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マイケル・ブレッカーに哀悼を捧ぐ [jazzっぽいの、好き?]

 マイケル・ブレッカー逝く


 その悲しい報せは、今朝届いた。

 1月13日、コルトレーンの系譜を引き継ぐ、当代きってのジャズ・テナー・サクソフォン・プレイヤー、マイケル・ブレッカーが白血病の為、57歳で亡くなってしまった。半年ほど前には演奏再開かと云う話も聞き、徐々に体調も回復し始めているのだろうと信じていたのに・・・。

 マイケルの音楽人生はこれからが最高潮。いよいよ最大のクライマックス=聴かせ処を迎えるという場面に差し掛かったばかり。それなのに、まだ彼が最終楽章まで奏で切っていないというのに、神は強引にもマイケルを天に召してしまった。彼のテナーのリードには、もう2度と彼自身のブレスとハートが吹き込まれることは無い。幕間の客席に、世界中の、それこそ数え切れないほど多くの聴衆を置き去りにした儘で、彼は逝ってしまった。

※過去の関連記事(「マイケル・ブレッカーが骨髄移植治療を要する難病に」http://ilsale.at.webry.info/200508/article_4.html




 僕は様々なアーティストの音楽を、心の赴く儘、自由に愉しんでいる。
 だから、マイケルの音楽のみをひたすらに愛し、聴き込んでいるような熱心なファンの方々と較べてしまえば、ファンだと名乗る事さえおこがましい。ライブも6年前に一度観ることが出来たきり。確か、アルバム、『TIME IS OF THE ESSENCE』をリリースした後の来日公演だったと記憶している。

 コンサートは必ず誰かと一緒に行くもの。僕は1人で食事に行くのでさえ大の苦手な性分。ましてやライブを1人で、それもBlue Noteで観るなんて、とてもじゃないけど考えられもしなかった。それでも初めて、独りきりでも良いから、どうしても観たいと思い立って出掛けたのがマイケルのライブだったのだ。
 
 しかし、それが僕が彼の演奏に直に触れた、初めてで、最後の機会になってしまった。

 学究肌で生真面目そうなマイケルは、終始、ピンと張りつめたテンションの中で、瞳を閉じて一心にテナーを歌わせていた。僕はそんな彼の奏でる音楽から、耳に伝わる音は当然のこと、目に映るもの、心に響くものの全て、それらを一つも取り残すまいと、こちらも何かに挑むような気持ちと緊張感を持って見つめていた。演奏者の真摯な気持ちは会場に敏感に伝わるもの。後にも先にも、あんなにも真剣にライブでの演奏に向き合ったことは、僕には無かった。

 演奏を全て終え、やっとマイケルが柔和な笑みを浮かべた時、彼もきっと今日のこの演奏に自分自身納得出来たんだろうなと感じられて、ああ、好いライブだったなぁ・・・と、しみじみ嬉しさが込み上げて来た事を、今でもとてもよく覚えている。



 先日、僕のこのblogのタイトルはドン・グロルニックのアルバム(写真右)から採っていると書いたけれど、元々は僕はドンを知っていてこのアルバムを聴いてみようと思ったわけではない。アルバムのタイトルの下に、主役のドンよりほんのちょっとだけ小振りな文字で“featuring Michael Brecker”と記されていたから、それだからこそ出会ったアルバムなのだ。

 ドンが数年前に亡くなってしまい、マイケルだけが、この『Hearts and Numbers』に収められた愛すべき楽曲達を天国のドンの為に奏で捧げられる唯一のミュージシャンだと思っていたのに・・・・・・。




 2005年から続いた闘病生活は長く、さぞ辛かったことでしょう。
 今はその痛みから解き放たれて、やっと安らかに、穏やかな眠りに就けていることでしょう。
 天国ではもう既にドンと再会して、早速、久し振りに“NOTHING PERSONAL”辺りを熱くあつ~くブロウしてセッションを楽しんでいるかも知れませんね。

 心よりご冥福をお祈りいたします
 
Don't Stop The Music!


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コメント 16

julliez

yk2さんこんばんは。

久々にお邪魔したら、この訃報。
ものすごく動揺してしまいました。

先日ジャズ好きの生産者がそんなこんな話をしていたのでタイミング的にも本当にものすごくショック。

闘病の苦しみから解放されて今頃はあちらで思う存分ジャムセッションしているかも知れませんね。
ご冥福を祈りながら、彼に捧げたい白ワインを飲むことにします。
(飲む口実かよっ!←いえいえ、彼へのオマージュ。
折しもその時、生産者と私の会話は
彼のイメージにはシュナンブランがぴったりだと思うんだよね・・って言ってたんですよ。)
by julliez (2007-01-16 00:31) 

TaekoLovesParis

亡くなったこと知らなくて、これを見てびっくりしました。
なんか一時代が終ってしまったような気がします。

私の持っているCDは、ジェームス・テーラーのボーカルの曲がはいってる
メセニー、ハンコックといっしょの"Nearness of you"
バラードだから、せつない。メロディをじっくりきかせるサックス。

ブルーノートのライブにいらしたyk2さん、おひとりでいらしたからこそ、
マイケルと時間を共有したという気持ちが強烈だったのでは。
ここに書いてくださった演奏後の柔和な微笑みの他にも、いろいろな
シーンが思い浮かんでいらっしゃることでしょう。

過去記事も読ませていただきました。
yk2さんのマイケルの病気をなおすお役にたちたいという気持ちが
伝わってきて、、、。

彼のCDを聴きながら飲むには、シュナンブランというjulliezさんの
おすすめだけど、シュナンブランは辛口の白ですか?
by TaekoLovesParis (2007-01-16 23:04) 

I'mSorry

 色々なサイトを経てここにたどり着きました。
 今は、非常に寂しい・・・
 HORACE SILVERのIN PURSUIT OF THE 27th MANを聴きながら書いています・・・
 GREGORY IS HERE のマイケルの音色が、どことなく もの悲しい・・・
 20歳からTENOR SAXをはじめて彼の楽曲に巡り会ったときには 非常な衝撃を受けました。
 未だ、彼のコピーも出来ず悶々としている中、以前から漏れ聞いていた白血病で逝去されるとは・・・
 数年前 HANCOCK GROUPで聴いたのが最後の生演奏でした。
 出来ることならば、もう一度あのすばらしいSAXを聴くことが出来ればと、彼の死を悔やんでも仕方ないですが、今となれば早すぎるMr.Michael
Breckerの死に哀悼を・・・
by I'mSorry (2007-01-16 23:19) 

yk2

julliezさん、こんばんは。ちょっぴりお久し振りですね。
忙しいお江戸暮らしでストレスたまってませんか?(^^。

julliezさんがマイケルの訃報に反応して下さるとは思ってなかったので、少し吃驚しました。でも寺井尚子ライブの話の時も、だったんですよね。実は結構隠れジャズ・ファン?(笑)。

生産者さんによるとマイケルのイメージはシュナン・ブラン?。僕が飲むシュナン・ブランと云えば、julliezさんが絶対飲まなそうなクレマン・ド・ロワールばっかりです。ビール代わりのクレマンじゃマイケルに申し訳ないなぁ(苦笑)。

良いシュナン・ブランはどんななんだろう。
マイケルの吹くテナーみたいに切れ味はスパっと鋭く、それでいて刺々しくなくて芳醇で厚みがあって・・・ってなんて勝手なイメージを想像しちゃいます。今度おすすめの銘柄を教えて下さいね。是非、マイケルを聴きながら飲んでみたいと思います。
by yk2 (2007-01-17 00:12) 

yk2

taekoさん、こんばんは。
『NEANESS OF YOU : THE BALLAD BOOK』、もちろん持ってますよ~。コメント読んで、無性にジェームス・テイラーの歌う“Don't Let Me Be Lonely Tonight”が聴きたくなって、今CDを引っ張り出してきたところです。

この曲って、同じ頃サンボーンもリズ・ライトに歌わせてカヴァーしてたけど、聞き比べると、歌伴での二人のサックスの“声”や“歌い方”に個性の違いが出てて面白いんですよね。サンボーンはエッチなくらい(笑)に艶っぽくて、対するマイケルは大きく包み込むように優しい音色ですよね。

優しいから、今は余計に悲しくて、淋しい音色に思えて仕方ありません。
by yk2 (2007-01-17 00:53) 

yk2

I'mSorryさん、コメントありがとうございます。
昨日今日はファンの皆さん、それぞれがご自分の好きなマイケルのナンバーを何曲も繰り返し聴いてらっしゃるでしょうね。僕は昨日は“My One And Only Love”とかバラッド系を聴いていたのですが、今日はあえてファンキー路線。クルマの中ではブレッカー・ブラザース。帰ってきてからはGRP時代のEWIが多く使われてるような頃のアルバムを聴いてます。で、今更なんですが、久し振りに引っ張り出した『NOW YOU SEE IT...』のアルバム・ジャケットがM.C.エッシャーの作品なんだって、今日初めて気が付いたりして・・・、オハズかしい(苦笑)。

僕も、出来ることなら、もっともっとライブを観ておけばよかったと後悔しています。ランディと一緒のシーンも観たかったし、もちろんパットと一緒に演奏する場面も。昔懐かしいサントリーのCMの人形たちのように、イリアーヌと寄り添い“The Continental”を吹くマイケルも見たかったな・・・。

せめて、今はマスターにトラブルが発生して生産中止になってしまっている『Some Skunk Funk』のDVDをきちんと発売して欲しい。映像でも良いから、ライブで吹きまくるマイケルの姿をもう1度と、望んでやみません。
by yk2 (2007-01-17 01:21) 

julliez

yk2さん
私の子守唄は、どういうわけかアート・ブレイキーなわけで、
モダンジャズラバーな父の影響で、薀蓄は分かりませんが、大抵の名曲は耳と体が覚えておりまして・・・。
それからフランス遠征以前はNY在住経歴があるのですよ。
当時、音楽関係の仕事をする友人が多かった所為で音楽はワインと同じくらい私にとっては無くてはならない生活の一部だったわけです。
(残念ながらついぞカリフォルニアワインもバーボンとも「親しい仲」にはなれませんでしたけど。)

で、クレマン・ド・ロワール、
こちらは「仲良し」ですから飲みますよ~。
ロワールの白ワインは大好き。
本当~に良いシュナンと出会ったら、一生離れられなくなりますよ。
赤ワインの誘惑とぜんぜん違うアプローチで、引き込んじゃう。
気が付くと虜です。
(イメージですけど、超大御所プレーヤー達がカベルネやピノだとしたら、マイケルってこういう魅力の白ワインなんですよ。)

でも↑のyk2さんのマイケルのテナーのコメントを思い浮かべたら
あ、もしかしたらコレかも!って思う白ワインが浮かびましたよ。

でも、こちらの合宿生活はフランスより不便がいっぱいで、マイケルを追悼しようと思ったけれどCDありませんでしたわ。(涙)
by julliez (2007-01-17 01:25) 

yk2

追悼しようにもCDがない・・・(^^;。

julliezさんの子守唄は、どういうわけかアート・ブレイキーなわけだったんだ~。いいなぁ~、モダン・ジャズ・ラヴァーなお父さんだなんて。ウチのとは大違いだ・・・(苦笑)。じゃ、“Moanin'”とか聴きながらバブバブ云って育った(笑)ワケね。そっからNY在住じゃ、ジャズが在って当たり前の暮らしですね。

カリフォルニア。
バーボンはともかく、ソノマやルシアン・リヴァーでさえ、そんなにjulliさんにとってはダメダメなんですか~?。僕は幾つか好きなワイナリー在るんだけどなー(苦笑)。ま、今度詳しく教えて頂きましょう。

クレマン、飲むんだ~(ほえ~)。
julliezさんはシャンパーニュ以外は飲まないんだと思ってました(^^;。
本当に良いシュナン・ブラン飲んでみたいけど、これ以上守備範囲広げるとマジ、身が滅びます。ただでさえ、シャンパーニュの所為で金銭感覚マヒしてるのに・・・(苦笑)。

それでもマイケルのテナーに似合うシュナンには興味有り。
by yk2 (2007-01-17 23:34) 

シェリー

こんにちは。ちょっと切ないお話でしたね。
私はマイケル・ブレッカーさんを全く存じ上げなかったので、なんとコメントしてよいか解りませんが・・・
でも・・・こんなふうにyk2さんたちの心の中に、沢山の思い出と音楽がずっとずっと生き続けていて、色々な人の人生のシーンに深く刻まれていて、すごいなぁ。と感じました。
自分はこんなでいいのだろうか・・・って色々考えさせられました。
機会があれば、いつか是非私もマイケル・ブレッカーさんの音楽に触れてみたいです。
ご冥福をお祈りします。
by シェリー (2007-01-18 18:40) 

yk2

シェリーさん、こんばんは。
こんな淋しいお話の時にまでコメントして頂いて有り難うございます。

マイケルはね、ジャズだけじゃなくって、若い頃からスタジオ・ミュージシャンとしてポピュラー・シーンでも星の数ほど吹き込んでいるので、知らず知らず、彼のテナー・ソロやホーン・アンサンブルを耳にしている可能性は大なのですよ。

色々な人生のシーンにあるものは、何も音楽に限ったわけじゃないから、シェリーさんが「すごいなぁ」なんて思うことは何にも無いんですよー(笑)。音楽をそこそこ回数聴きに行ってるから、音楽が幾つか思い出になってるだけ。シェリーさんだって、いろんなシーンでいろんなシャンパン開けて、それぞれ銘柄毎にに思い出が出来ていたりするでしょう?。それとなんら変わりませんよ(^^。まぁ、音楽は感情移入する部分が大きいから、嬉しいにつけ悲しいにつけ、確かに思い出にリンクしやすいですけどね。

シェリーさんもこれから良い音楽にたくさん出会って下さいね。僕は、良い音楽があれば、ワインはもっともっと、より一層美味しくなるんだって信じ込んでますから(^^ゞ。
by yk2 (2007-01-19 01:58) 

plot

マイケル・ブレッカー、全然意識してなかったんだけど、マッコイ・タイナーの「インフィニティ」にフィーチャリングされてたんですね。でもそのCDは日本に置いてきてしまった(iTunesにも入れてなかった。残念)。こっちで“Hearts and Numbers”あたりを探してみようかな。
by plot (2007-01-19 04:44) 

yk2

洋一さん、おはようございます。
洋一さんといい、julliezさんといい、国内と海外を行ったり来たりなさってる皆さんは大変ですね。いざ聴きたいと思った時に、あー音源あっちだ~なんてコトが・・・(笑)。

“Hearts and Numbers”は一昨年くらいにUKで再発されたものが、ほんの少し日本にも流通してたみたいですが、今やまたも絶版状態です。もしかしたらイギリスに近いイタリアの方がまだ手に入るかも知れません。アルド・ロマーノの“CORNERS”をお好きな洋一さんだったら、嫌いな路線じゃないと思いますよ。
by yk2 (2007-01-20 10:58) 

noriko

y2kさん、こんにちは。
いろいろなところでお会いしていますが・・・はじめてコメントさせていただきます。
・・・というのもマイケル・ブレッカーさんは存じ上げないのですが、私の母も56歳で骨髄異型性症候群から白血病で亡くなっており、なんだか切ないなぁ・・・と。。。。
そのときに、亡くなった人のことを思い出して、その人のことをまわりと話をするのが何よりの供養であると聞きました。
y2kさんのあたたかい気持ちにnice!を捧げます。
by noriko (2007-01-24 18:35) 

yk2

てんとうむしさん、コメント頂きありがとうございます。
僕も時々、taekoさんやjulliさんのブログから飛んで読ませて頂いてるんですよ。住まいも横浜の北側なので、こう云う話の時はコメントしちゃおうかな~、なんて何度も思ったのですが・・・(^^;。

で、ひとつだけ、ごめんなさい。HNは「yk2」でっす!。
"Y2K"だと、今はもう懐かしいコンピュータの2000年問題になっちゃいますから・・・(笑)。

てんとうむしさんも、マイケル・ブレッカー氏と同じ病気でほぼ同じような年齢でらしたお母様を亡くされていらっしゃるんですね。まだまだお若く、さぞやご無念だったことと思います。なんてお慰めしたらよいのか・・・。

きっかけはちょっと悲しい話題だけれど、こうしてお話する機会が出来たことを嬉しく思いたいです。今後とも宜しくお願い致します。
by yk2 (2007-01-24 21:48) 

noriko

ごめんなさい!
お名前間違えてしまいました!!!
そうですよね~・・・・ミレニアム危機のときに刷り込まれたY2Kが出てきちゃったのかもしれない。。。
ちゃんっとyk2に刷り込みなおしましたっ(^^;
ということで、これからもよろしくお願いします。
by noriko (2007-01-25 22:18) 

yk2

てんとうむしさん、こんばんは。
刷り込み直し、恐れ入ります(笑)。

そう言えば、ミレニアムの時は記念ボトルだなんだと、ワイン業界も結構大騒ぎしてましたねー。グラスの足が「2000」だったりするシャンパン・グラスとか買っちゃった人は、みなさんはどうしてるんだろう?。普段遣いはしてなさそうだし、ねえ・・・(^^;。
by yk2 (2007-01-26 00:31) 

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