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行く年(2023年の大晦日に) [ART]

海士玉採図石菖鉢_04.JPG
◆山尾侶之 / 海士玉採図石菖鉢(あまたまとりずせきしょうばち:1873=明治06年)  銅鋳製 東京国立博物館蔵

 2023年もあっと云う間に大晦日。
 去りゆく卯年に因んで、鉢を支えて懸命に踏ん張る[手(グー)]ウサギの図。・・・なんですが、この写真だと支えてると云うよりもぶら下がってる様にしか見えない?(^^;。



海士玉採図石菖鉢_03.JPG

 明治に活動していた金沢の金工、山尾侶之(ヤマオ・トモユキ:生没年不詳)が作成し、1873年に開催されたウィーン万博に出品した銅鉢(明治六年癸酉一月 大日本北國加賀石川郡住人山尾侶延長男侶之作と出展品記録に記される)。

 今から丁度150年前の明治6年、日本では外来種の兎が珍重されて、投機の対象にまでされるほどのブームが起きたんだって。そんな中、錦絵でも「兎絵」が流行したんだそう。

 作品名にある海士玉採とは讃岐の志度寺の縁起として知られる玉取説話に由来するものらしく、その昔、藤原不比等が妹を唐の皇帝に輿入れさせ(ホンマかいな^^;)、后となったその妹から贈られた「面向不背の球」がヤマトへと運ばれるその途中、海上で龍神によって奪われてしまう。不比等はその宝珠を奪還すべく当地へ赴き、一人の海士(海女)と契りを交わす。やがて生まれ来る子を継子とする旨を約して、その海女を龍宮へと向かわせるのだった・・・と云う粗筋(※)。江戸末期に歌川国芳らによって盛んに浮世絵に描かれたことで庶民にもよく知られたテーマだったそうな。ユーモアたっぷりの国芳画では、龍神の手下として海女と対峙する魚たちに加えて蛸や亀なども描き加えられ、今まさに海女に襲いかからんとする蛸を登場させるアイディアには本年公開の映画『春画先生』でも話題になった北斎のあの絵[黒ハート](参照→https://www.youtube.com/watch?v=Wgmf6yQJPlM)の影響があったことはほぼ間違いないらしい(^^;。

 ヒロイン海女による宝珠奪還のオハナシ(ちょっとトゥームレイダーだとかインディ・ジョーンズっぽい?^^)にどうして兎が登場、合体しちゃったのかは謎だけど、日本神話的なイメージを連想させる意味で、やはりこれもよく知られた因幡の白兎と重ねてるのかな?って気がしないでもない。兎に助けられて(支えられて)これから龍宮へ乗り込むって筋立てですから、干支の繋がりでみても卯年の大晦日にぴったりじゃない?。で、いよいよ明日は海底におわす龍神さまがラスボス感たっぷりにご登場ってシナリオで、「続く」[わーい(嬉しい顔)]



 みなさま、良いお年をお迎え下さい。




※参考文献・・・「明治初期の金工作品への謡曲の絵画的応用―ウイーン万博とニュルンベルク金工万国博覧会」(種田和加子)



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