SSブログ

自分解釈用「真珠の耳飾りの少女」(その2) [映画・DVD]

 (その1):http://blog.so-net.ne.jp/ilsale-diary/2006-01-19 から続く


 グリートはいつでも頭巾を被っていた。他人の前では決して髪を見せない。厳格なプロテスタント家庭で育った彼女が髪を見せると云う事は「特別な事」なのだ。

 グリートとピーターはとある休日、彼女の実家へと向かうために歩いていた。誰も居ない田園の道すがら、ピーターは君の髪の色は何色かと訊いた。巻き毛かストレートか、長いのかと矢継ぎ早に訊いた。じゃれるようにピーターが気軽にグリートの頭巾に手を掛けると、彼女は咄嗟にきつく拒絶してしまう。グリートの母にも気に入られてすっかり恋人気取りのピーターに対し、フェルメールへの思いを胸の奥に秘めているグリートは今一つ優しく出来ない。この日も彼女の家では娘とその「恋人」の到着を母が待って居てくれると云うのに。

 自分の絵に関心を寄せるグリートに、フェルメールは絵の具の準備をさせるなど、次第に自分の傍で手伝いをさせるようになっていた。

 或る日の事。書きかけの作品のキャンバスを見つめ、グリートが首を傾げている。フェルメールが背後から声を掛けると、色が合っていないのは何故かと問う。モデルのスカートはブルーだったのに、絵の中では真っ黒に塗られていたからだ。

「水差しを持つ女」

 フェルメールはまるで師が弟子に諭すように説明を始める。「ブルーの下地に黒を塗るのは影を表現したいからだ。乾いた後からブルーを重ねることでより効果的な陰影効果が得られるのだ」とグリートに教える。しかし彼女は今ひとつ納得出来ない。すると、フェルメールは窓辺に立ち青空を見上げて、雲は何色に見えるかと尋ねた。雲は白いもの。そんな当たり前のことをどうして今さら、と怪訝な面持ちで窓辺に立ったグリートは、そこで初めて実際の雲の色に気付く。陽の黄色、空の青、影の灰色と様々な色がそこに映えているのを知る。何気ないものに溢れる色の美しさに魅せられ、時を忘れて空に見入るグリート。この小さな出来事で、彼女のフェルメールに対する尊敬と憧れとが入り交じったような恋心はより一層深まることとなった。

 そうして画家は、さらに召使いの娘に自分の仕事を教える。絵の具の原料を見せ、調合の仕方を事細かに。骨炭を実際に磨り潰してみせ、グリートにもやらせてみる。上手くできない彼女の手を「こうしてごらん」と自らの手で包む。突然触れた彼の掌の感触に戸惑い、慌てて手を引くグリート。そんな仕草を見て、フェルメールも彼女が自分を男性として意識しているのだと気付く。しかしそれ以上は何も起きない。もどかしい空気が二人を包む。

 デルフトの冬はとても厳しい。運河の小舟は雪に凍って動けなくなり、洗濯物も干した形そのままに凍てついて固まってしまう程だ。辛い水仕事が終わると、今度はフェルメール夫人に呼ばれて、雪の中お使いに出されることになった。子供が風邪で今すぐ薬を買って来いと云うのだが、この頃のフェルメールの家にはその支払いに充てる現金も無かった。ツケで貰っておいでと命じられたグリートは、支度をしながら、ガラスの向こうの吹雪に小さく溜息を吐く。
 
 いざ出ようとしたその時、彼女はフェルメールに呼び止められる。妻には内緒で絵の具を買って来て欲しいのだと云う。フェルメールが使っていた群青は当時とても高価なものだったと聞く。そんな値の張る絵の具を買うお金があるのなら、すぐにも子供に薬を・・・と思うのが普通だろうけれど、ここでの彼も随分と「家庭」には冷たい描かれ方。ほんとにそんな人だったのかな。
 
 子供を顧みない芸術家も目の前の若い娘にはもう少し優しい。グリートの粗末で薄い肩掛けを心配するのだが、人の気配を感じて彼はさっとその場を立ち去ってしまう。その場を見ていたのはグリートを快く思わないフェルメールの娘、コルネーリアだった。

 雪の中から戻ったグリートは、即座に絵の具を混ぜるようにフェルメールから言い渡される。仕事が山のようにある彼女にそんな時間は無い。無理ですと断る彼女に、彼は時間を作れ、とだけ簡単に云う。仕方なくグリートはランプを片手に寝床を抜け出してまでフェルメールを手伝うようになってゆく。

★ ★

 当時のフェルメールの家には、生まれたばかりの赤ん坊の世話をする臨時雇いの乳母が居た。夜泣きの度に大声で呼び出される乳母と同じ寝室にいた女中・タンネケは、満足に眠れずすっかり寝不足で機嫌が悪い。乳母の寝床を自分の部屋からグリートの居る地下室に追いやろうとフェルメール夫人に苦言を申し立てた。

 しかし夫人はグリートの寝床だからと取り合わない。タンネケも唇を尖らせたままだ。これを聞いていたフェルメールは乳母を地下へやるといい。グリートはアトリエの屋根裏に寝かせれば掃除にも都合が良いし、タンネケはゆっくり眠れるだろうと云った。若く美しいグリートが夫の傍に居るのを快く思わない夫人は、アトリエに宝石が有ることを理由にしてそれを拒むが、フェルメールに外から施錠して朝に開けてやればいいだろうと云われ渋々承諾するのだった。

 もう夜中に抜け出さなくて済むのだとグリートの気持は軽くなっていた。何より、今まで以上にフェルメールのアトリエ、彼の絵の傍に居られることが彼女にとって幸せな事だったのだ。暗闇の地下から、朝日差し込む屋根裏部屋へ移ったグリートは嬉々として彼の仕事を手伝うのだった。

 しかしそんな最中、夕げの献立の内容からまたもや夫人が身籠もったことを知り、グリートはショックを受ける。愛は見受けられないと云うのに、子供ばかりが増える現実。そしてチェンバロを弾く夫人を背中からセクシャルに抱き寄せる彼を偶然に見掛けて、彼が「男」に他ならないことに激しく動揺する。「夫婦」である現実を改めて見せつけられた清純な娘の心は乱れ、そんな気持を無理に抑えようと彼女はピーターと会い、そして口吻を交わすのだった。


「手紙を読む青衣の女」・・・この妊婦は子だくさんだったフェルメールの妻カタリーナがモデルといわれている。

★ ★ ★

 グリートは書きかけのキャンバス(「水差しを持つ女」)を見つめていた。画面左の手前に描かれた椅子がどうしても気になる。このアトリエにあるものは一切その配置を動かしてはならないと初めに聞かされていたグリートは言いつけを破り、その椅子を勝手に絵の構図の外へと動かした。

 その晩、仕事を終えたグリートがアトリエに戻り絵を確かめると、キャンバスの椅子も消されていた。

 二人で並んで絵の具を混ぜる屋根裏部屋。フェルメールは何故椅子を動かしたのかとグリートに尋ねた。「窮屈そうだったから」と答える召使いの娘。自分の絵の構図に意見さえする。画家はこの若く美しい芸術の理解者を愛おしく思い始めていた。彼女の手に触れたい。そう思うが触れられない。この間までは何の躊躇いもなく手を取れたのに、今はこんなにも迷う。今彼女にひと度触れれば、彼自身この恋の行方が何処へ行くのか見当も付かない。そんなフェルメールの波立つ心を察してか、グリートも落ち着かない。彼女の指先も過敏になる。今にもこのまま恋に堕ちてしまいそうな予感。

 そんな二人を引き裂くかのように、階下のアトリエに怒声と共にフェルメールの妻カタリーナと義母が入って来る。心配したとおりになった、べっ甲の櫛が無くなったと云うのだ。もう犯人はグリートだと決め付けている。一緒に部屋に現れた娘コルネーリアの表情から、仕組まれた事を悟ったグリートは、フェルメールに必死に無実を訴える。グリートの言葉を信じた彼は皆の制止も振り切って家中櫛を探し回る。そして娘のベッドの枕元に隠されていたそれを見つけ出す。

 自分の娘の起こした騒ぎだったとは言え、グリートを庇った夫の態度も合わせると夫人には収まりが着かない。今までは表に出しては見せなかった嫉妬心にも激しく火が着き露わとなった。グリートを追い出さんばかりに憤慨するも、母に子供がまた生まれて来るのだから人手は必要だと諫められる。グリートはかろうじて解雇の危機を逃れたのだった。

(“その3”につづく・・・などと書きつつも、ずっと止まってます。スミマセン^^ゞ)


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1