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かもめ食堂と北欧のスタイリッシュ・デザイン [ART]

6月18日(日曜日)

 「コピ・ルアック」

 いつも読ませて頂いてるManbouさんのbloghttp://blog.drecom.jp/manbouswimaround/)で「ルオカラ・ロッキ」の巻に書いてあったへんてこりんなおまじないに導かれて観た『かもめ食堂』は、何だかなんてことない、だけど絶えずクスって笑っちゃう、それでいてほんわり温かく心に優しいオハナシの映画だった。

 フィンランドのヘルシンキでひとり、日本食、それも生姜焼きだの鮭の塩焼きだのおにぎりだのと、まったく普通の日本的家庭料理を出す食堂「ruokla lokki(かもめ食堂)」を始めたサチエ(小林聡美)。

 街行くフィンランドの人達からすれば、幼く見えるほどに小柄な彼女の店には、まだ誰も客が来てくれない。「あんな子供みたいな女の子がひとりで食堂をやるなんて」と、大いなる勘違い(?)も含めた奇異な目で見られるばかり。

 それでも彼女は、いつか訪れてくれるだろう最初の客の為に整然と支度を調え、コーヒーを淹れ続けた。ずっと続けている合気道のせいだろうか、まるで悟りをひらいて達観でもしているかのように、ただひたすら心安らかに。

 そんなある日、ついに待ちに待った最初の客がやって来る。
その客とは日本文化に興味のある一人の若い男子学生で、素直に嬉しかったサチエは彼に対し「あなたが当店の記念すべき最初のお客様なので、今日もこれからもお代は要りません」と気前良くコーヒーを振る舞ってあげる。

 すると、日本かぶれ(と云うよりアニメおたく)のその学生はサチエの好意に甘え、ちゃっかり日参するようになる。コーヒーはずっとタダだし、日本人に日本語で話し掛けられるとあって、彼にはすこぶる居心地が良かったらしい。そして突拍子もなく、サチエにこんな質問をする。

 「ガッチャマンノウタ、シッテマスカ?」



 映画を見て1ヶ月以上も経つというのに、こうしてストーリーを思い出しては、またクスクスと笑っちゃう。

 初めに「なんてことない」って書いたけど、それは本当のこと。特にどうしたってストーリーじゃないんだな。淡々と、でも温かい。毎日、こんなふうに穏やかに過ごせたら好いね、って思わせてくれる。悲しいこともある。遣り切れない思いも胸に抱えてる。でもここに居て、毎日自分のすることをきちんとやってればいい。そうすれば何も臆することなく、前を向いて凛と歩いてゆけそうな気がする、そんな物語。

 そこに、喋らせても喋らせなくても面白い芝居の出来る個性派女優3人。主役の小林聡美に加え、片桐はいりともたいまさこと云う、薄いんだか濃いんだかよく解らない(まぁ確実に強烈ではあるが・・・笑)キャスティングの妙。

 かつて僕は夜中にひとり、「やっぱり猫が好き」を観てクスクス笑ってたクチなので、もしも室井滋が居たならばと思わないこともないけれど、ここには“れいちゃん”の破壊的キャラクターの入る余地は無いかな。彼女一人居るだけで、全く違う映画になっちゃうもんね(笑)。

◆かもめ食堂 Official wab site : (http://www.kamome-movie.com/



 この映画を見てからしばらく経った或る日のこと。
 ふと電車の中刷り広告に目をやると、こんな美術館の企画展のお知らせが目に入って来た。

北欧のスタイリッシュデザイン

 かもめ食堂を観て思ったのは、さりげなく使われているカップやキッチン小物、ワードローブのチョイスがとっても良いってこと。北欧のものって、やっぱりシンプルだけど格好が良いのだ。その後、何気なく街を歩いていると、小林聡美が映画の中で使っていたマルチカラーのボーダー・ストライプが入ったハンドル無しのカップがショーウィンドーに飾られているのに気が付いたり、何気なく横浜そごうの陶器のお店を覗いたらムーミンのコーヒー・カップが並んでいたり。

 そんなこともあって、気になっていたこの企画展。その内必ず見に行きたいな、と思っていたのにうっかりしていたらあっと云う間に日が過ぎて、気が付いたその日が最終日。雨が降り続いて憂鬱な天気だったけど、めげそうな気分に何とか好奇心が勝って目黒の東京都庭園美術館まで出掛けてみた。

 結果を先ず云ってしまうと、思っていたものと多少違った意外な感想を持った。僕の思っていたフィンランドを含めた北欧デザインへのイメージがシンプル&クールなものだったのに対して、今回の展示品は動物をモチーフにしたり花がテーマだったりしたウォームな雰囲気の物が多かったのだ。上の写真にあるような、ちょっと70年代中期的な柄や色遣いも僕のアタマには無くて、ちょと「違った」物。


 
 カイ・フランクは僕が今日唯一名前を知っていたデザイナー。・・・だけどノルウェイの人だと思ってました(苦笑)。或る意味、彼の作品のようなシンプルなイメージが僕にとって北欧食器のデザインのスタンダードだった、かな。

 可愛らしい雌鶏の卵入れは今だったら何を入れるのに使おう?。
こんなのがキッチンにあったら、きっと楽しいよね。

 フィンランドと云えばムーミン。映画「かもめ食堂」の中でも片桐はいりが「実はスナフキンとミーは・・・」などと意外なうんちく話を披露するシーンがある。それを思い出して、またクスッと笑ってしまう。



 雨降りながらも今日は前述の様にこの企画展最終日。人出もそこそこあって、館内の展示物の前は列をなしてのノロノロ渋滞。加えて到着したのが4時近く。閉館までの時間も少なく、ゆっくり鑑賞出来たとは言い難かったけど、なかなか興味深く、楽しい展覧会だった。もう少し、今現在のアラビア窯のカタログにあるような作品(製品)を比較対象として展示してくれると興味の持ち方も更に深まったかな、などとも思ったけど。

 そうそう、初めて訪れた都庭園美術館(旧朝香宮邸)は都会のど真ん中に居ることを忘れてしまいそうな程緑豊かで素敵な場所だった。来月からは企画展はちょっとお休み。この建物自体が鑑賞対象として一般に公開されるんだそう。玄関のガラスがルネ・ラリックだったりして、アール・デコ様式のこちらはこちらで興味深いもの。なにより借り物展示が無いので著作権問題が発生せず、普段は許可されていない写真撮影が可能なんだとか。ついでに緑に囲まれた美術館併設のお洒落なカフェが、高級料亭で有名な金田中の経営だったりするのも面白いではないか。8月には数日間限定で夜間の特別公開もあるのだそう。暮れなずむ黄昏時にライトに浮かぶ夜の宮邸も是非見てみたいもの。遠からず、またゆっくりと訪れてみたい美術館だ。

◆東京都庭園美術館 : http://www.teien-art-museum.ne.jp/

◆アラビア窯のweb site :
http://www.arabia.fi/designor/web/arabiawww.nsf/pages/arabia!OpenDocument&LANG=en


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Manbou

はれれ?この記事、前からありました?
(なんで見逃してたかな~)
また「なんでいまごろ」って言われちゃいそうだけど、
本日発見しましたので、さっそくTBさせていただきますネ。

それにしてもyk2さんて、すごい記憶力。
読んでいて、私もいろいろ思い出しちゃいました。
くすくす ^^
by Manbou (2006-08-15 20:33) 

TaekoLovesParis

yk2さん、この記事、水面下から浮かびあがってきたような。。(笑)
だって6月には私はyk2さんのブログの熱心な読者だったし、「かもめ食堂」
は見たい映画だったから。
で、ようやく、昨日、見てきたんですよ、「かもめ食堂」。
の~んびり流れていく日々。サチエさんがお客が来ないとあせったりせず、
悠然と構え、ほほえんでいるのがフィンランド風?それに対し片桐はいりは、
日参青年に「あんた友達とか連れてらっしゃい」って言うところがおかしい。
ガッチャマンの歌詞は、「空のかなたに、」と友達と顔見合わせて言って
しまいました。

庭園美術館で「アラビア社」の作品の展覧会やっていたんですね。
フィンランドをはじめ北欧の国は日照時間が少なく、家で過ごす時間が
長いので、インテリアや食器のデザインは一目おかれています。
特に色や模様のはっきりしたものが多いです。↑のまさこさんの服の
ような(マリメッコ社の柄かなと。。) 
アラビアは陶器だけど、クリスタルガラスは「イッタラ社」が有名。
アラビアも紺地に白の模様のデザインが長らく続いたけど、yk2さんが
ウォームとおっしゃっているように、最近は白地に紺と黄色の果物柄や
白地に紺と緑の花柄などが多いです。
あ、今度、うちでワインの写真を撮るときは、イッタラのワイングラスにアラビア
のお皿使いますね。
by TaekoLovesParis (2006-08-15 21:12) 

yk2

Manbouさん、こんばんは。

あはは、ずっと書きかけで止まってた記事だったりします。
もうほとんどボツ記事だったのですね(苦笑)。で、今更書き終わったからと云って、最近の日付でupするのもなんなので、こっそりと手を付けた日付で載せたわけ(^^ゞ。

こちらもTBさせて頂きました。今更もう迷惑かな~と思って遠慮してたんです(笑)。
by yk2 (2006-08-15 22:39) 

yk2

taekoさん、こんばんは。

そう。ずっと水面下だったのです(笑)。
こっそりばれない様にupしたのに、まさかtaekoさんが映画を観に行った翌日だったなんて・・・。それじゃバレバレでしたね(^^;。

多分サチエさんが使ってたハンドル無しのマグ(マルチストライプのヤツ)はイッタラのオリゴってシリーズの物みたいです。確証がないので本文には書かなかったんだけど。
http://www.iittala.com/designor/web/iittalacom.nsf/pages/A5330BAE31D48CD5C2256FF0004BA4D4?opendocument&lang=en

それにしてもさすがさすがtaekoさん。劇中で使われていた食器を実際にお持ちなのですね。イッタラのワイングラスにアラビアのお皿、おっしゃれ~~~。

お洒落と云えば、まさこさんの身につけていたものはテキスタイルが凝っていて面白かったですね。とってもエレガントで素敵なんだけど、まさこさんが着てるとそれだけで可笑しいんですもん。ずっとクスクス笑ってました(^^。
by yk2 (2006-08-15 23:12) 

TaekoLovesParis

yk2さん、なぜこの記事を発見したのかというと、「ダ・ヴィンチ・コード」を見た
ので、yk2さんの「ダ・ヴィンチ・コード」を読みに来たのです。そしたら、
前の記事が「かもめ食堂」。昨日見たぶん、ってうれしくなっちゃいました。

北欧の食器は、お料理をおいたとき映えるので日常的に使っています。
マグカップとコーヒーのお砂糖入れのマルチストライプ。印象的でしたよね。
特にコーヒー出すたびに砂糖入れは出てくるから。 これ、伊勢丹で売ってる
のを見たんですよ。もう少し地味な色あいのと2種類あって。でも、ロールストランドって書いてあった、、というわけで、今、ネットで調べてみたら、ロールストランド社(スエーデン王室御用達)製だけど、海外用にはイッタラブランドで出し
ているそうです。アラビア社もロールストランドの分家だそうです。へぇ~。
ロールストランドは日本では有名じゃないですものね。でも伊勢丹で20年前
に伯母にコーヒーカップを買ってもらって今でも使っています。

まさこさんの服地は、マリメッコ社だと思います。北欧を代表する生地メーカー
で、あのとおりテキスタイルが独特。日本でもいろいろな百貨店にはいって
います。
http://www.mottozutto.com/marimekko-top.html
ネットで検索するのが日常的になってきて、yk2さん的生活になってきた(笑)
by TaekoLovesParis (2006-08-17 23:44) 

yk2

ダ・ヴィンチ・コードも観たのですね。あちらの感想は如何でしたか?・・・って、昨日久々に会った友達ともこんなハナシしてたなぁ(笑)。

taekoさんとこうしてやりとりしてると色々勉強になります。
スウェーデンのロールストランド社ってブランド在ってのアラビア社だったのですね。Wikipediaでも見てみたら、ノーベル賞授賞式の晩餐会で使用される食器は決まってロールストランドの「ノーベル」である、だって。ふーん。

>でも伊勢丹で20年前に伯母にコーヒーカップを買ってもらって
>今でも使っています。

まぁ~。叔母上さまはとっても素敵な贈り物をして下さりましたね。
それにしてもtaekoさんがいろいろと良い物をご存じなのは、こういう恵まれた環境にもあるのですねー。ほんとにお嬢さま育ちでらっしゃること!(笑)。

>ネットで検索するのが日常的になってきて、yk2さん的生活になってきた(笑)

なんですか、それ(笑)。
でも、検索してたらイッタラが思ってたよりも値段が手頃なことに気が付きました。シリーズに依ってはもちろんイイ値段の物も在るけど、カイ・フランクのTEEMAのようにデザインのシンプルなタイプは結構買いやすい物なんだなぁ、って。人にプレゼントするのにはホント、好いかも。

いや、違うな。こういうのをサラっとプレゼントしてくれる友人が欲しい!(笑)。
by yk2 (2006-08-18 07:51) 

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