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上野の森美術館で「カフェ・ロトンダ」を観る [ART]

(4月1日土曜日)


 前日までの花冷えも一段落し、この日は気温も暖か。週末に合わせて桜も丁度見頃を迎えるとのことで上野は予想通りの大混雑だった。一面のブルーのビニールシートに人また人、周囲に強く漂うアルコールの匂い、辺り構わず大声で歌う酔っぱらいなどに、なんだかな~と思いつつ足早に通り抜ける。普段ならこの時期の上野公園になんて決して近づかないんだけどな(苦笑)。

 僕がこの日ここへ来たのは恩賜公園の桜を愛でるためではない。上野の森美術館で開催される「写実画壇展」を観るためだ。

 それも、このblogを通じてNet上でお話しさせて頂けるようになったフィレンツェ在住のフレスコ画家、福井洋一さんの作品「カフェ・ロトンダ」を、直にこの目で拝見させて頂きたくてやって来たのだ。そして、もし叶うならば、直接お会いして一言ご挨拶申し上げられたなら・・・。

 福井さんはこの初日だけは会場にいらっしゃるのだそうだが、翌2日にはフィレンツェへ戻られてしまう。

 基本的に僕は結構人見知り(?)な方なので、「はじめまして」はあまり得意な方ではないのだけど、こんな機会は今後そうそう無いだろう。この日絶対にお伺いしなくては後悔する。そう言い聞かせて、自分で自分の背中を頑張って押してみたわけなのだ。

 会場へ入るやいなやいきなり腰が引けた。
思わず「うわっ」と、小さくも声に出してしまったくらいに・・・(苦笑)。

 それは何故かと云えば、この日はこの展覧会の初日とあって画壇会員の皆さんや関係者の方々が多数揃ってのパーティ形式のレセプションが行われていたから。入り口入ってすぐに大きなテーブルが置かれ、その上にはビールやワインに軽食などが用意されている。そして胸に名札を付けた出展者の画家の皆さんが大いに歓談されているわけ。この状態って、とてもじゃないが一般の入場者がすんなり気軽に入っていける雰囲気じゃおおよそないのだ。展示作品にさえおいそれと近づけないくらいだ(苦笑)。

 おそるおそる、その画家の先生方の形成されてらっしゃる大きな歓談の輪を迂回して会場の奥へ進むと、左手に大きな展示ホールがあった。

 ああ、良かった。こちらは普通の展覧会模様だ。めちゃくちゃホッとしてたりして(^^;。

 ふと、真正面を見る。
 すぐに気が付いた。福井さんのあの絵がある。

 一番に、「カフェ・ロトンダ」へと真っ直ぐに向った。

 この絵は、福井さんがご自身のブログ上で何回かにわたって制作過程を写真と共に記しておられたので、作品がどんなふうに完成して行くのかを現在進行形に近い感覚で見せて頂いていたものだ。ようやくその完成作をこの目で直接に鑑賞出来たとあって、なかなかに感慨深い。

 ご自身のお話によると現実には無い空想の街を描いた作品なのだそうだが、大人向きのファンタジーとでも云おうか、このカフェを舞台にちょっとした物語が展開できそうなドリーミーな大作。ブログ上では全く気が付かない発見が幾つも有ったりして、やっぱり絵は本物を観なきゃいけないなぁ、と実感。絵画の写真はやっぱりどうあっても二次的なもので、現物を観る素晴らしさ、楽しさ、喜びは伝えきれないのだ。

 そんなことを絵の前で思い耽っていたら、赤ワインのグラスを片手に福井さんがすぐそばにいらっしゃるのに気が付いた。

 思い切って声をお掛けする。氏はとても物腰の柔らかいジェントルな方で、笑顔で迎えて下さった。福井さんがお優しいのを好いことに、僕はちょっとした緊張のせいもあって、ずっと一人喋り続けていたような気がする。今思うと、何だかとても気恥ずかしい(苦笑)。

 でもそれは、ほんの僅かな時だったけれど、とても楽しい時間だった。

 そもそもは、昨年の旅行中にシャルル・ド・ゴールでブルネロのボトルが割れたことから全て始まったのだ。その話を書いたブログ※を、たまたま福井さんが読んで下さったことがこの日にお会い出来たことと繋がってくれたのだから。(※参照:http://blog.so-net.ne.jp/ilsale-diary/2005-11-22

 「イタリアではワインが割れたりこぼれたりすると縁起がいいんですよ」とあの時、僕を慰めてくれたシエナ在住の知人の話は本当だったみたいだ。ブルネロが割れて、お気に入りのシャツがワインに染まって、パリでの大事な日曜日が洗濯に潰されてしまったあの日は、僕にとっていろんな意味で生涯忘れられない日になっている。さすがに当日はかなりがっくり来てしまったけど、今では、ちょっぴりワインが割れたことに感謝さえしているくらいだ。それでもまぁ、あれがブルネロじゃなくてずっと安いワインだったらもっと良かったのに・・・とは、今でも思う事だけど。

福井洋一さんと料理研究家でイラストレーターの奥様、メイコイワモトさんのホームページ URL : http://www005.upp.so-net.ne.jp/Firenze/


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yk2さん、こんばんは^^
とっても充実した休日を過ごされたんですね。
大好きな絵と、そしてそれを描かれた方と過ごす贅沢な時間。
そういうの羨ましいな^^

絵って、(写真などもそうなんですが)
不思議なもので、実物からは何かが感じられますよね。
それがオーラなのか、よく分からないんですが、
パソコンの画面や、画集からでは伝わってこないものが確実にあります。

ちょっと話がそれるんですけど、
私 今まで、印象派の絵って全然興味がなくって、
正直言ってルノワールの絵とか、
何がいいのかそんなに分からなかったんですけどね。
でも初めて訪れたオルセーで、実物を何枚か目の当たりにして、
その美しさに圧倒されてしまったんですよね。
yk2さんのこのブログを拝見して、なんだかその時の気持ちを
思い出しました。

最近めっきり文化に触れていなかったので、そんな事も忘れてました。
思い出せてくれたyk2さんに感謝です。

そんな文化的潤いにすっかり遠ざかっていた私も、
ようやく今週末は、東京で念願の舞台観劇です。
前から3列目なんですよ~
(って、他に自慢する人がいないので・・・軽く流してくださいね ^^;)

例によってすっかり長くなってしまって、いつもすみません・・・。
by (2006-04-03 21:00) 

yk2

Lahiriさん、こんばんは。

そうですね。充実した、とても楽しい1日でした。
#でもこの日はこれで終わりじゃなかったりして(^^ゞ。

オルセーは初めて行った時には僕も感動しましたよ。もう12年前です。
実は、それまでも絵は好きだったけど、特に自分から美術館に行ったりなんてことは無かったんです。でもオルセーで本物を目の前にしたら、大袈裟なようですが、来て良かった・・・って、感動しちゃってウルウル目に来ちゃったんです。自分でも本当に吃驚しました。その時のドガ、モネ、ロートレックなどから受けた本物の凄さに、これって大好きなミュージシャンのライブに行ってその演奏の素晴らしさに鳥肌が立つようなあの感覚と一緒だ~!って、気が付いたんです。それ以来僕は時々、美術館に出向くようになったわけなのです。

きっと、Lahiriさんがオルセーで感じた「本物のオーラ」も一緒のものだと思いますよ。

>最近めっきり文化に触れていなかったので

好きだから行くだけで、自分では文化的だとかは小難しいコトはち~っとも考えてないんですよ(笑)。学術的なことだって何も知らないし。

>ようやく今週末は、東京で念願の舞台観劇です

それで東京においでなんですね。
思いっきり楽しんで下さいね。良い週末になりますように!。
東京滞在の顛末のBlogも楽しみにしてます(^^。
by yk2 (2006-04-03 23:30) 

plot

yk2さん、ご高覧ありがとうございました。
お会いできてとても嬉しかったです。かみさんが一緒だったら是非ご紹介したかったです。
オルセーのような上質な絵画&鑑賞環境とは正反対の猥雑な空間でしたが、yk2さんやtigerkitaさんにお会いできたのが僕にとっては最高の収穫でした。
これに懲りずにこれからもおつきあい頂けましたら幸いです。
by plot (2006-04-05 05:28) 

yk2さん、こんばんは。


>#でもこの日はこれで終わりじゃなかったりして(^^ゞ。

??続きがあるのかしら???

オルセー、yk2さんも並々ならない思い出がおありのようですね。
そういう思い出の場所がいくつもあるのは、幸せなことなんだなぁって
最近思うようになりました。年をとりましたね・・・。

plotさまの上のコメントでおっしゃっているような
上野の森美術館を猥雑な空間だなんて、私には到底思えませんが、
そこで過ごされた時間と一緒に、その場所もyk2さんの
貴重な思い出の場所になるのでしょうね。

ところで、今日書いたブログの記事にお名前だけなんですけど、
yk2さんのお名前をお借りしてるんですよ。
といってもyk2さんのブログに全く関係のないものなので、
もしお嫌でしたら、文面を改めますのでおっしゃってください。
事後報告で、ごめんなさい!
by (2006-04-05 21:45) 

yk2

Plot(洋一)さま、こんばんは。
先日は本当にありがとうございました。
こちらこそ今後とも宜しくお願い致します。洋一さんとお話ししているだけでもかなり緊張気味だったので、メイコさんがいらっしゃったらもっとガチガチだったかも知れません(^^;。

展覧会はちっとも猥雑なんかじゃなかったですよ!。
むしろ思っていたより遙かに面白かったです。洋一さんの作品以外にも、これいいな、好きだな、って絵が幾つもありました。先日もお話しさせて頂きましたが、乾き切らない絵の具の匂いがする展覧会もなかなか良いものだなぁと再認識しました。なんせ学生の頃に観た日展以来ですからね(笑)。
by yk2 (2006-04-06 00:51) 

yk2

Lahiriさん、こんばんは。

>??続きがあるのかしら???

実はちょっと移動して、もう1軒ブログのネタになりそうな場所に寄り道してたりして(^^ゞ。数日内に書くかも知れませんです。

>オルセー、yk2さんも並々ならない思い出がおありのようですね

そうですね。僕は音楽を聴きに行くのも好きなんですが、オルセーでのあの時の気持ちを超えるような感激にはなかなか出会えません。悲しかったり、悔しくて遣り切れなくて涙がこぼれることは人間よく有ると思いますが、嬉しくて目がジワっと来ちゃうのは自分でも余程だったんだなぁ、と今更ながらに思います。

ブログは早速、楽しんで読ませて頂きました。全然問題無しですよ。
むしろ問題が有るとすれば、「食べ過ぎ」かな?(笑)。
by yk2 (2006-04-06 01:02) 

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