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映画『ブルゴーニュで会いましょう』と1er Cruと [映画・DVD]

2016年12月18日(日曜日)
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 14時半待ち合わせで六本木のサントリー美術館へ出向き、『小田野直武と秋田蘭画』(http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_5/)と云う江戸絵画の展覧会を観てからお茶も飲まずに直ちに渋谷へ移動。Bunkamuraで久し振りに映画を観る。そのタイトルは『Premiers Crus(邦題:ブルゴーニュで会いましょう)』。(公式サイト : http://bourgogne-movie.com/



 僕がBunkamuraで観る映画のテーマって、全部とは云わないけど大抵が「食」、食べ物絡み(^^;。一番最後にここで観たのは『マダム・マロリーと魔法のスパイス』か?。いやそれとも、去年の五月に行った『イタリアは呼んでいる』だったかな。その前にはエリゼ宮史上初の女性料理長誕生って実話が元になってる『大統領の料理人』ってフランス映画も、やっぱりこの映画館で観たっけ。

 食い意地が張ってるのはモチロンなんだけど、なんだかね、子供の頃から食べ物にまつわる話が好きなんですよ(^^;。小学生の頃、母の書棚にあった志賀直哉全集を手に取ったのは、多分、学校の先生に奨められたかで『暗夜行路』を読んでみようとしての事だったんだろうけど、そのあらすじなんて全然覚えてやしない(苦笑)。その代わり、今以てず~っと僕の記憶に残り続けているのは、同じ全集に含まれていた小品、『小僧の神様』だったりしちゃうのです。「いいなぁ~、お寿司食べさせて貰って!」って具合に、未だに羨ましがってみたりして(笑)。

 その「何だか」を改めて考えてみると、そんなに難しくないことが「答」。要は、食べ物を扱う映画って大抵はハッピー・エンドだから、なのかも。僕が映画を見に行くのはほぼ決まって日曜日。生と死を扱う様な、重くやるせないストーリーの映画を観て、どんよりもやもやとした気持ちを引きずって月曜日の朝を迎えるだなんてのは、絶対にイヤだもの(^^。


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 そんなコトで、この日観た『ブルゴーニュで会いましょう』も、基本的には同様の流れ。
 
 簡単にあらすじを以下に説明すると、

 
 主人公はまさに飛ぶ鳥も落とす勢いって言葉がピッタリの売れっ子ワイン評論家シャルリ(ジャリル・レスペール)。そのティスティング能力は抜きんでて優秀で、クールなルックスもありカリスマ的な人気を誇る。本を出せばたちまちベストセラー。ワイン生産者は彼の評価に一喜一憂。それもその筈、まだ若いこのカリスマ(設定は30代半ばから後半かな?)が高得点を付ければ、そのワインの成功は直ちに約束されて、反対に低評価が下されれば在庫が倉庫に山積みとなるのだから。

 名声も富も手に入れた。パリの高級アパルトマンに暮らして彼が望めば美しい女性も簡単に・・・と、順風満帆の独身貴族シャルリの人生にも、欠けたままのピースがあった。それは、バラバラになってしまった家族。ブルゴーニュ出身の彼の生家は、当地きっての名酒を生む区画アロース・コルトンに畑を所有する伝統あるワイン生産農家(ドメーヌ)で、現在はシャルリの父(ジェラール・ランヴァン)が当主。たが、近年父の造る「ドメーヌ・マレシャル」の味の評価は下がり続けて業績も低迷。在庫の山と多額の借金を抱え、ほぼ倒産を免れないほどの窮地に陥っていた。

 本来ならば跡継ぎたる息子シャルリは土にまみれる畑仕事なんてまっぴらだとパリへ出てしまい、その後に妻とも離婚。幸い娘は近くには居るものの、レストラン経営で大忙しと家族はばらばら。ブルゴーニュのワイン生産はファミリー・ビジネス。家族あってのもので、それがなければ始まらないと、当主の父は自暴自棄となり、いつの間にやら趣味のボート制作に没頭して現実逃避の日々。このままでは債権者たる銀行の提案通りに身売りも致し方なしと云うギリギリのところまで来て、初めてシャルリは実家の窮状を知らされる。もう自分が立ち上がるしかない!。しかし、もしも彼の造ったワインが不出来だったなら・・・。今度は裁かれる立場に置かれるシャルリのワイン評論家としての名声は間違いなく地に落ちるだろう。全てを失いかねない危険な賭。こうして、望まざるもやむを得ずシャルリはブドウ栽培を開始する。しかし、ワイン生産は全くの素人である彼の改善策はことごとく父との対立を生んで・・・。



 まぁ、素直に見れば楽しめる。大体約1時間半って時間の制約もある映画って物の中で、なんでもかんでもストーリーに詰め込めないのも理解する。でもね、シャルリが始める古代回帰的(父はこれをローマ時代に帰る気か?と揶揄した)な農法や醸造法は今日的にはあまりに突飛だし、それをどう云う理由でドメーヌ・マレシャルのワインに採用するのか、どこをどう変えれば今よりもっと良くなる筈って分析や動機付けがきちんと描かれていない。ステンレスタンクもオーク樽も使わず素焼き壺を使う必要が、映画を見ている僕らには解らないんだな。とっても藪から棒な展開に感じちゃうんだ。一言でこれがビオディナミ(→ wiki )ってヤツですよと云われれば、「ハイ、そうですか」と納得するしかございませんが(^^;。この類の話は、確かにワインがかなり好きな人にしか分からない部分で、一般にはどうでもいいことになるのかも知れない。でもさ、この映画に興味を持った人ってのは、おそらく殆どがそんな人たち(= Wine Lovers)ばかりなんじゃないの?。そんな細かいデテールにまで興味を持って見てしまうのは、日本人くらいしかいないのかしらん?(苦笑)。


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 映画を見終わってまだ19時前。おなか空いたね~、絶対ブルゴーニュ飲むでしょ?(笑)と当たり前の様に話して向かったのは、Bunkamuraで映画を観た後の定番コース(?)VIRON

 ちょっと「ん?」と思うことがあって、しばらく足が遠のいていたので久し振りの訪問。渋谷店は前回食事をした時から丸2年振りくらいかな。ま、なんだかんだ云って映画観た後には便利だしね。駅へ向かう途中にあるわけで。


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 フォアグラといんげんと茸のサラダ。
 ここだけのオハナシ、なんだかフォアグラのヴォリューム減った鴨~[曇り]


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 ブルゴーニュらしい前菜としてエスカルゴ。

 僕は映画を観ている最中、ブルゴーニュのドメーヌ、シモン・ビーズ(Simon Bize)にお嫁に行った日本人マダム千絵さんの話をふと思い出していて(※TV等色んな媒体で採り上げられてますから)、そう言えば以前飲んだサヴィニ・レ・ボーヌ(Savigny les Beaune)が美味しかったなぁ~、覚えてない?。白もブルゴーニュが飲みたいな~と提案してみたんだけど、その日一緒の友人は「明日仕事が早いからボトルは赤1本限定!」とキッパリ[もうやだ~(悲しい顔)]。結局乾杯はグラスの泡(リムー)に決着。写真撮る気にもなれませんでしたわ[失恋](笑)。


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◆Domaine Bouchard Pere et Fils / Beaune du Chateau Premier Cru 2012

 で、本日のお目当て、ブルゴーニュの赤です。ええ、もちろん映画のとおりにアロース・コルトンなんかじゃございませんし、ましてやグランクリュの方のコルトンでもありません(苦笑)。この日のチョイスはドメーヌ・ブシャールのボーヌ・デュ・シャトー2012年。リストにそれと分かる様「1er Cru」って書いてあるから、が選ばれた理由の全て(笑)。もちろんそれは、さっき観て来たばかりの映画のタイトルに合わせて、ね。

 ちなみに、比較的カジュアルなお店であるVIRONのリストにもちゃんとアロース・コルトンは載せられてましたけど、この日オーダー出来るブル赤の中ではなかなかなお値段でございました[あせあせ(飛び散る汗)]。参考までに記しますと28,000円[ふらふら]。友人と二人、何でもない日においそれと気軽に飲める額じゃないね~と苦笑い。最初から、レストランでオンリストされている物はフツーにお安くないだろうとは思ってましたけどねぇ(^^;。

 それでも、帰ってネットで調べてみたところ、憧れのグラン・クリュ=特級畑であるクロ・ド・ヴージョ(Clos de Vougeot)やエシェゾー(Echezeaux)と較べたらアロース・コルトンは造り手次第では随分と気さくなところもあるみたい。自分で買って、持ち込み出来る馴染みのお店へって作戦はアリかも(^^。

 そうそう、ついでの情報として、今回の映画撮影に使われた「ドメーヌ・マレシャル」の建物はドメーヌ・ジェジェール・ドゥフェ(http://www.jaeger-defaix.com/en/rully-actualites)のもの。リュリー(Rully)の生産者さんなんだそうだけど、今回検索して見た限りはあんまり日本には輸出してないみたい。でも、これをきっかけに一度飲んでみたいな(^^。

※参照リンク : 『映画ブルゴーニュで会いましょう』のロケ地を回る7日旅→http://www.chateauxhotels.jp/feature/season081/


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 メインは詳しいことは覚えてきませんでしたが北海道ビーフ。この日は季節柄ピジョンだシカだクマだ!?(吃驚)なんだとジビエ食材が色々と揃っていたけど、まぁオーソドックスにブル赤に無難に合うお肉食べましょうよ、ってコトで。味付けは塩胡椒にお好みでマスタードと云った、本当にシンプルな調理。付け合わせはオーダー時にチョイス出来るんだけど、何故かしらこの日はフレンチフライポテトが嫌われて(笑)野菜のグリルに。

 フォアグラが減ったかも・・・なんて先に書きましたが、そもそもVIRONは一皿のヴォリュームがたっぷりのお店。何も考えずにポンポンとオーダーすると、お店の人が「食べきれないと思います」って、警告してくれる(笑)。今回のビーフも、とてもじゃないけど、僕一人でこのポーションは食べきれないので最初からシェアするつもりにて。


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 デセールには、友人がクレーム・ブリュレ。僕は久し振りのサヴァラン![るんるん][グッド(上向き矢印)][ハートたち(複数ハート)]。好きなんだなぁ~、ババ・オ・ラム。ご存じでない方に説明させて頂きますと、ラム酒がびしょびしょに浸かったブリオッシュの生クリーム添えでございますね。これが食せただけでこの日は全て満足かも[わーい(嬉しい顔)]


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