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トーハクでお花見2015 [ART]

2015年04月12日(日曜日)
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 所詮は常設展なんだから、そんなにも毎年続けて通わなくてもいいんじゃない?・・・。そう思いつつも、やっぱりこの時期だから見ておきたくていられなくなって、今年も東京国立博物館の『博物館でお花見を』へと出掛けてしまった。まだまだたくさん在るだろう、僕が見たことのない“花がモチーフのトーハク所蔵品たち”をカメラに収めたくって。

 毎々同じ事を書いていますが、『トーハクでお花見展』には花以外のモチーフの展示品も含まれます。全てが草花にまつわるわけでなく、通常の常設展に草花モチーフが多く織り込まれる趣向であり、このエントリでもそう云った「花」以外の作品も取り上げています。

※参照過去記事 : 『トーハクでお花見2012』 → (http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2012-04-18
※参照過去記事 : 『トーハクでお花見2014』 → (http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2014-04-14




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◆塩見 政誠(しおみ まさなり:1646~1719) / 『比良山蒔絵硯箱』 (江戸時代 18世紀)

 「金の薄肉高(うすにくたか)蒔絵、研出(とぎだし)蒔絵を主体に精細に仕上げられた硯箱(トーハク解説より)。」

 さて、上でもこの展覧会には草花モチーフ以外の作品も展示されている・・・と書いておきましたが、最初からいきなり“草花以外”ですね(^^ゞ。浜と水辺。浮かぶ小舟の向こうには山々が望めます。この山が比良山なんでしょうけど、そもそも比良山ってどこ?(^^;。で、Wiki(→ )で調べてみたら滋賀県琵琶湖の西岸、近江八景と呼ばれる古からの景勝地なんですってね(場所が場所だから、そんなコトも知らないんですか?って某誰かさんに叱られそう・・・笑)。

 折角なので少々お勉強しておきましょう(^^。
 比良山は古くから山風や花の名所として和歌に詠まれた場所だそうで、この蒔絵に描かれている風景も、おそらくは「花さそう比良の山風ふきにけり漕ぎゆく舟のあとみゆるまで」(新古今和歌集)などの歌意を表しているんだそうな。


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◆『桜蒔絵硯箱』 (室町時代 15~16世紀)

「文様は金の薄肉高蒔絵を主体に銀蒔絵を交えて描かれている。蓋の表から身の内に収められた懸子※や金銀製の水滴にいたるまで全てに桜の意匠が取り入れられており、桜の花に寄せる日本人の愛着がそのまま形となってあらわれたよう」(トーハク解説より)。

※「懸子(かけご)」・・・経箱などの縁にかけてはめる底の浅い箱


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◆『桜蒔絵阿古陀香炉』 (安土桃山~江戸時代 16~17世紀)

 器体を六花形に作り金銅製の火舎をつけた香炉で、この名の由来はその姿形が阿古陀瓜(アコダウリ)に似ているところから来ているんだって。そのアコダウリ(紅南瓜とも書く)とはカボチャの一種で、果実は長楕円形で大きく、黄赤色に熟して果皮は平滑で美しいとの事。食用にもなるけど、飾り物として利用される事が多い品種なんだそうだけど、今や幻の古代品種との話もあって、今回はネット上でも実物の写真などは見つけられなかった。


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◆『若松桜蒔絵化粧道具』 (安土桃山~江戸時代 18世紀)


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◆『桜蒔絵角盥』 (安土桃山~江戸時代 16~17世紀)

 むか~し昔の高校生時代に、学校行事だった漢字コンクールのテキストでしか「盥(たらい)」だなんて漢字を見たことがなかったので、思わず「へぇ~~」。実生活ではまず使わないよね。お陰で何とか読めはしたけど、書けって云われても絶対に思い出さないな(苦笑)。

 角盥(つのたらい)は、室内で化粧をする際に湯水を入れておくもので、器に付けられた把手が角(つの)の様に見えることからそう呼ばれているもの。


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◆『桜蒔絵硯箱』 (江戸時代 18世紀)

 「蓋表に金の平蒔絵や螺鈿、鉛の平文などを用いて、桜の花枝を大きく表している。貝を割って使ったり、鉛板の表面を荒らすなど光琳に倣った蒔絵作品によく見られる大胆な装飾である(トーハク解説より)」。


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◆『桜蒔絵十種香箱』 (江戸時代 19世紀)

 組香(くみこう)とは、幾つかの香を焚いてその名を利き当てる遊びのこと。その組香の道具を一纏めに収納する入れ物がこの愛らしい花柄の外箱。19世紀のフランスにおいてジャポニスムが流行したその折、ブラックモンやゴンクールなど日本美術愛好家たちは「日本人は自然を崇拝し愛する民」だと信じて疑わなかったという。
この蒔絵の花びらの配置など見ていると、確かに、シンメトリーや規則性などは一切存在しないわけで、西洋のデザイン感覚からすれば、なんと自由で「自然」そのものなのだろうと思ってしまう。だけども、そこには明らかに考えに考え抜かれた究極の配置、意匠が存在するわけで。古の職人(あくまでも、今でいう芸術家ではない)の美的感覚の洗練を思うと、唯々、ひたすら嘆賞するしかないのです。


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◆本阿弥 光悦(1558~1637) / 『舟橋蒔絵硯箱』 (江戸時代 17世紀) 

 中央が極端に盛り上がったユニークな形をした硯箱。こうして写真で並べてしまうと、これまでの花をモチーフとした可憐な蒔絵作品と比してちょっと地味な作品に思えてしまわない?。素直にそう思えちゃうでしょ??。なんか華やかさが足りないよね~とか云ってしまいそう。でも、実はこれが国宝なんでございますね(^^;。琳派の祖、本阿弥光悦その人の作。

 光悦独特の山形の蓋表には「「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき」の文字が書き散らす様に配されているのだが、これは後撰和歌集に収められている源等(みなもとのひとし wiki→ )の歌

  東路の佐野の<舟橋>かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき

から来ている。敢えて「舟橋」を外してあるのは、この作品の銘はその意匠から察することが出来るから・・・なんだそうだけど、宮廷人でない光悦でさえこうなんだから、何とも昔の人の教養レベルは恐ろしい(苦笑)。


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◆『桜鷹文象嵌太刀架』 (江戸時代 19世紀) 芝山細工


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◆『小桜透鐔(こざくらすかしつば)』 室町時代16世紀


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◆ 『草花文鐔(そうかもんつば)』 室町時代16世紀


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◆無銘 尾張 / 『蟹透鐔(かにすかしつば)』 室町時代16世紀


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◆唐津 / 『銹絵草花文大鉢』 江戸時代17世紀


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◆美濃 / 『織部扇形蓋物』 江戸時代17世紀


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◆仁清 / 『色絵牡丹図水指』 江戸時代17世紀


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◆伊万里・祥瑞手 / 『色絵祥瑞文瓢形徳利』 江戸時代17世紀


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◆伊万里・祥瑞手 / 『色絵山水鹿図平鉢』 江戸時代17世紀


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