・ダンス

  • アーティスト: デイヴ・グルーシン,マーカス・ミラー,ジェフ・ミロノフ,イアン・アンダーウッド,エドワード・ウォルシュ,ハービー・メイソン,ルーベンス・バッシーニ
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1998/07/29
  • メディア: CD






 『恋におちて』が大人向けなので、お次は家族向けのものを。

ビヨンドサイレンス.jpg
[映画]『ビヨンド・サイレンス』(原題“Jenseits der Stille”)

( あらすじ )

 耳の聞こえない両親の間に生まれた愛らしい少女ララは、健気にも幼くして両親の“耳”を務める。学校の保護者面談、父の勤める会社、銀行と、あらゆる場面で大人たちの会話を聞き、それを両親に手話で伝えるしっかり者。時には自分にとって都合の悪いこと(宿題しないで先生に叱られた!)や面倒なことはちゃっかり曲げてきちんと通訳しなかったりと、ちょっぴり大人びた顔してインチキ(^^もするけれど、それでも夜中の雷が恐くて恐くて、たまらず両親のベッドにもぐり込んだりしちゃうごくごく普通の女の子。実直で優しくも頑なに過ぎるきらいがある父、ちょっぴり世間知らずでおっとりとしているけど、とてもチャーミングな母との暮らしはそれ程豊かではなくとも充分に幸せで、ララは伸び伸びと毎日を過ごしていた。
 或る時、クリスマスを両親と共に父方の祖父母の家で祝うことになったララは、そこで美しいクラリネット奏者である大好きな叔母が祖父のピアノに合わせて演奏する様にすっかり心を奪われてしまう。叔母はそんなララに自分が子供の頃使っていたクラリネットをプレゼントするのだが・・・。


 柔らかで瑞々しい感性を以て少女の成長を描き、隅々まで配慮の行き届いた女性らしい視点と映像で『名もなきアフリカの地で』、エーリヒ・ケストナーによるドイツの児童小説を原作とする『点子ちゃんとアントン』など心温まる佳作を世に送り出しているドイツの女流監督、カロリーヌ・リンクの監督デビュー作(1997年)。

 この『ビヨンド・サイレンス』は残念ながら現在、DVD販売会社のカタログから落ちてしまっているようで、新品では手に入らないかもしれません。また、Netで調べた限りはTSUTAYAさんのレンタル・ラインナップにも見当たらなくって(※VHSはあるらしい)、ここでご紹介しても、なかなか簡単にご覧頂けない作品かも知れません。

 ですが、もしかするとCS放送やら何かでこの先偶然目にする機会が無いとも限りません。そんな折、この映画のタイトルにお気付きになったら、是非とも見逃さないで欲しいのです。絶対にお薦め出来る作品なんですから!。

 耳の聞こえない両親と、皮肉にもその両親の耳には決して届く事のないだろう音楽を志すことになる娘・ララとの心の遣り取りと成長の物語。家族の触れあい、愛情と反発、互いに負った心の傷、決別、そして理解。

 監督のリンクはここで「ろうあ」の家族を真正面から取り上げていますが、社会問題として高所から振りかざすのではなく、単に「或る1家族の物語」と云う視点で綴っています。一見とても重そうなテーマで、本当を云うと観る前には僕の腰も引け気味でした(^^;。でも、両親の耳が聞こえないと云うだけで、そこに描かれるのはどこの家庭にも起きるだろう親子の葛藤であり、何ら特別なものではありません。是非、まっさらな気持ちで何も考えずにご覧頂きたいお話なのです。

 出来ましたら、(入手の難しさはさておき)賑やかで楽しいクリスマスを過ごした後に家族揃って観て頂きたいものです。見終わった後には家族みんなが、なんとも温かで、清々しい気持ちでいっぱいに満たされると思いますよ。そして、お互いがお互いの事をより以上に思い遣れるように、きっとなれるはず。


 それにしても、こんなにも良い作品が制作からたった10年くらいでカタログ落ちだなんて、なんとも残念でなりません。たくさんの人に観てもらいたいから、手頃な価格で再生産リリースしてくれると嬉しいなぁ>メーカーさん。

ビヨンド・サイレンス [DVD]

ビヨンド・サイレンス [DVD]

  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • メディア: DVD



名もなきアフリカの地で [DVD]

名もなきアフリカの地で [DVD]

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • メディア: DVD



点子ちゃんとアントン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

点子ちゃんとアントン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: CICビクター・ビデオ
  • メディア: DVD



nice!(7)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 7

コメント 6

pace

5番街のあの本屋さん
ペンステーションの雑踏・・・・・・・
NYから帰ってきてから観たのでなんだか懐かしかったですね
音楽はデイヴだったんだね

by pace (2008-12-24 13:55) 

Inatimy

クリスマスイヴ、チェコの人々の定番、鯉のフライとポテトサラダを食べてきました♪ 味は、そのまま文字通り・・・って感じかなぁ。 今、ティル・ブレナー、がんがん聴いてます♪
by Inatimy (2008-12-25 06:02) 

hatsu

「ビヨンド・サイレンス」、
見てみたいですね^^
心にとめておきます☆
by hatsu (2008-12-25 06:35) 

pistacci

NYのクリスマスというと、なぜか映画で雪が降っているイメージを勝手に持っていましたが、実際は、あまり降らないのだそうですね。
夫婦のセリフの意味・・・私もまだ、経験不足です。

by pistacci (2008-12-25 21:26) 

mom

お久しぶりです(クスクス)。
更新があまりにないので心配していたのですよ。開口カバさんのことを早くお知らせしたかったからね。
そしたら、ご挨拶とこのアップ。

デ・ニーロは大好きだけれど、メリル・ストリープ・・・嫌いなんだよなあ。
でもフュージョンが好きなマムとしては明解かつ軽快なマウンテン・ダンスは嫌いではありません。マムはリアルタイムでこの映画をみたのですが、
本屋が気にいりました。デ・ニーロはなにをやってもステキ。

で、ね。
クリスマスになると思い出す映画を思い出そうとず~っと考えてたの。
そしたらその間にyk2さんが、マムのブログにコメントをくださったというわけです。

仏像マニアになっちゃたマムがクリスマス期に思い出す映画を時間をかけて考えついたものは・・・情けない!!!
なんとどたばた喜劇のホーム・アローンでしたっ。

結論・・・マムってがさつなのね~。
よいお年をね。
by mom (2008-12-28 00:10) 

yk2

あっと云う間に大晦日。まだ自分の年賀状も書いてなければ大掃除も済ませてません(滝汗)。気ばかり焦って、のんびりblogにコメントなんて書いてる場合か~!>ぢぶん、な気分でございますが、ま、今さら焦っても仕方ないですね(^^;。

◆paceさん :

GRP ALL-STARSでの演奏など、リーのファンにもかなりお馴染みの“マウンテン・ダンス”なので、paceさんがこの映画の音楽担当がデイヴだとご存じなかったのはす~んごく意外です。それにしても、さすがpaceさん、住んでいらした方ならではのコメントでございますね。カッコイイ~(^^。

◆Inatimyさん :

チェコって、鯉食べるんですね~(意外)。
僕は淡水魚って結構苦手なものが多いんだけど、美味しかった?。
フライならまだ食べられるかなぁ・・・。

ティルのクリスマス・アルバム、がんがん聴いてますか(笑)。
それはご紹介した甲斐がありました(^^v。

◆hatsuさん :

『ビヨンド・サイレンス』はとてもとてもとても良い映画です。
ゼタジョーンズ主演のハリウッド作でなく、リメイク元のドイツ作品の方の『マーサの幸せレシピ』を良い映画だと思われる方なんかだと、絶対に気に入って下さる作品でしょう。いつかご覧頂けると好いのですがねぇ・・・>廃盤TT。

◆pistaさん :

つい先ほど、pistaさんの“blogおやすみ宣言”を読んでしまったので、ちょっとしんみり、です。“啓蒙活動”だって未だ道半ばですよ。なにもpistaさんも「篤姫」と一緒に終わらなくて良いのです(笑)。

早く帰ってきて下さいね(^^/

◆momさま :

ふふ、まーるで更新してないようにみえて、今月はデッド・ストックになりそうな古い下書きを2、3つ仕上げて密かにUP(笑)しているので、実は僕としては結構書いているのですよ。今さらみなさんに読んでいただくようなものでもないので、UPの日付は書き始めた日のままで、新しくしていないのです(^^;。

青カバのお話はmomさんトコでしたのでここでは割愛。

>メリル・ストリープ・・・嫌いなんだよなあ

ま~た、momさんったら・・・(笑)。
ま、ストリープは確かに好き嫌いが分かれる女優さんですよね。
ハタチくらいの頃の僕が、この映画をあまり印象的に感じなかったのも、彼女に“分かりやすい”表層的な女性的魅力を感じなかったせいもあったと思いますもん(^^;。

>なんとどたばた喜劇のホーム・アローンでしたっ。

ハチャメチャなところ、破壊的なおもしろさ、と云う点でいかにもmomさんらしいチョイスかと(笑)。

来年も、お元気で!
#それでもやっぱりmomさんは“ほどほど”が良い様に思います・・・^^;。
by yk2 (2008-12-31 11:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0