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ピカソの「白い服の女」から“お手本”を遡る(その2) [ART]

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 前エントリーに引き続き今回もピカソの絵のお話。彼の描いた『白い服の女』(写真トップ、上段左)は一体どう観ればドミニク・アングル風なのか?と云う疑問からスタートしたテーマ、「ピカソと彼の“お手本”となった巨匠たちの絵画を巡る」の後編。前回はアングルの『ヴァルパンソンの浴女』から始まってドガ、カサットと続き、ロートレックを経由してピカソに至る“女性の背中”を描いた作品を並べてみたけれど、今回はさらにもう1枚別のピカソ作品、『髪結い』(写真トップ、下段右)で描かれている“化粧、髪を梳く、整える女”と云う題材に沿って、ピカソが模範としたマスターピースを辿ってみたい。
 さてさて、結果、どれ程『白い服の女』とアングルの関係に迫ってゆけるでしょうか?(^^。


前回の記事 : ピカソの「白い服の女」から“お手本”を遡る(その1)
http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2009-01-06




ピカソとシャヴァンヌ

 そもそも、僕がここでピカソを取り上げたのは、ソネブロで知り合ってすっかり美術友達(実際はワイン飲み友の方が正しい・・・^^;)となったtaekoさんが昨年末のパリでご覧になった展覧会“Picasso and his Master”が事の発端なのだ。

 「ピカソはともかく、彼が影響を受け、リスペクトしていたと云われる画家達の作品が一堂に会していて素晴らしかったのよ。セザンヌ、ドガ、ゴヤらの作品をオリジナルに則って写したり、彼のスタイルでデフォルメ、変奏しているの。マネの“オランピア”や春に上野で観たテッィツィアーノの“ウルビーノのヴィーナス”なんて超名作にもまた会えました!」と、展覧会の様子を嬉々としてお話して下さった。

 その会話の中で、僕等が共通して好きな画家、どのような派にも分類されることのない独自の画風で後進に多大な影響を与え、象徴派の先駆けともなったピュヴィス・ド・シャヴァンヌの名前も出された。実は彼もピカソに大きな影響を与えた画家の1人だったのだとか。

Chavanne_05.jpg
◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『夢』(1883) オルセー美術館蔵


 「へ~、ピカソとシャヴァンヌねぇ。あんまりイメージ結びつきませんね」。

 普段、あまりピカソの作品には深く興味をそそられない僕には、両者の作品から得る感覚、印象は全くの別物。まるで共通項が浮かんで来ない。しかし、大好きな画家であるシャヴァンヌの作品が、果たしてどんな影響をピカソに与えていたかについては、とても興味が有る。

 「早くblogに書いて下さいね!。読むの、とっても楽しみにしてますから」とのリクエストをお願いしておいた。

 そうして、年明けに早速taekoさんが書いて下さったのがこちらの記事 → http://taekoparis.blog.so-net.ne.jp/2009-01-04

 
 その展覧会で、シャヴァンヌに影響されてピカソが描いた作品として展示されていた絵は、『髪結い』(写真トップ、下段右)と云う作品。そしてこの絵の着想元になったとされる作品はと云うと・・・

Chavannes_海辺の娘たち.jpg
◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『海辺の娘たち』(1879) オルセー美術館蔵

 え~っ?、この絵ですか?。
 これはちょっと意外な展開。確かに、両者には髪を整える後ろ姿の女性が描かれているけど・・・、選りに選ってこの絵なの??。

 確かに、このシャヴァンヌの作品は彼の代表作であり、この絵に大きく影響を受けたとされる画家はとても多いと聞いている。僕が物の本などで読んでいてパッと思いつくだけでも、ドニ、スーラ、エドモンクロス、シニャック、マティスら、錚々たるメンバーの名を思いつく。

 ただ、それはこの絵から連想するだろう“ヴィーナスの住まう世界=パラダイス(楽園思想)”と云うテーマが、シャヴァンヌの描く独特の敬虔かつ静粛なタッチ、幻想的で象徴性を帯びた題材、単純化された線による簡潔なフォルム、フレスコ画を思わせる淡い色彩感覚など全てが相まって唯一無二の絵画世界を生み出しているからこそ、多くの画家に啓示を与えたのであって、シャヴァンヌ以前からよくあるテーマとしての“髪を整えるヴィーナス”自体が今さらにクローズアップされたものでは決してない筈なのだ。

 髪を梳く女性を描いただけで、これを以てシャヴァンヌからの影響としてしまうのはあまりに安直なのではあるまいか。だって、このテーマならばピカソに影響を与えた他の画家たちだって描いている。それも、シャヴァンヌの絵に溢れる神話・宗教的世界でなく、ピカソの描いたごく日常の髪結いの光景によっぽど近い表現で。

Degas_H06.jpg Lautrec_H02.jpg
◆左、ドガ / 『髪を梳く女』(1890~92) オルセー美術館蔵
◆右、ロートレック / 『髪を結う女』(1891) オルセー美術館蔵


 そして、当のシャヴァンヌの作品にだって、モデルの向きこそ正反対ではあるけれど、まさにピカソの『髪結い』と一致するような絵が存在する。

Chavannes_02.jpg
◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『化粧』(1883) オルセー美術館蔵

 taekoさんのblogを読んで、僕はこのシャヴァンヌの『化粧』のことを思い出した。
 すぐにこの絵が載せられているオルセーの本を開いて、PCモニターに映されているピカソの『髪結い』とをしげしげと見比べてみた。

 ここで、はたと思ったのだ。
 このシャヴァンヌの描いている女性は何かに似ていないか?。僕の知っている他の絵の何かに・・・。ピカソとシャヴァンヌ?。

 ・・・そうだ、あの異色のピカソ。ただ1枚だけ、ピカソの作品の中で僕が好きなあの『白い服の女』に似ているのでは?。

 早速メトロポリタン美術館展の時の図録を引っ張り出して両者を見比べてみる。
 体の向きは反転させてあるものの、ポーズは近いものがある。なにより、モデルの顔つきがとても似通って見える。

 僕は咄嗟に思ってしまったのだ。ひょっとして、ピカソの『白い服の女』は、直接アングルを模したのではなく、シャヴァンヌのこの『化粧』が着想元だったのではないだろうか?と。しかし、ピカソのすぐ傍でその制作過程を見ていたジョルジュ・ブラックが当時のピカソ作品を「アングル風」と評していたのは紛れもない事実。だとすると、もしかしたらピカソとシャヴァンヌは共通したアングルをお手本にしていた可能性も否定出来ない。果たして、そんな絵が存在するのだろうか。

参考画像
Picaso_水浴1918R.jpg
◆パブロ・ピカソ / 『水浴』(1918)パリ国立ピカソ美術館館蔵

 僕が思うに、大分変奏は効かせているものの、こちらのピカソ作品こそがシャヴァンヌの『海辺の娘たち』の直接的な影響下にあるのではないでしょうか。※因みにこちらもピカソ新古典主義時代の作品です。


★ ★


シャヴァンヌはアングルに影響されていた?

Ingres05.jpg
◆左、ドミニク・アングル / 『泉』(1820-56) オルセー美術館蔵

 ここで、アングルの作品を見て頂きたい。

 この愛らしく美しい女性像の制作にアングルが着手し始めたのは、彼がまだフィレンツェに滞在していた頃だった。右足を軽く折って浮かせ、体はなだらかにS字を描いている。この女性のポーズはギリシャ古典期のそれに則っているもので、アングルはボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』から着想を得たと云われている。制作は多年に亘り、アングルの弟子達の手も加わって彼の晩年にようやく完成した。発表後、当時の画家達に盛んに模写され、多大なる影響を与えた事でも知られるアングル渾身の大傑作だ。

 このポーズと、シャヴァンヌの『海辺の娘たち』の背中を向けて髪を手にしている女性のポーズを見比べてみて欲しい。手の向きは左右反対ではあるけれど、裏表をひっくり返すと、とてもよく似ているとは思えないだろうか?。

 実際に自分でこのポーズを模してみるとよく解るのだが、アングルが採用したポーズは、女性が頭の上越しに水瓶を持つと云うやや不自然なもので、長時間この姿勢を維持するのはモデルにとってはかなりの苦痛だったろう。対するシャヴァンヌの方はと云うと、顔の前を通した無理のないポーズを採用している。しかし、このシャヴァンヌの絵の女性に、そのまま水瓶を持たせてみたらどうだろう。

 勿論、アングルの作品には前回ご紹介した『ヴァルパンソンの浴女』と云う女性の背中を描いた一大傑作が存在する事も見過ごせない。

 そしてもう1点。画面右下に横たわり背を向ける女性からは、同じく前回掲載のアングル作、『グランド・オダリスク』を思い出しはしないだろうか?。

 シャヴァンヌはその作風の独自性からどの派にも分類されなかった(あえて後に興った象徴主義に、その先駆けとして加えられるケースはある)とは上でも述べたが、その所為も有って同時期に活躍したマネやドガ、その他印象派の画家達と較べれば、ここ日本で紹介される事が極端に少ない画家だ。彼単独の画集なども手軽には手に入らず、オルセー展図録などに添えられた解説以上に詳しい事は、僕もほとんど知らない。そして、僕が持っているオルセー関連の何冊かの書籍には、アングルとシャヴァンヌの関係について述べているものは1つもない。そもそも、シャヴァンヌはアングルの宿命のライバル、ドラクロワの指導を受けていた画家なのだ。

 それでも、僕はシャヴァンヌがアングルの描く女性像に大きく影響を受けていたのでは?、と以前から勝手に思い込んでいる。他の画題なら兎も角、誰よりも天才的に女性を美しく描いたアングルを、同じく女性を主要なテーマとして選んでいたシャヴァンヌが無視出来る筈なんて、決して無かったであろうから。


★ ★ ★


シャヴァンヌとドガ

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◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『気球』(1870) オルセー美術館蔵
◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『鳩』(1871) オルセー美術館蔵

 ところで、シャヴァンヌがヴィーナスを前後ひっくり返していると僕が思いついた発想の根元はこの2枚の絵から来ている。これらは99年に上野で開催されたオルセー展に於いて、僕が初めてシャヴァンヌ作品の実物を観て、彼の名を知るきっかけとなったものだ。

 この絵が描かれた1870、71年はフランスにとって屈辱の歴史。普仏戦争によってパリは包囲され、内戦と飢餓に見舞われていた。そして無惨な敗戦が決まるとアルザス=ロレーヌ地方がドイツ帝国に割譲されてしまう。モネとルノワールの親友の画家、バジールが戦死してしまったのもこの戦争のため。

 図録「19世紀の夢と現実」の記載に拠れば、シャヴァンヌはこの戦中、パリの城壁警護の任務に当たっていたそうだ。そこで先ず着想したのが『気球』(写真左)。この絵は70年にリトグラフで複製されると大きな評判を呼び、大量に流布され大成功を治める。そして翌71年に反転の構図を採用して対となる『鳩』が制作され、これも続いて大成功となった。ここでの気球と鳩は、劣勢だったフランスにとってあまりにか細い命綱の外部通信手段であり、包囲されたパリの孤立、絶望を、一方の鳩を襲う鷲はプロイセン軍を象徴している。そして、女性の黒い服はもちろん喪=死を表しているのだと云う。

 ところが、自らも身を以て体験した悲惨な戦争を描いていながら、シャヴァンヌの絵からは不思議と悲壮感やおどろおどろしい残酷な死を感じない。それどころか、この女性の顔立ちからは、まるで後世の人間が建てたモニュメント像のような無表情な感覚さえする。シャヴァンヌの作品はストーリー性や情緒に過剰に訴えるのではなく、ルネッサンス期の芸術家達がギリシャの古代彫刻に理想を求めたのと同じく、常に彼にとっての理想的な美の世界が画面に描き出されているのだ。そのため、画面は常に穏やかで、描かれている人物達の表情からは直接的な感情は伝わってこない。ここがシャヴァンヌがドラクロワから教えを受けていながらも、劇的な表現方を取るロマン主義派の画家たちと一線を画すポイントであり、彼の中での古典主義的な指向が垣間見られる部分なのではないだろうか。


 この様なシャヴァンヌの作風をとても高く評価していたのがドガだ。と云うのも、ドガは独立派グループ(=印象派)に参加する以前には、一時的に古典や歴史を題材にした作品を幾つか手掛けていた(※因みに当時の画家にとって、この歴史画と云う画題は、公的な評価=サロン基準に於いて一番の権威を持つ高尚なものとされていた)。

Degas_04.jpg
◆ドガ / 『バビロニアを建設するセミラミス』 ※作品の一部分を掲載 (1861) オルセー美術館蔵

 この絵も98年に上野で観た作品。一般によく知られるドガの作風とはかなり違うので、初めて観た時は僕も戸惑ってしまった。これがドガなのか?と。

 この絵と、下のシャヴァンヌの絵(部分)を見比べて頂きたい。

Chavanne_04.jpg
◆ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ / 『夏』 ※作品の一部分を掲載 (1871) オルセー美術館蔵

 彼ら二人の画風は、歴史画や古典を扱うに於いて驚くほどよく似ているのだ。この類似性は美術評論家などからも認められているものだが、僕の読んだ限りの美術書等でも、どちらがどちらに影響を受けたとの資料の呈示や断定をしているものはなく、偶然の一致で並行していた可能性も否定出来ないらしい。

 また、この絵を描いた当時のドガは8歳年上の友人、ギュスターヴ・モローに心酔していた時期だそうで、そこから前象徴主義的作風が感じ取れる故に、観る者にシャヴァンヌと共通する感覚を起こさせるとの見解もあるようだ。 

 シャヴァンヌとドガは同世代人で、直接の友人ではなかったが印象派の女流画家として知られるベルト・モリゾを介して面識があった。ブルジョワの中でも一際富裕だったモリゾ家には当時、毎週のように多くの知識人や芸術家が出入りし、一種のサロンのようになっていたのだ。ここに集っていたシャヴァンヌ、彼と同じくトマ・クチュールに師事していたマネ、そしてドガも裕福なブルジョワ階級に位置した画家達で、少なくともクラス意識や人種問題に鋭敏なドガは、ここに一種の同属意識を感じていた。そんなこともあってか、ドガはシャヴァンヌの作品に対して概ね好意的で、賛意を表明する事もしばしばあった。

 また反対に、ドガの描いた最後の歴史画、『中世の戦争の場面』(1865、オルセー美術館蔵)がサロンに送られた際、この作品を目にしたシャヴァンヌは熱烈な祝意をドガに伝えたと云われている。つまり、彼らは互いに認め合っていたのだ。

 その後、ドガは反アカデミーに端を発した印象派の新進グループと行動を共にする事となり、サロンへの出品を続け益々公的な評価を高めていったシャヴァンヌとは全く別の道を歩むのだが、それでも彼らは時として同じような題材を採り上げる事があった。


Dega_05.jpg
◆ドガ / 『髪を結ってもらう裸婦』 (1886~88) ニューヨーク・メトロポリタン美術館蔵

 実は、彼らには共通して魅了されていた1人の画家がいたのだ。


Chasseriau_01.jpg
◆テオドール・シャセリオー / 『エステルの化粧』(1841) ルーヴル美術館蔵

 その画家がテオド-ル・シャセリオー

 実は、シャセリオーはアングルの弟子。しかし、彼は後年ドラクロワの色彩に魅せられ、次第にその画風を取り込んで行くようになる。つまりは、アングルとドラクロワの美点を融合しようとしたドガとまるで一緒なのだ。そして、ドラクロワの指導を受けていたシャヴァンヌがシャセリオーに心酔していたと云う事実は、間接的にでもアングルとシャヴァンヌを結び付ける点になるとは考えられないだろうか。


 面白いなぁ。「髪を整える」と云う画題をテーマにいろいろな画集を開いていたら、こんな形でドガとシャヴァンヌの共通項が見つかるなんて。2人の『髪を梳く女』と『化粧』とは、シャセリオーのこの絵に繋がっていたんだ。そしてシャセリオーの先にはドラクロワがいて、もちろん、アングルが存在した。そのアングルは、画家が先人たちの芸術を学ぶ重要性について、こんな言葉を残している。

 素描せよ、描け、そして何よりも、例え静物であっても良いから模倣してみよ。自然から写されたもの全ては作品である。そしてこの模倣が芸術に導くのだ。
 常に自然を写し、それをよく観ることを習得しなくてはならない。古代人や巨匠たちを学ぶことが必要なのはその為であって、彼らを模倣することではない。見ることを学ぶ為である。私があなた方にそこ(ルーヴル)に行くことを奨めるのは、あなた方が古代人たちから自然の見方を学ぶことを希(ねが)ってである。なぜならば彼らは自然そのものなのだから。(講談社刊、「25人の画家、アングル」より、訳・鈴木杜幾子)



★ ★ ★ ★


『髪結い』と『白い服の女』は元々同じ画題


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◆ドミニク・アングル / 『トルコ風呂』(1859~63) オルセー美術館蔵

 実はこの記事は、上のシャセリオーの『エステルの化粧』を見つけた時点で書いてみようと思ったもの。シャヴァンヌとドガの2人を軸としていろいろ辿る過程で、様々な画家達の影響関係を調べるのはなかなか面白い作業だった。『白い服の女』とアングルの直接的関係には辿り着けなかったものの、ああ、これらのアングルと繋がりを持つ作品が順々に発表され、やがてピカソへも繋がって行ったのだなぁ、と。そして、最後に1枚、総括としてアングルのこの『トルコ風呂』を載せて終わるつもりだった。

 それと云うのも、この絵には前回僕が採り上げた『ヴァルパンソンの浴女』(=女性の背中)が再び描き込まれているのと、お判り頂けるだろうか、画面右側手前に横たわる女性は、シャセリオー作エステルの上半身のポーズと一致しているのだ。きっとこのポーズもシャセリオーがオリジナルなわけでなく、どこかに“お手本”があるのだろう。

 そんなふうに思いながら、この絵を改めてよくよく眺めていたら・・・

Ingres_04.jpg

 あれれ・・・[exclamation&question](吃驚)。
  
 腕を組み座る女がいる。それも、髪に香水をかけられ化粧中の。

 今さらな気もして恥ずかしいのだが、初めてここで、ようやく気が付いた。僕は今までこの絵をちゃんと見られていなかったのだ。それも、どうやらただ単に本の印刷のせいで・・・(苦笑)[たらーっ(汗)]

 実は僕が普段よく目にしているルーヴル本の『トルコ風呂』の写真は、実際のものより黒味が強く印刷されているため、暗く描かれているところが色潰れしてしまい、よく見えないようになってしまっていたらしいのだ。偶々、今回はblogに載せたいがために、本を平らにしやすいと云う理由から、普段はあまり読まない別の本からスキャンしてみたのだが、こちらの写真だと、今までイマイチはっきり見えなかった暗い部分までちゃんと見えるではないか[exclamation]

 それも、これこそ本来探していた『白い服の女』の構図!!。こんなふうに見つかるなんて・・・(^^;。

 結局、後ろで髪を梳く(ここでは香水をかける)女性が省略されていたんだね。つまりは、taekoさんがご覧になって来たピカソの『髪結い』と、『白い服の女』は元々1つの同じ題材から派生した作品だったってわけなんだ。


★ ★ ★ ★ ★


Louis David_Madame Recamier.jpg

 さて、最後の1枚はおまけです。皆にお手本にされたアングルにも、これまたお手本はあるのです。これは彼の師匠ジャック・ルイ・ダヴィッドの描いた『レカミエ婦人』 (1800、ルーヴル美術館蔵)。

 どの絵のお手本になったかは、もうきっとお解りですよね。でもせっかくだから、ここでもやっぱりピカソの作品 ↓ をヒントにしておきますね(^^。

Picaso_Odalisque.jpg





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TaekoLovesParis

yk2さん、こんにちは。
私の話から、ヒントを得て書いてくださったなんて、うれしいです。
少しの責任を感じながら、どきどきしながら読み始めたのですが、最後まで行って、「あゝ、こういう結末だったのね」と、軽いミステリー小説を読んだ後の感じでした。

お好きなピカソの絵、「白い服の女」、そのお手本をみごと探し当てたのですね!そして、探して行くプロセスを明快に理由づけしながら書いていらっしゃる、すばらしいです。私の好きな画家たちの作品やエピソードもいろいろ織り交ぜられていたので、なおさら惹きこまれました。中でもシャセリオーは、今回ルーヴルで見て、気に入った画家だったので、「おっ!」でした。

「すべての道はローマに通ず」に同じく、アングルに通ずなんですね。
そして、アングルは、ボッティチェリやダヴィッドを参考にして。。
そういえば、今でも、デッサンの勉強の題材はギリシア彫刻の「石膏像」ですものね。

私もyk2さんも、美術に関して好きなだけで素人だから、お互いに記事を書きながら、手探りで見たこと、聞いたこと、読んだことから広がった興味がつながり、まとまっていく楽しさがあります。これからもよろしくお願いします。
by TaekoLovesParis (2009-01-18 10:35) 

yk2

taekoさま、こんばんは。

責任だなんてとんでもないです。お陰でこう云う絵の楽しみ方もあるんだなぁと再認識しました。taekoさんからピカソ展のお話を伺ってなければ横浜のセザンヌ主義展も観に行ってなかったろうし、今回の「お手本」と云うネタは、かな~り深く好奇心を刺激してくれましたよ(^^。特に、今までの僕はダヴィッドやシャセリオーにはあまり興味が持てなかったのですが、シャヴァンヌやドガが受けた影響って側面から遡るのは、調べていて本当に面白かったです。

でも、これって遡り続けると際限無さそうでもありますね(^^;。

>お互いに記事を書きながら、手探りで見たこと、聞いたこと、読んだことから広がった興味がつながり、まとまっていく楽しさがあります

本当ですね。学生だったら先生に聞いて、はいお終い、だったのかもしれませんが、あくまで趣味で、勉強しようだなんてこれっぽっちも思わず調べているから楽しいんですよね。学生時代からこうだったら、もうちょっとまともなオトナに成れたでしょうにねぇ・・・(苦笑)。
by yk2 (2009-01-19 22:48) 

Inatimy

読ませていただいた後、すぐにコメント書くのはもったいなすぎて、大きな飴玉をもらったかのように、ほっぺにためて、じっくりじっくり味わってました♪ 読み終わった瞬間、ものすごい大発見の場所に居合わせた気分~。 こんなふうに謎解きしながら絵を観るのも面白いですね。 絵画雑誌の特集記事を読んでるみたいで、読みごたえたっぷり♪
しかし、昔の女性は、皆、髪が長くて梳くのも一苦労。 お手入れ大変だったでしょうね・・・。
by Inatimy (2009-01-20 08:10) 

hatsu

すごいですねー、
歴史ミステリーを読んでいるみたい♪
美術には詳しくないのですが、
とても楽しめることができました^^
ありがとうございまーす☆
by hatsu (2009-01-20 15:53) 

yk2

すっかりコメントへのお返事が滞ってしまい申し訳ありません。
Inatimyさんなんかその間にチェコから再びオランダにお引っ越しまでされちゃって(^^;。

◆Inatimyさん :

ものすごい大発見と云うより、僕は今までこの絵をちゃんと細かく見てなかったんだなぁ~って、分かっただけだったりして・・・(苦笑)。アングルの後進画家たちにとってみれば、描かれている女性のポーズ1つ1つが教材だったんでしょうねえ。

この頃の女性の髪が長いのは、女性の髪には霊元が宿る、なんて神秘信仰めいた思想があったからみたいです。これがアールヌーヴォーにも引き継がれるから、ミュシャの描く女性の髪もとんでもなく装飾的に長かったりするでしょ。

そう云えば、チェコ生活はたったの2ヶ月で終えられてしまいましたが、、Inatimyさんは何かしら“祖国のミュシャ”に出会えたかな?。

◆hatsuさん :

あまり関心をお持ちでないでしょう絵のお話(それも長いし・・・汗)を2つも続けて読んで頂きありがとうございます。よく判らない名前がたくさん出て来て、歴史ミステリーと云うよりも退屈な教科書みたいだったかもしれませんねぇ(><)。

明日からのご旅行、楽しまれますように。道中のご無事をお祈りしてます(^^。
by yk2 (2009-02-06 21:42) 

TaekoLovesParis

yk2さん、ルーヴル記事で、シャセリオーのことをちょっとだけ書きました。ここにリンクさせてくださいね。
by TaekoLovesParis (2009-02-11 10:27) 

plot

ご無沙汰しています。
とても興味深く読ませて頂きました。
ピカソってハブ空港みたいに、いろいろな画家の中心にいて、そのエッセンスをとりこんで巨大な存在になったというイメージを持っています。
マイケル・C-フィッツジェラルドの「ギャラリーゲーム―ピカソと画商の戦略」という本では、その辺りを「リスペクトして影響を受けた」みたいな上品な表現でなく、もっと生臭く書いています。
たとえば新古典主義のある作品はピカソが所有していた晩年のルノワールを左右反転させてコピーしたものである…といった具合です(この本と一緒にピカソ本まとめ読みしていたので、もしかしたら別の本の記述だったかも知れません)。
ただピカソが群を抜くデッサン力と、絵の力と魅力を見抜く卓越した目を持っていたのは確かですし、少なくともキュビスムは彼(とブラック)の発明ということは間違いない(はず)です。
ピカソがいなかったら20世紀美術は、全く違ったものになっていたでしょうしね。
by plot (2009-02-18 04:25) 

yk2

◆taekoねーさん :

そう云えばもうすぐ国立西洋美術館でルーヴル展ですね~。
アングルやシャセリオーも何かやって来るのかな?、なんて思ったけど、今回は17世紀のヨーロッパ絵画がテーマなんですってね。て、コトはこの辺はナシですね、残念(^^;。taekoさんの記事を読んで、シャセリオーの絵がもっと観てみたくて!、どうにも堪らなくなってます。また行くしかないのかなぁ~(^^;。


◆洋一さん :

お久し振りです~。お元気になされてますか?。

ピカソは「巨大なハブ空港」、言い得て妙ですね。「引き出しが多い」くらいじゃどうにも物足りないですもの(笑)。

>その辺りを「リスペクトして影響を受けた」みたいな上品な表現でなく

ふふふ、それを云ってしまうと身も蓋もありませんね(^^;。
確か以前にも洋一さんがピカソについてそんなお話をして下さった事が有りましたね。

ここの本文ではあえて触れなかったのですが、一番上に4つのピカソ作品を載せてありますが、左下の『海水浴』なんて、まるでシャヴァンヌの『海辺の娘たち』のパロディーみたいなんですよねぇ。題材を引用するにせよ、構図のアイディアだけそのまま貰ってきただけみたいで、決して趣味が好いやり方とは思えません。描いているのがピカソじゃなかったら、この絵は一体どう評価されるのだろう・・・とさえ思っちゃいます。

あまりにも沢山の作品を残した人だから、やはりアイディアが尽きれば過去の巨匠を振り返る事も時々は(多々?^^;)あったんでしょうねえ。

by yk2 (2009-02-18 23:20) 

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