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『アールデコの館』 の桜 / 東京都庭園美術館 [散歩道の景色]

10年04月04日(日曜)
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 普段の展覧会開催中は借り物の展示品がネックとなって、一般来館者による館内の写真撮影は一切許されていない東京都庭園美術館だが、年に1度くらいの割合で、同館の「建物そのもの」である旧朝香宮邸を公開する企画が行われる。この期間だけは、アールデコ様式に彩られた旧宮邸の内部が自由(ノン・フラッシュなど守るべきマナーは当然アリ)に撮影出来るとあって、僕も以前から一度は必ず訪れたいと思っていたものだ。ここ数年、大抵は夏場頃に行われていた催しなのだが、今年は春先で、それも丁度ソメイヨシノの咲く季節に2週間程の開催予定。緑豊かな美術館の庭園には、あまりたくさんではないそうだが、勿論サクラも植えられている。今度の日曜日ならば、お花見がてら楽しめそうだねと、デジカメを新調したばかりの友人と連れ立って出掛けてみた。



 それにしても寒い!。もう4月だと云うのに。
 この日も生憎の曇り空[曇り]。「肌寒い」なんてレベルは完全にを通り越して、真冬に逆戻りしたかの様な気温だ(※因みにこの日の東京の最高気温は10度ほど)。

 かと云って、カレンダーとこちらの気持ちの上ではとっくに春なので、そう冬の物ばかりも着られず春仕様。シャツ1枚の上にはニットこそ着ているものの、これはかなり薄手のもの。それにライナー無しのスプリング・コートを羽織って・・・なんて出で立ち。これが大失敗。見栄を張らずに、もうちょっと暖かい格好をしてくれば良かった[ふらふら]。とてもじゃないけど満開のサクラの下でゆったりと花を愛で・・・って気分には浸れそうもないなぁ(苦笑)。加えて、今にも雨がパラパラと落ちて来ても何の不思議も無い空の色。これは建物を観るよりも、先ずは降ってない内に桜見物しちゃうのが正解だろうねってコトで、二人してバッグからカメラを取り出し、門から庭園へ直行する。


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 広い敷地を持つ庭園美術館だが、サクラは40本ほどが植えられていると云う。見た目も、確かに本数は多く感じない。でもこれは事前に知っていたこと。見渡す限り一面サクラ、と云う光景は初めから期待していなかった。だが、咲いているその木はみな枝振りも良く立派。緑の庭園の中、園内のところどころにアクセントとなるべく配置されている。一カ所にまとまっている分けではないので、散歩しつつ1本1本を巡る楽しさがあるね。

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 旧宮邸からは一番奥まって離れたところにポツンと1本ある枝垂れ桜は格好の撮影スポット。ひっきりなしにカメラを持った人がやって来て記念撮影をしていく。

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 枝垂れている分、すぐ手元まで花が降りて来てくれているから、僕も寄った1枚を撮ってみた。結果は曇空のお陰で偶然以外の何ものでないけど、うっすら透す光が透明感を花びらに与えてくれて、思いの外綺麗に撮れた。構図はともかく(苦笑)、桜の淡くはかない感じが出ている気がして、ちょっぴり自画自賛(^^ゞ。


 秋には紅葉が素晴らしかった日本庭園へ回ってみると、意外な事にここにはサクラは植えられていなかった。池にかぶさる様な枝振りのサクラが・・・などと勝手に想像していたので、少々残念。サクラどころか、ここには今の季節ほとんど花が咲いていないので、彩りもとても地味。春先の公園の光景としては少々寂しいかなぁ。

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 そんな中、端っこの方で一株ポツンと植わっていた葉のない種のツツジ(友人が名前を教えてくれたのに忘れてしまった^^;)の、ライラックの様な淡いむらさき色がとても目立って映えていた。
 そのお隣は木の下で少々薄暗くなっていた地面から突然生えていた琳派なフォルムのト音記号(^^。葉を見れば、どうやらシダ科の植物みたいだけど、ぜんまい?、まさかこごみじゃないよね??。


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 庭園の西の端、首都高速と目黒通りに接するエリアには、ややまとまってサクラが植えられている。

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 この辺りには、椅子やテーブルが設置されているので、週末は普段から親子連れでちょっとしたピクニックの様に賑わっている場所だ。この日も、本当に寒かったと云うのに、結構な人出。レジャー・シートを広げて、家族や友人同士でお弁当を食べたりもしている。でも、こんな天気だもん、じっと座っていたら、地面は冷たいだろうなぁ。みんな、暖かな陽を受けてのお花見を期待していたんだろうにね。ちょっとお気の毒。



★ ★


 サクラの撮影会はこんなトコでお仕舞い。僕と友人、二人ともお昼ごはんがまだだったから、一旦外へ出て食事をし、その後に建物鑑賞に臨もうと云うコトにする。とにかく寒いから、温まる[いい気分(温泉)]もの食べようよ~。

 この辺りの飲食店事情に詳しい友人が僕を案内してくれたのは、白金では有名なおそば屋さんの利庵(としあん)。庭園美術館からプラチナ通りに出て、松岡美術館方面に向かって数分程歩いた場所にお店は在る。「人気店だから少し待たされるかも」とは聞いていたけど、店の前には8人程度の人が列を成して並んでいた。更にはお店の中でも数人が待っている模様。時間はもう2時近くで、お昼時の混雑なら普通はとっくに終わっているだろうに、寒い中でもこれだけの行列が出来るんだから、相当な評判なんだね。木を基調としたこじんまりとした構えのお店だけど、さすがに陶磁器の良品コレクションを持つ松岡美術館のすぐご近所だけはあって(?)、ガラスの向こうには器や小物類などがセンス好く並べられているのが目に映る。

 コートの襟まで立てて「寒い寒い~」と震えながら待つこと30分近く、ようやくお店の中へ。そこから空き待ち用椅子に座らされ、更にもう数分経った後にようやく店内中央に配された大テーブルへ案内された。普段は食事をするのに行列なんてまるでしたことがないから、長く感じたなぁ~(苦笑)。

 当然、店内はお客でいっぱいなのだが、給仕の店員さんが5人程もいるものだから、小さな店内(10坪ちょっとくらいか)は相当な人密度。僕らは大テーブルなので、当然すぐお隣にも正面にも他のお客さんが座っている。個別のテーブルでならともかく、今この状況でカメラを使うのは、どうにも無粋に思えてしまうから自粛しとこうね(^^;。


 外があんまりにも寒かったから、普通なら当然の様に温かい汁蕎麦を即頼みたいところなれど、「江戸前の美味しい蕎麦屋」だと聞かされているので、やっぱりここはせいろかな。どうやら、店のおすすめはあなご天添えらしいので友人も僕もそれを注文。しばし庭園美術館のサクラの話などして過ごしていると、すぐ向かいの席のご夫婦に卵焼きが運ばれて来た。温かい湯気の上る焼きたての、ふっくらとした黄金色の卵焼き・・・。気が付くと、あちらでもこちらでも卵焼きをつついているではないか。そんな僕の物欲しそうな視線に気付いたのか、友人が「美味しいよ、あれも頼む?」と笑いながら訊いてくれたのが渡りに船。すぐさま飛びついてしまった(^^;。これからまだ美術館に戻るんだからアルコールは控えようと思ってけど、えーいついでだ、お銚子も貰っちゃえ!。熱燗1本付けて下さいな・・・ってな具合に、結局は蕎麦屋酒へと雪崩れ込んでしまったワタクシでございます(^^ゞ。

 いかにもお蕎麦屋の物さんらしい、出汁の香り立つふんわり温かい卵焼きを頬ばりつつ、熱燗をきゅっとやる。ああ、極楽じゃ~[わーい(嬉しい顔)]。海老のあしを揚げたヤツが突き出しとして出されるんだけど、これがカラリと軽く揚がっていて、サクサクとした食感が堪らない。とても美味しくて、お酒がすすんじゃう。

 それでもお銚子は二人で1本だけ。飲み終わった頃に、見計らった様にお蕎麦が運ばれて来た。早速口にすると、固すぎず、好い具合の茹で加減と歯応えで、のど越しも良し。出汁は濃い目なれど、関東人の僕にはスッと当たり前に入ってゆく味。なるほど、これは並ぶ甲斐も有ったってもんだ。確かに美味しいもの。

 蕎麦自体のボリュームはやや軽めなれど、エビのあしの唐揚げ、卵焼き、あなご天と合わせれば、僕には程良い量感。実はデザートのわらび餅もおすすめって話も有って心惹かれたけど、今回は見送り(^^。と云うのも、外での行列こそ2~3人に減ったものの、店内では3~4人が常に空き待ち状態で、どうやら、あんまりノンビリと余韻に浸っているわけにもいかなそう。さらっとした蕎麦湯を貰ったら、ここはささっと席を空けましょう。江戸の蕎麦屋は、そもそも屋台のファストフードがその始まり。本格的に蕎麦屋酒を愉しむ晩の話ならともかく、昼時の長っちりは野暮だもんね(^^。


 そう云えば、と早世されてしまった文筆家で江戸文化に造詣の深かった杉浦日向子さんを思い出す。生前のTV番組の中で彼女は、夕方から蕎麦屋でお銚子を貰って一杯・・・ってのがこよなく好きだと、満面の笑顔で話していたっけ。そんな杉浦さんの愛した江戸の粋を真似て、今度は僕も夕方からこんな店で蕎麦屋酒を愉しんでみたいものだ。


お江戸風流さんぽ道 (小学館文庫)

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 さてさて、ここまでで今回は一旦おしまい。この後は庭園美術館へ戻っていよいよ“アールデコの館”旧朝香宮邸内を見学します。続きはこちら → http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2010-04-29
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