SSブログ

(星の王子さまの)きつねとしての僕からの手紙 [思ったこと感じたこと]

Rose_Le Petit Prince.JPG

まったく!
君ってやつは、まるで解ってやしないんだ。

何をかって?。
僕らが“なじみ”でいるには、しきたりが大事だって云ったろう?。


忘れて貰っちゃ困るんだ。

云ったろ、君が午後4時に僕に会いにやって来るとしたら
僕は3時からもう、気分がうきうきしてくるんだって。
時間が経てば経つほど、嬉しくなる。
4時には、わくわくして気が気じゃないんだ。
幸せのありがたさが分かるってわけだよ。

でも、君がいつ来るのか決めずに来るんだったら
僕はいったいいつ頃から心の準備をしたらいいか、分からないじゃないか。

いいかい。だから、君と僕の間には、こうしたしきたりが大事なんだ。
君は、僕が君と会う時は、僕はずっとうきうきしてるんだって、気に留めておいてくれなくちゃいけない。

そこで考えて欲しいんだ。
僕だって、ずっとうきうきわくわくしていたいけど、ずっとずっとうきうきわくわくはしていられない。
そのまま幾日も幾日も待ちぼうけをくわされたら、僕だって、きっと疲れてしまうだろ。
きつねにだって、休みは大切なのさ。

だから、君もこのしきたりを思い出して、僕に伝えて欲しいんだ。いついつ会いに行けるよ、って。

そうして、もしも君が来られなくなった時も、同じように伝えて欲しいんだ。
今回は会えなくなってしまったよ、って。
出来たら、それは出来うる限り早い方がいいんだ。

だって、考えてもみてごらんよ。
ずっとうきうきして天にも昇りたくなるような楽しい気持ちが
一瞬にしてガラガラと音を立てて崩れるれんがの壁のように消えてしまうんだ。

だったら、時間とともに積み重ねるうきうきとした思いは出来るだけ少ない方が
僕の気持ちも楽ってもんじゃないか。

そうしてくれないと、僕は余計にがっかりさせられてしまうだろ。
そうすると、僕だって少しはむくれて、心の中では君の悪口の2つや3つは云って
やらないと済まなくなっちゃうのさ。

王子ときつね_Le Petit Prince.JPG

でもね、僕はなじみでいるには、とても辛抱強くしなきゃいけないって知っている。
がっかりして、心の中では君の悪口の2つや3つは云ってしまうこともあるけど
そんな時こそ辛抱強くしないといけないって知ってるよ。

普段の君と僕は、少しばかり離れたところにいるけど、見ていないようで見てる。
気にしてないようで、気にしてる。思ってないようでも、実は結構思ってるのさ。

だからね、君が君の時間を、君の大切なものの為に使いたかったのならば
昨日会えなかったとしても、僕は少しもむくれたり、君を恨んだりはしないのさ。
僕らはなじみなんだ。

でも、だから忘れないでおくれよ。
しきたりが大事なんだって。

そうでないと、僕はずっと君のことを、どうしたのかなって心配に思っていなけりゃならないんだから。





※本頁のきつねの語彙、言葉遣いは、『星の王子さま』(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著)ちくま文庫版翻訳者の石井洋二郎氏の訳文を基にし、きつねが作中語っている言葉を幾つかピックアップして構成しています。その中でも特に、「しきたり」「なじみ」といったキーワードとなる言葉の訳についても同氏のチョイスを好ましく(元祖である内藤濯訳版のきつねの口調は、今時読むにはちょっと・・・ね^^;)そのまま踏襲しています。また「三時からもう・・・」などの作品中エピソードなどについては、同氏の訳文の一部をそのまま引用している箇所もあります。


星の王子さま (ちくま文庫)

星の王子さま (ちくま文庫)

  • 作者: アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫




共通テーマ:日記・雑感