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ハイブリッドな?青いアイツ [いつかの出来事]

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 その動物は、或る夏の日の夜遅くにやって来ました。ずいぶんと蒸し暑い晩で、もうじきに日付けが変わる少し前のことでした。


 夜の内は暗かったので、彼がやって来たことは誰にも気付かれませんでしたが、その翌日、もうだいぶお日さまも空の高い場所まで上ってきた頃、彼は青いカバたちみんなの前に現れて、自分から挨拶をしました。

 「こんにちは。初めまして」

 「こんにちは。初めまして。きみはだれ?」
 青いカバのみんなを代表して、一番からだの大きくてピカピカ光ったファイアンス焼きのルーヴルⅠ号(http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2011-04-10)が訊きました。


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 その動物のからだは、一言で青色と云うにはところどころ色が濃かったり薄かったりして、紫がかったようなところもあれば、緑のように見える場所もありました。肌ツヤはマットで、わざと古ぼけさせたようにも見えますが、新しいのだろうか?、古いのだろうか?、実際のところはよく分かりませんでした。

 誰かと問われて、その得体の知れない動物は怪訝そうな、少し悲しそうな顔をしながら云いました。「別の動物たちに、きみは誰かと問われるのならともかく、きみたちにそう云われるのは、ちょっとなぁ」

 みなは顔を見合わせて考え込んでしまいました。あれれ、どう云うことなんだろう?。何か失礼なことを訊いちゃった?。


 みんなの内で唯一エジプトに縁のないムーミン似のフィンランドくん(http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2012-01-03)が、前にも会ったことがあるのかな?とケニー・ランキンの『Haven't We Met?』の一節をオシャレに口ずさみながら尋ねますが、謎の動物は大きな溜息を1つ、ふう~っとついて、首を横に振るだけです。

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 みんなは揃って、改めてまじまじと彼の姿形を眺めてみますが、どうも今一つピンときません。


 少しの沈黙が有ってから、一番小さなファイアンスのルーブル・ミニがひらめいて[ひらめき]声を発します。

 「わかった!。丸の内のエシレのウインドーにいたでしょう?」
 
 「あ~、そうか!、きみったら、牛さんなんだね」とマグネットのウィリアムもなるほどと、合点がいった様子で続きました。


  すると、さっきよりもさらにがっかりした顔で謎の動物が云いました。
 「・・・いいえ、違います。ねえ、僕のからだはご覧のとおり、全身きみたちと同じで青いでしょ。エシレの牛は白とブルーのホルスタイン柄(http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2010-02-10)だったんじゃない?」

 「ああ、そう云えばそうだったかもね~。」

 「ううぅ~ん、角みたいなのも生えてるし、鼻のとんがり具合が牛さんっぽいかな~って思ったんだけど、違うんだぁ・・・。判らないなぁ~」
 

 なんで判らないんだろう・・・。少し厭な気持ちにさえなって来てしまった謎の動物は、自分から説明する気になって話し始めました。

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 「あの~、僕はきみたちと同じ“青いか・・・」

 その時でした。
 「判ったよ[exclamation×2]」彼の言葉を遮って、まるで雷にでも打たれたようにハッとした表情をしてルーブル・ミニが云いました。
 
 「みなまで云わないで!。判ったんだ!!。君のその妙に盛り上がった背中、やや首が下がったプロポーション、きみは“青いカラダ”をしたオオアリクイに間違いないねっ![るんるん]

 「あ~~~、そうかぁ」一同はすぐさま深く頷いて納得した様子でした。何故でしょう、みながみな、その謎のルックスの動物がアリクイだと、疑うことなしにすぐに信じられたのです。

 ですが、すかさずウィリアムが疑問を投げかけます。
 「でもさぁ、彼の口はアリクイとは違って長くないよ。それに、彼には僕等と同じ様にロータスやパピルスの柄が描かれているじゃない。ひょっとして水の中に棲む動物なんじゃない?。」

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(左:ルーブル・ミニ、中:マグネットのウィリアム、右:ルーブル・大)

 からだは小さいけれど頭の回転の速いミニがすぐにそれに応えます。
 「それは~、じゃあさ~、彼は水棲のアリクイってわけなんじゃない?。水に暮らすことで、アリクイの長い口は退化して、呼吸のために鼻が発達して立派になったんだよ。僕らカバの鼻は水面に浮かせるには理想的な形をしてるだろう?。だから、水棲アリクイはどことなく僕らカバに近付いて進化していったんじゃないかな?。で、中途半端にまだ鼻は伸びたままだよね。きっと、アリもあの鼻から吸い取るんだよ。ガラパゴスのコモド・ドラゴンが水陸適応2種に分かれたみたいなものだと考えればいいんじゃないのかな?。でも彼は1頭で水陸両方対応の遺伝子を持つみたいだから、それっていわゆるハイブリッドってヤツなんじゃないの?[exclamation&question]。」

 「アリクイが水の中にいる理由が全然分かんないけど、かっこいい~、新種なんだ~!!!」

 「すっごーい![グッド(上向き矢印)]

 「ハイブリッドの水棲アリクイさんだ~[わーい(嬉しい顔)]

 「僕らエジプトの中王国時代(→wiki)だなんて紀元前2000年も前の生まれだから、ハイブリッドだなんて言葉を聞いただけで憧れちゃうよね~」


 「あのね・・・、僕はこう見えてね、きみたちと同じ青いカバなんだってば・・・」。謎の動物、いや、実は自分では青いカバのつもりらしい(?)ハイブリッドくんは涙目になって消え入りそうな声で告白してみましたが、「ハイブリッド」って言葉で勝手に盛り上がっちゃったみんなはもう誰も話を聞いてくれません。

 そのさなか、ふと、フィンランドくんだけが急に我に返って、ポツリ一言、ハイブリッドくんに尋ねました。
 
 「ところでさ、きみのほっぺたには何故だかニンニク※の絵も描いてあるよね。それってどうして?」。

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 「・・・・・・もういいです[もうやだ~(悲しい顔)]。」


★ ★ ★


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 ってなことで、青いアリクイくんは、ちょっとした疎外感を胸の奥に残しつつ(笑)、青いカバたちに混じって結構仲良く?我が家で暮らしています。ありがとね~、アリクイのハハ・Y[わーい(嬉しい顔)]


※描いた本人いわく、これはけして“ニンニク”ではなく、ナイル流域の植物の葉か何かのつもり[爆弾]らしいです。



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