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自由が丘・金田(かねだ) [そとごはん、そとワイン]

2016年01月21日(木曜日)
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 自由が丘の老舗居酒屋・金田(かねだ)。若き日の伊丹十三が足繁く通い、作家の山口瞳はこの店を自らの「酒学校」だったと語り、たっぷりの思い入れを込めた手書きの原稿用紙を贈った。かく云う僕も、美味い和食を肴にして飲む愉しみってヤツを教わったのは、間違いなくこの金田って店でなんだ。



 
 以前は本当によくこの店の暖簾をくぐっていたのだけれど、ここ数年はすっかりご無沙汰。足が遠のいていたのは、僕の個人的な理由があっての事だったけど(※別にお行儀悪して出入り禁止を食らってた、なんて類のハナシじゃありませんので、念のため^^;)、それもこれも、もう随分昔のお話。そろそろもういいだろうと、以前から金田に一度行ってみたいと云い続けていた友人を伴って出向いてみた。

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◆かわはぎの刺身(肝つき)

 店内は以前と同じで何も変わらず・・・と云いたいところだが、そこにはもうあの親父さんがいない。カウンターの奥の調理場に、親父さんの弟さんたちもいない。僕が8年も9年も此の店から遠ざかっていた間に、すっかり息子さんたちへと代替わりがされていた。亡くなられたのは人伝に聞いていたけれど、あの親父さんがいない金田の店内は、僕にとっては何だかとても不思議な、ちょっとした違和感さえ覚える景色だった。


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◆左、富山の白エビ刺身、右、トラフグの唐揚げ

 金田が1階の内装を全面リニューアルしたのは何年前のことだったか。まだ昭和の頃だった様に記憶してるけど、それ以前の金田は、料理は間違いなく美味いけど、店構えは古くてお世辞にも綺麗とは云えず、当時大学生だった僕が気楽に暖簾をくぐれる様な店じゃなかった。仮にもし一見で店を訪れたにしても、とりつく島もないほど頑固に思えたあの親父さんに「悪いね、いっぱいだよ」と、さらっと入店を断られてしまったかもしれない。明らかに、その時目の前のカウンターに空席が有ったとしても、だ。


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◆すりおろしれんこんの揚げ出し

 僕が初めてこの金田を訪れた時、妙な若造が1人で入って来たなと思われたに違いない。だって、誰も「いらっしゃいませ」って云ってくれなかったんだから(苦笑)。

 この店の常連である干支一回りも年長の知人との待ち合わせで指定されたから出向いたわけだったけれど、1階のカウンター席にその人は見当たらず。親父さんは僕に一瞥はくれたものの、口は開かない。すさまじいほどの場違い感に押しつぶされそうで、僕はそのまま踵を返して退散しようかとも思ったくらい。怖々、待っている知人の名を告げて、やっと「2階へどうぞ」と親父さんに云って貰えたんだ。

 その話は、後々には笑い話になったけど(^^;、あの頃の金田の親父さんは眼光鋭く、尖ってた。行儀の悪い客には本当に厳しかったもの。大声で話したり泥酔したりとマナーの悪い客は間髪入れず注意され、改善が為されなければ強制退場。若いオトコやきゃぴきゃぴした女性客なんて、初めから断られて席に着くことさえ許されない様な店だったものなぁ(^^;。


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 オーダーした品がいっぺんに揃って来ちゃったのはご愛敬(笑)。

 昔の金田はふぐを出さなかったから、肝のついたカワハギ刺身の薄造りは僕にとってこの店最高の白身魚だった。いつもあるとは限らないので、今日この日メニューに有ったことが嬉しく懐かしい。もみじおろしとポン酢で頂く。美味い!。最初はシンプルに白身だけで食べて、後半は肝をポン酢に溶いて。これまた美味い!!。ああ、久し振りに金田に来てるんだなぁ・・・と実感する。カワハギの刺身は、メニューに有りさえすれば他の店でも食べるんだけど、ね(^^。


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◆えびしんじょう

 金田に通う人たちには、きっと、それぞれお気に入りの料理がいくつもあると思うけど、僕はこのえびしんじょうが外せない[わーい(嬉しい顔)]

 表面がさっくりと揚がった熱々の真丈の身はもっちりとしていて、海老を噛むとプリップリ。これに銀あんでも掛けられていればそのまま割烹料理として、ちょっと品の良い和食店でも供されそうなメニューなんだけど、金田ではこれをウスター・ソースと和芥子で食べさせちゃう。これが、なんとも云えず大好きなんだなぁ~[黒ハート]。本当に久し振りに食べたけど、やっぱり美味しい[exclamation]


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◆つくねとひな焼き

 僕は飲んでもあんまり普段と様子が大きく変わるタイプではない(・・・と、自分では思っている^^ゞ)ので、かつて親父さんにあんまり注意を受けた事はなかった。それでも、初めて連れて行った友人とのお喋りがついつい大きめの声になってしまった様なケースで、「もうちょっと静かにね」と云われしまったことは何度か記憶にある。

 それでも、この日は本当に久し振りだったから、金田に来るのが初めてだった友人に予め注意をしておくのをうっかり忘れてしまってた。「金田では、くれぐれもお行儀良くね」って(^^;。かつて親父さんがどっしりと構えていたカウンターを現在仕切るむすめさんに、「もう少し小さなお声で」と注意されてしまったのだ[ふらふら]。ありゃりゃ、これは大変失礼致しました[あせあせ(飛び散る汗)]


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◆サトイモ満月蒸し

 帰り際、お会計をしながら、むすめさんに話しかけた。

 「さっきは声が大きかった様でごめんなさい。とても久し振りにお邪魔したので、うっかりしてました。でもね、昔、親父さんにもあんなふうに注意されたことがあったなぁ~なんて思い出して、なんだかとっても懐かしかったです」と。

 むすめさんは一瞬「えっ?」と云う様な顔をして、僕にお釣りを手渡しながら、照れくさそうに「ありがとうございました」と笑顔を見せてくれた。


 やっぱり、金田は好い店だね。


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