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東京国立近代美術館常設コレクション / 2019年春 #2 [ART]

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◆『原の城』(製作:1971年) / 舟越 保武(1912生~2002没)
※購入

 東京国立近代美術館の常設コレクションより、2019年春の展示作品その2です。(美術館訪問:2019年04月07日日曜日)




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◆『犬』(製作:1950年) / 須田 国太郎(1891生~1961没)
※寄贈


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◆『残骸のアキュミレイション(離人カーテンの囚人)』(製作:1950=昭和25年) / 草間 彌生(1929生~)
※購入


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◆『女』(製作:1956=昭和31年) / 木内 克(Kinouchi Yoshi 1892生~1977没)
※購入 テラコッタ


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◆『ゴンベとカラス』(製作:1966=昭和41年) / 桂 ユキ(雪、ユキ子 Katsura Yuki 1913生~1991没)
※購入


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◆『陶土』(製作:1960=昭和35年) / 中谷 泰(Nakatani Tai 1909年~1993没)
※文部省管理換え


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◆『成都爆撃』(製作:1945=昭和20年) / 小河原 脩(Ogawara Shu 1911生~2002没)
※無期限貸与

 第2次世界大戦後にこの日本で生を受けた者にとって、戦争画をシンプルに美術作品として観るのは難しい。例えばドラクロワの『キオス島の虐殺』の様に、実際に描いた画家の意図はどうだったにせよ、人間の残忍な行為と事件の悲劇性を人々へ伝える力を持った作品であるなら、観る後世の我々は感動も出来る。しかし、昭和の画家達の戦争画から、ドラクロワを観た時に生じたものと同じ感覚を得る事は残念ながら難しい(※但し、全く無いとは断言しない)。この光景は、画家の目の前で実際に起きた出来事に対して筆を執ったものなのか、それとも戦意の発揚の為に、軍の都合の良い光景を描かされたのか。はたまた、自ら進んでそう描いた作品なのか。製作は昭和20年とある。


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◆『北九州上空 野辺軍曹機の体当たり B29二機を撃墜す』(製作:1945=昭和20年) / 中村 研一(1895生~1967没)
※無期限貸与

 こちらはそのタイトルからして国家に殉じてその命と引き替えに米軍機2機を撃墜した空軍パイロットを英霊視させる意図が明らかだ。しかし、荒々しい戦場を描いていながらも、霞がかった空気感はまるでモネを思わせる様な淡い色彩と印象派風の筆致が採用されていて、その画面には不釣り合いなタッチにも思え違和感を覚える。光の効果と云う明るいイメージのある印象派の作品に、不吉なもの、死を思わせるものだなんて、僕が思い出す限りは『死の床のカミーユ』(モネ)くらいだもの。

 この絵に関しては、東京国立近代美術館の解説文をそのままにご紹介しておこう。
 「1944(昭和19)年8月20日、アメリカの大型爆撃機B-29約60機が北九州市を爆撃しました。この中で、自ら編み出した戦法で体当たりし、2機を同時に撃墜したのが、少年飛行兵出身の野辺重夫と高木伝蔵が乗る戦闘機「屠龍(とりゅう)」でした。この作品では、明るい空を背景に落ちてゆく戦闘機3機が小さく描かれ、下方には地面が見えます。まるで神のいる高みからこの出来事を眺めているかのような視点です。」
 

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◆『香港島最後の総攻撃図』(製作:1942=昭和17年) / 山口 蓬春(1893生~1971没)
※無期限貸与

 近代美術館の常設には何度も通っているけれど、蓬春の戦争画が在るとはこれまで全く知らなかった。さすがの画力で、岩絵の具の美しい青が映える画面に心を奪われつい惑わされてしまうが、島のあちこちでは日本軍の総攻撃に因る火の手が挙がっている。美術館の解説では、描かれた当時「ピトレスク(仏:pittoresque)=まるで絵画の様な光景」と云う言葉が使われて、この絵画の静的な美しさが評価された一方、日本画に依る戦争記録画は迫真性に欠けるとも指摘されたと記される。そりゃそうだ。そもそも花を愛する蓬春に戦争画など描かせるのが間違ってるんだから。この作品だって、黒く立ち上る煙や軍艦の「汚し」が無ければ、きっと誰もがうっとりする様なロマンチックな風景画として蓬春は世に出せたろうに。

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 しかし、これも戦争画。間違った時代の、不幸な生まれ方をした美術品。蓬春の美しいものを描き出す画力はここでは別の問題も孕む、とも解説に追記されている。群青の山並みと金色の炎が織りなすこの美しい大和絵風の作品も、その美しさ故に「戦争の美化」と云う忌々しい問題を避けては通れないのだ。


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◆『 娘子関(ちょうしかん)を征く』(製作:1941=昭和16年) / 小磯 良平(1903生~1988没)
※無期限貸与


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◆『水鏡 』(製作:1942=昭和17年) / 香月 泰男(1911生~1974没)
※購入

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◆『室内楽 』(製作:1980=昭和55年) / 有元 利夫(1946生~1985没)
※購入


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◆『穢土(えど)The Impure World 』(製作:1984=昭和59年) / 小嶋 悠司(1944生~2016没)
※購入 日本画 岩絵の具



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