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珍しいキノコ、たまご茸を食す [そとごはん、そとワイン]

 11月の初め、いつものLe Chaponでのこと。
 「とっても珍しいキノコが入ってきたんですけど、食べてみません?。今日食べないと、今シーズン、次はいつ仕入れられるかわかりませんよ」と、オーナー・シェフのO氏がヒゲをピクつかせながら、いつになく真面目な顔をして訊いてきた。

 そんなふうに云われては、是非にも食べないワケにはいかないでしょう。
 頂きますよ、と答えたら、「はい、先に写真撮りたいでしょ?」と、調理前のこの珍妙な物体がテーブルに運ばれてきた。

 まるで木から削り出した卵?。それとも皮むきした里芋のようにも見える??。

 「なに、これ?」
 「たまご茸=オーヴォリ(ovoli)って云うんです。こいつはイタリア物だけど、あちらでもなかなか珍重されているキノコなんですよ。これはもう皮剥きした状態です。こんなふうに、キノコ自体の笠が生える以前の完全なタマゴ形で手に入るのは滅多に無いことなんです」
 「面白いね~。どうやって食べる物なの?」
 「せっかくだから生で食べませんか?。カルパッチョ仕立てのサラダにしますから」

 ってコトで、出て来たお皿がこれ↓。

 量があまり多くないので、同様に調理したセップのサラダも一緒に貰って味較べ。
身のしっかりしたマッシュルームとでも云おうか、シャクシャクとした歯応え。セップは一緒に食べるともう少し柔らかくてしんなりした感じ。風味に特有のものはあまり感じなかったけれど、トリュフや松茸同様に人工栽培出来る物ではなく、偶然に任せなければ手に入らない秋の森の恵み。これはこれで、なかなか面白い食経験だった。



 このユニークな形をしたキノコは、やはり珍しいものらしいが日本でも採れるらしい。Netで検索していたら諏訪の北澤美術館のホームページ内(http://kitazawamuseum.kitz.co.jp/suwa/)にある「ガイドボランティアからのメッセージ」と云う記事の中に、自生しているタマゴ茸の写真を見つけた。それは、まるで本物の卵の殻をつき破ってキノコが生えているような写真で、エミール・ガレの「ひとよ茸のランプ」の紹介記事の中でのものだった。

 そうだよ。確かにガレにはキノコをモチーフにした作品が幾つも在るもんね。

 このガレのランプの一番手前の幼菌(かさの開いていない状態のひとよ茸)は、自生しているタマゴ茸にも姿がよく似ている。執筆されたガイドの方も、おそらくそんなふうにお感じになってこの文章を纏められたに違いないだろう。

 タマゴ茸を調べて辿り着いた北澤美術館のHPには思いの外、ガレの作品がたくさん所蔵されているんだということも判って、何だか得した気分。いつか機会があったら、秋の諏訪でガレとキノコが一度に楽しめたら面白いかも知れない。行ってみたいな。




 
 この日はこんなワインを飲んだ。

ル・オー・メドック・ド・ジスクール(2003)AOC / オー・メドック
 マルゴーの格付第3級、CHジスクールがオーメドックに所有する畑の葡萄から造る、所謂セカンドじゃない普及価格帯(これこそディフュージョン)のワイン。僕は読んではいないのだけど、ワインがテーマの某人気マンガで取り上げられて人気急上昇!と、色んなところで目にしていたから、かなり気になっていたボルドーのワイン。

 価格も2000円程度と、本来ならわざわざレストランに持ち込むようなワインじゃないのだが、実はこの前日に自宅で同じワインの97年物を抜栓していたので早々に味を較べてみたかったのだ。どうも97年の方は酸味、果実味ともに薄くて、飲んでいてまるで水のようでアルコールを感じない。正直云って、また飲みたいと思わせてくれるような感じじゃない。それなのに、2003年は美味しいと評判のセールス・トークの乱れ打ち。どの位味に差があるんだろうと思ったら、翌日にすぐ試したくなっちゃったのだな(^^ゞ。

 で、感想とは云うと、確かに甘みも果実味も2003年の方がちゃんとしていて、柔らかなメルロー主体の飲みやすいワインと感じた(でも実際はカベルネ・ソービニヨンとメルロの半々のブレンド)。悪くはない。でも、美味しい美味しいと声を大にして褒め称えるようなポイントも、僕には見つけられなかった。スモーキー?、スパイシー??。個体の問題だったのだろうか、売り言葉に書かれていた特長さえ、今ひとつ僕の印象には残らなかった。


ラ・クロワ・ド・ボーカイユ(2002) サン・ジュリアン
 こちらはボルドーの第2級格付け、デュクリュ・ボーカイユのセカンド・ワイン。

 実はここのところ、僕はボルドーがまたちょっぴり気になっていて、それもセカンドを狙って結構買い込んでいるのだ。しばらく、その分かり難さからフランス・ワインはあまり沢山は口にしていなかったのだけれど、格付けシャトーの物でもセカンドなら値段も手が届くし、飲み頃もそんなに気長に待たずに良いし、そうシビアな物でもない(と、勝手に信じている)。これもシャンパンを気にして飲むようになった所為かもしれないなぁ。読ませて頂いているblogの影響で、フランスワインが何だか以前より身近に感じるようになっているみたいだ。

 オレンジのエチケットが印象的なこのボーカイユのセカンドは、カベルネ・ソーヴィニヨンが65%にメルロ25%、それに若干のカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドが5%ずつのブレンデッド・ワイン。グラスに注ぐと濃い紫色で重く濃い感じもするのだけど、一口含むと若いチェリーのような香りと相まって、さらり爽やかな印象。時間と共に徐々にそのチェリーはドライのプルーンのような、もう少し熟した印象に変わっていったのだけど、フル・ボディとは云われているものの、終始甘みもタンニンも優しくて、とってもチャーミングなイメージのワインだった。


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TaekoLovesParis

たまご茸ovoli 英語のoval(楕円形)に近い語ですね。
切り口は、マッシュルームに似ていますね。私、生マッシュルームのサラダ
好きなんですよ。歯ざわりが良くて見た目にきれい、健康にもいい気がする。
香りはあまりない?
北沢美術館はガレ美術館ともよばれていますね。隣がセイコーサンリツ美術館、一日で2つ見れるのでわざわざ足を延ばす価値があると思います。サンリツ美術館はセイコー社の服部氏の個人コレクション。国宝の「不二山」という銘の光悦作のお茶の茶碗があります。建物が世田谷美術館と同じ内井昭三の
設計で諏訪湖が見渡せ、なかなかいいですよ。

で、ガレのこれ、有名ですよね。でも、笠のひらいてないのがたまご茸とは、
yk2さん、よくぞ見つけた、って思っています。今度、これ見たら、きっと「yk2さんが食べたぶん」って思うでしょう(笑)

ところでワイン、年度でそんなに違うんですね。私はまだ年度まで覚えるに
至ってないんだけど。。オレンジのエチケットのボーカイユがよさそう。覚えて
おかなくちゃ。
by TaekoLovesParis (2006-12-02 22:16) 

yk2

taekoさん、早々にコメント頂きありがとうございます。
北澤美術館はガレ美術館って呼ばれてるんですか、さすがは物識りtaekoさん。ちゃんとご訪問済みなんですね。セイコーサンリツ美術館と併せて、ますます行ってみたくなりました。

今回のガレのランプは、よく見つけたっていうより、本当にたまたま、たまご茸の検索結果にくっついて来ちゃったようなものなんです(^^ゞ。でもきちんとした美術解説文に土地のキノコの写真が添えられているものなので、ガレにもキノコにも興味の有った僕にはまさに打って付けのものでした。

そう云えば、ジャン・レノが出ているトヨタの車のCM知ってますか?。如何にもガレ風のランプにトンボが留まるヤツ。あれもキノコ型のランプですね。

ワインの話。僕もそんなに沢山ヴィンテージ違いを試しているワケではないので偉そうなことは云えませんが、かなり味わいが異なるケースも有るようですね。つい先頃、ブルネロでもそんなコトが有ったばかりです。美味しかったから、と思ってヴィンテージ違いを買ってみたのに、ちょっとガッカリしてしまいました。

ボーカイユの2002年は今飲むと、優しい女性的なワインでした。良い年とされている2000年や03年の味も大いに気になるところですね。
by yk2 (2006-12-03 00:23) 

julliez

yk2さんこんばんは~。

キノコ~きのこ~茸ですね。
しかも最近ボルドーなんですね。
実はアッサンブラージュの勉強でボルドーにも行くのですが、
この夏からシャンパンと平行してボルドーを人生で一番飲んでいる気がします。
ボルドーのフルボディは、ニュアンスがね、違う。
奥深さの層を指している様な気がします。
重い=フルボディじゃないと思いました。
(敢えて言うなら歴史の重みがフルボディ?)
デュクリュボーカイユはこなれて来て始めて深い美味しさが分かるクラシックスタイルで、10年位で飲むにはは申し訳ない気がするワインでした。

でもいわゆるフランスワインのビンテージ評価、
2003年、私はそんなに凄みのあるビンテージには感じません。
むしろ2004年の方が魅力的。
2005年の前だと大方のビンテージは霞んで見えなくなるだろうと思います。

でもね、
昔と違って醸造技術も醸造学も進歩しているし、ビンテージによるアカラサマな落差は返ってありえない気がします。
つまり葡萄の出来によって、長期熟成型にするか、早く飲んで楽しいワインにするか基本的なスタイルを決めるのです。
ワインの一生は瓶の中でも開いたり閉じたりを繰り返しながら熟成していきます。
今日出逢ったワインのコンディションは、もしかしたら彼女が眠りに入っている時だったのか、永遠の眠りに付いた後なのかは判りませんが、
ビンテージの所為だけとも言えないのです・・・。

きっと明日開けてもそのワインは同じ味はしないと思うんです。
それがワインなんです。
(ここまで書いて気づきましたが、殆どc-d-m受け売り名言集だ・・・。)

次に出会うワインは、ゴキゲンがいいと嬉しいですね。(笑)
by julliez (2006-12-05 02:18) 

yk2

julliezさんは寝起きの機嫌は好い方ですか?、それとも悪い方?(笑)。

そうそう。フランスのワインって、ほんとにこんなイチかバチかのイメージ。まさに彼女は眠っているのか、それとも永久に起きてくれないのか、って感じですね。ちょっと起きしなの機嫌が悪いくらいなら可愛いもんなのに(^^;。

ボルドーってそれが難しくって、馴染みにくいんじゃないでしょうか。
一体いつ起きていてくれて、いつまた眠りに就いてしまうんだか・・・。
結局栓を抜いてみなくっちゃ、何も分からないんですよね。

でもね、今はそんなコトもひっくるめてボルドーを飲むのが楽しいんです。

だけど、周りではそんなボルドーには厳しい意見が多いのも事実。
5,000円出そうが10,000円出そうがハズレる時は見事に(それも低くない確率で)ハズレる。そのハズレは、只その時眠ってただけのものかもしれないけど、高いお金出した身としたら、かなり悲しいですよね。だってリリースの頃から較べたら、飲み頃と云われる頃までには年を経て、値段もそれなりに上がってるんですから。

その点、スーパー・タスカンやナパは3,000円出したら結構高い確率で「当たる」でしょ。それもシビアにヴィンテージ気にしなくても波はそんなに大きくなくて、飲み頃も比較的に早いし。マニアじゃないエンド・ユーザーは、どうしたって気楽に早く、美味しく飲めるものの方が好いわけで。

ま、そんな眠れる彼女に、今日こそは触れちゃおうか、それともやはり手を出さずにそっと寝かせて置こうかウジウジ悩むのも、ワインの愉しみの1つなんだと思いますけど。
#なんだか川端康成の「眠れる美女」みたいだ・・・(笑)。
by yk2 (2006-12-06 08:36) 

シェリー

こんにちは~
たまご茸って初めてききました~可愛いですね。
キノコのカルパッチョなんていうのも初めてみましたが
スライスされた画像はとってもおいしそうです☆
ガレのランプってそういう変わった?形のものもあるのですね~
綺麗な花柄のものなどのイメージしかなかったので・・・面白いです。

オー・メドック・ド・ジスクール
実は私も先日1998年を飲みましたよ~
思ってた以上に飲みやすく結構甘めな印象に感じましたが美味しくいただきました~
最近売り文句がすごすぎて・・・美味しいんだけど期待と違うって
なんかわかるような気がします(笑)

ラ・クロワ・ド・ボーカイユ
私このシャトー好きです~優しいイメージありますよね~
前に大好きな人のお誕生日にですね・・・(笑)
悩みに悩んで生まれ年のデュクリュ・ボーカイユを
プレゼントしたことあるんですよ~(奮発!)
カナリ自信のセレクトのつもりだったけど、期待していたような反応が
返ってこなくてとっても寂しかったほろ苦い思い出が甦りました(笑)
5大シャトー!みたいに有名じゃないけど・・・
でもそこが私としてはポイントだったんですけど(TT)

ワインってこうやってその時々の色んなことを思い出せて素敵ですよね~
by シェリー (2006-12-12 18:17) 

yk2

シェリーさん :
きのこのカルパッチョ仕立てと云っても、薄切りにしてパルミジャーノとオリーヴ・オイルと塩胡椒のとってもシンプルなものですよ。

ガレの作品は単純に美しい物からあまりチャーミングとは云えないカエルがモチーフにされていたりと、ほんとに多種多様々なヴァリエーションが有って、見る度新たな発見が沢山ですよね。でも写真で見るよりやっぱり実物を観に行きたいものです。

ジスクールのお話はあとでシェリーさんのところでするとして(笑)、デュ・クリュ・ボーカイユの生まれ年のプレゼントはワイン好きなら嬉しいでしょう~。そんなオールドじゃなくって最新ヴィンテージでも嬉しいハズ。

でもjulliezさんも書いて下さっているように、古いワインは気難しいでしょうから、期待していたような反応が無かったのなら、抜栓時は“眠れる美女”のままだったのかも知れませんね・・・。

古いワインでなくてもボルドーをプレゼントするのは難しいですよね。僕も以前は何度か友人のお祝い事にカロン・セギュールを贈ってたコトがあったのですが、実際に飲んでも、あんまり喜んで貰えてなかったかもと今では反省しています。あれは可愛いのはラベルだけで、若いウチはタンニン強くてちっとも美味しくないと思われても仕方ない・・・(苦笑)。
by yk2 (2006-12-13 22:16) 

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