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東京国立近代美術館常設コレクション / 2019年春 [ART]

2019年04月07日(日曜日)その2
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 東京国立近代美術館の常設コレクションより、2019年春の展示作品です。


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◆『大きな花束』(製作:1892~95年頃) / ポール・セザンヌ(1839生~1906没)
※購入


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◆『陽春賦』(製作:1985=昭和60年) / 高橋 節郎(Takahashi Syunro 1914生~2007没)
※作者寄贈

 不勉強なもので、僕はこの高橋節郎と云う作家を知らなかったため、作品のインフォメーションを読む前にはてっきりこの絵が版画家・長谷川潔の作品だと勘違いしてしまった。しかし、この作品は版画ではなく、また油彩でも水彩でもない。漆に沈金と云う漆器の装飾技法を用いて製作されている。1891年生まれの長谷川より23歳若く、ドライポイントやエッチングなど西洋版画の技法に興味を抱いた高橋が長谷川の作品を見知っていた可能性は有るのかもしれないが、高橋は従来より行われていた沈金に工夫を加え、版画用の彫刻刀で漆面を削り金箔を押し込み、その上から線刻を重ねる独自の手法を確立したのだそうだ。


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◆『太陽の麦畑』(製作:1913=大正02年頃) / 萬鉄五郎(1885生~1927没)
※購入

 添えられていた解説に拠ると、1910年に創刊した文芸雑誌「白樺」で初めてファン・ゴッホが紹介されるや、それまでの新派(黒田清輝以降の外光派的な画風)の教えに飽き足らずに新しい作風を求めていた若い画家たちはこぞってゴッホ研究に没頭したのだと云う。萬鉄五郎のこの作品も、そんな学びから生まれた1枚なのだ。但し、当時は鮮明なカラー図版が有るわけで無し、紙上の写真の解像度だってたかが知れている。それどころか、当時の日本国内で見る事が出来た”ゴッホ”とは、決して出来が良いとは限らないモノクロの複製がほとんど唯一の資料だったそうだ。そんな情報の余りに少ない時代に於いて、色、筆致、絵の具のボリューム感までもをこれほどゴッホに寄せて仕上げた鉄五郎の研究熱心を思うと、ちょっと感動してしまう。現代に於いてこれらの作品を目にする僕らが、当時の事情も顧みず、軽々しくも非難まがいに「まるでゴッホのコピー?」だなんて感想を口にしてはいけないのだなぁ・・・と深く反省致しました。


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◆『ルネ、緑のハーモニー』(製作:1923=大正12年) / アンリ・マティス(1869生~1954没)
※購入


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◆『女のトルソ』(製作:1910~11=明治43~44年) / ジョルジュ・ブラック(1882生~1963没)
※盛田良子コレクション 購入


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◆『花ひらく木をめぐる抽象』(製作:1925=大正14年) / パウル・クレー(1879年~1940没)
※購入


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◆『椿と仔山羊 』(製作:1916=大正05年) / 辻 永(Tsuji Hisashi 1884生~1974没)
※作者寄贈

 真っ白い仔山羊たちと赤い椿の花。一見愛らしいモチーフを用いながらもどこか儚げで少し沈んだ心持ちを覚える。制作の意図は何にあるのか。画家は絵だけでは食えず、生活の糧を得るために実際山羊を飼育していたんだとか。可愛い仔山羊と、その足元に悉く落ちてしまっている椿の赤い花は何かを象徴しているのだろうか。


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◆『三月の日』(製作:1917=大正06年) / 大久保 作次郎(1890生~1973没)
※寄贈

 大久保作次郎は1890年に大阪で生まれ。京美術学校西洋画科本科に学び、同研究科を経て1916年より3年連続で文展の特選を獲得。この作品も1917年に開催された第11回文展の応募作品だった。その後、1923年33歳にてフランスへと留学する。

 残念ながら画家の名前で検索を行った程度ではあっさりとした経歴以外の情報がネットでは見当たらなかったので、27年までと4年の歳月を過ごしたフランスでどの様な画派、画家に教えを請うたのかは僕には不明だが、この作品に於いてのバラ色に染まった女性の頬や顔立ち、背景の桃色がかった紫と緑の色使いなどを見るに、この画家はフランス留学以前よりルノワールの作風に強く惹かれていたのだろうと推察する。一目見て、ノワールが晩年を過ごしたカーニュ時代の作風を思い出さずにはいられなかった。ルノワールは作二郎が渡仏した時点で既に亡くなっていた(1919年没)ため、この印象派の大家と作二郎の面談は叶わなかったが、それでも彼は当地に赴いたらしく、その風景を『カーニュ・シュール・メール』(1925)と題した油彩画に残していて、この作品も遺族から東京国立近代美術館へと寄贈されている(※参照:独立行政法人国立美術館サイト → https://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=4847 )。
 

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◆『春の家』(製作:1911=明治44年) / 安井曾太郎(1888生~1955没)
※購入

 安井曾太郎と云えば、セザンヌの影響が色濃い画家といったイメージがあるけれど、ここではモネやシスレー、ピサロたちが印象派と呼ばれる様になったごく初期的(例えば1874年の第1回目の印象派展=パリ落選展)なイメージを思い起こさせる風景画。


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◆『嬋娟 』(製作:1937=昭和12年) / 小絲源太郎(1887生~1978没)


 呉須で梅などが描かれた角花瓶にたっぷりと活けられた罌粟(ポピー)はもうところどころ花びらが散ってしまっている。タイトルの『嬋娟 』=”せんけん”とは、容姿の美しい様、あでやかな様子と云う意味なのだそうな。漢字検定1級クラス(?)並に難読ですね(^^;。描かれているのが罌粟=虞美人草だけに、その散る様につい、漱石作『虞美人草』のラスト、藤尾の最期を思い浮かべてしまうのは僕だけでしょうか?。


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◆『牡丹図(李朝壺)』(製作:1975=昭和50年) / 梅原 龍三郎(1888生~1986没)
※作者寄贈


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◆『薔薇図』(製作:1940=昭和15年) / 梅原 龍三郎(1888生~1986没)
※作者寄贈


<日本画>
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◆『花の夕』(製作:1938=昭和13年) / 船田 玉樹(Funada Gyokuju 1912生~1999没)
※寄贈


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◆『ひよこ』(製作:1924=大正13年) / 速水 御舟(1894生~1935没)
※東京高等検察庁引継


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◆『牡丹』(製作:1944=昭和19年) / 前田 青邨(1885生~1977没)
※東京国立博物館管理換


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◆『春宵花影図』(製作:1939=昭和14年) / 松林 桂月(Matsubayashi Keigetu 1876生~1963没)
※作者寄贈


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◆『富士山』(製作:1965=昭和40年頃) / 徳岡 神泉(1896生~1972没)
※寄贈


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◆『浪漫』(製作:1986年=昭和61年) / 中路 融人(Nakaji YUjin 1933生~2017没)
※文化庁管理換


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◆『神代桜』(製作:1997=平成09年) / 菅原 健彦(Sugawara Takehiko 1962生~ - )
※文化庁管理換


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◆『牡丹』(製作:1949=昭和24年) / 郷倉 千靱(Gokura Senjin 1892生~1975没)
※文化庁管理換


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◆『土牛君の像』(製作:1973=昭和48年) / 前田 青邨(1885生~1977没)
※作者寄贈

 青邨の描いた奥村土牛像はさすが!。いかにも青邨のいつもの画風。穏やかな線と色合い。完全なる写実などハナから求めていない様で、それでいてしっかりと誰がどう見ても土牛さんの顔になっているもの(^^。この時描かれた土牛は84歳。そして描いた青邨はなんと88歳!。


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◆『上絵金彩花鳥図蓋付飾壺』(製作:1884-97=明治17-30年頃) / 七代・錦光山 宋兵衛(Kinkozan Sobei Ⅶ 1868生~1927没)
※購入
※2 この写真は1点の飾壺を左右から絵柄が見える様に撮影したものです

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◆『鳩桜花図高浮彫花瓶(一対)』(製作:1871-82=明治04-15年頃) / 初代・宮川 香山(1842生~1916没)
※購入

 雄雌一対の鳩がそれぞれ桜の木にとまり、壺の内部に配された巣中の雛と視線を合わせるデザイン。



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