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東風ふかば~小田原・曽我梅林の梅まつり [いつかの出来事]

2月22日(日曜日)
曽我梅林_012.JPG

 おおかた、TVの旅行番組でも見て急に思い立ったのだろう。父が急に河津に桜を見に行くのだ!などと言い出した。それも明日いきなり。ついてはどこか美味しい魚料理が楽しめて、風情のある温泉旅館をネットで調べてみろと、何でもない事のように僕に命じる。ちょっと待ってよ~、それってあんまりにも唐突で無計画過ぎるんじゃありません?。




 「はぁ~?、明日??、冗談でしょ???」
 「どっかあるだろ。探してくれ。落ち着いた雰囲気で料理が良くって、出来たら風呂が素晴らしいトコな。」
 「・・・・・・。」

 河津の桜は今がまさにシーズン。いきなり前日に泊まりたいだなんて、考え無しにもほどがある。横で聞いていた母もびっくりしてあきれ顔。1泊で旅行に出るなど、相談も何もまるで無かったらしい。

 そう。ウチの父は完璧なる独断専横型。数え切れない程の思いつきと我が儘だけをこれでもかっ!と、寄せ集めて人間の形に押し固めたら出来上がっちゃったようなヒトなのだ(苦笑)。

 無言のまま、「本当に行く気有るの?」と母の表情を伺うと、やはり言葉にしないまま、顔を小さく横に2回振る。

 「あのさ、無計画なことは止めておきなよー。桜の季節の河津は前にも行ってるでしょ?。この時季、前日にいきなり泊まりの予約だなんて、それも下調べもせずに良い旅館を探せだなんて、そうそう上手く行くわけないじゃない!。明日の日曜にどこか行きたいのなら、せいぜい小田原辺りへ出掛けることにして、梅の花でも見て、美味しい魚食べて、なんて程度が丁度好いところだよ。」
 「ああ、そっか[ひらめき]。それも悪くないな~。でも日帰りじゃ折角美味しい物を食べに行ってもアルコールがダメだろ。それじゃお前が運転してくれな。よし決定。」
 「あぁ~[exclamation&question]

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 そんなわけで、河津を思いとどまらせるつもりで適当な事を口走ってしまったがために、よく解らない内に運転手役にさせられ翌朝の8時半の出発が決定。それも、僕のクルマはサスペンションが固くて路面の震動を拾うからイヤだと、乗っていくのは強制的に父のクルマ。運転する僕の意向なんてものは全く無視なのだ。結局、気が付いたら10時半にはもう既に小田原の曽我梅林に・・・(苦笑)。

 以前だったらこれまでに絶対一悶着。一緒に梅まつりだなんて有り得るハズもなかったけど、相手ももう年寄りなんだもん、仕方が無いよね(苦笑)。

 時間が早かったせいで梅林周辺の道路は混雑もまだ全く無かったけれど、駐車場には大型のバスが何台も停められている。その駐車場と云うのもおそらく臨時のもののようで、梅林に隣接する、普段は空き地の様な場所。1回止めたら時間に関係なく500円なのだと梅まつりの案内サイトには記してあったのだが、たまたま我々が誘導された駐車場はそことは別の沿道の農家さんのお宅のもの。お支払いは先にしましょうか?と尋ねると、「うちはすぐそこで梅干しやみかんなどを売っているので、そちらで何か買って貰えれば駐車場代はいりませんよ」とはそこのご主人の返事。わかりました、帰りに何か頂戴して行きましょうね。


 そこから道を挟んだ反対側へ渡ると、少し歩いて直ぐに梅林の中へ。

 さすがに訪れている人の数はかなり多い。甘酒やらおでんやら焼きそばやらと、食べ物の屋台が幾つも出て賑わっていて、ちょっとした縁日みたいだ。きちんとした建物の食堂のようなものもある。近隣の農家さんの婦人会も出店を設けていて、おばちゃんたちが手ずから作った物を売っている。梅おこわかぁ、とっても美味しそうだ。でも、我々はあとでヨソへお昼を食べに行くつもりなので、ここでは何も食べられない(苦笑)。


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 この日は風も無く、とても穏やかな陽気。前日は風がとても冷たくて真冬の寒さだったけど、この日はコートなんて要らないくらい暖かだった。好い天気[晴れ]です。シャツにニットだけでも少しも寒くない。春を感じるなぁ~。今日が特別なのか、それともここが温暖の地・小田原だからなのだろうか。


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 それにしても、辺りは一面見渡す限りの梅、梅、梅。

 曽我の梅林は公園でも観賞用のものでもなく、梅の実を採るために植えられているものと聞いていたから、栽培されている種類は1つだけと決まっているものなんだと勝手に思っていた。要は花の色も1つだけなのかな、って。でも、実際にはいろんな色の梅の花が咲いていて、とても華やか。

 それに、きっと去年大琳派展へ行って光琳や抱一に夢中になっていたせいだろう、この木のフォルムなんて、僕にはまさに光琳の屏風のように見えてしまって(^^;。


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 梅の花って、桜と較べたらどこか地味でおとなしい。
 今まではずっとそんな印象を持っていたけど、これだけ見事にたくさん咲いていると地味どころか、もう圧巻だ。それに梅には桜には無い香りの良さがある。辺りにはほんわり優しく花の匂いが漂っていて、何とも云えず心地が良いのだ。自然と菅原道真の句が思い出されちゃうね。にほひおこせよ梅の花、って。


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 ふーん、曽我の梅林は神奈川の景勝50選の1つなワケね。10日前の建国記念日(11日)に来ていたら、流鏑馬も行われていたんだって。それはちょっと観てみたかったかも。


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 区画毎にいろんな梅が在ったけど、ここに植えられていた木は地上50cmくらいと低い位置から横へ横へと分かれて枝を伸ばしている。こんな梅の木を見たのは生まれて初めて。面白い育ち方だなぁ。

 それにしても本当に立派な古木。やっぱりこれにはフランス・ワインで云うところのVieilles Vignesに使うブドウみたいな梅の実がなるのかな~、なんて考えてみたりして(^^;


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 こちらはまた一段と艶やかな花の咲く品種だなぁ~と感心していたら・・・

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 なんのことはない、よくよく花を見てみれば早咲きのサクラではないか。
 なーんだ、河津まで行かなくても桜もここで見られちゃったじゃない(^^。でも、もう盛りは過ぎ気味。艶やかに見えるのは、花弁が落ちて紅く染まったしべや萼(がく)が目立つようになるからなんだよね。


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 花が密集して咲くサクラと見比べると、やはり梅は楚々としている。花と花との間隔が少し空いているせいもあるんだろうな。これは琳派における余白の美に通じるものだよな~と1人で勝手に解釈し納得する(^^;。


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 実は曽我梅林の花が一番に見頃だったのは、この日の数日前(18~19日頃)だったそうで、早咲きの梅はもう既に散り始めてしまっていた。その代わりに満開だったのがこの枝垂れ梅。これも一区画にまとめて植えられていたのだが、鈴生りに付いた花が放射状に広がり、それはもう見事な咲きっぷり。ズラリ並んで咲く枝垂れ梅を一望するのは、なかなかに壮観な光景だった。

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 こちらも枝垂れ梅。まるで食紅で染めたみたいな色合い。和菓子の練りきりが木に成っているみたいだ(笑)。
 そう云えば、琳派展に展示してあった抱一が手掛けた小袖の梅が、こんな感じの色合いだったっけ。


 その後クルマまで戻り、その農家さんの直売所である昇珠園・梅花さん(http://www.umehana.com/catalog/)で梅干し、地元のはちみつ、夏みかんのマーマレードなどの加工品に加えて、みかん1箱(サイズや形は不揃いだけど、なんとたったの1000円)にキウイとレモンを自家用に買い求めて駐車料に代えさせて頂いた。さすがに産地直売。みんな安いなぁ~[わーい(嬉しい顔)]

 結局、わざわざ小田原まで来て梅林で梅を見ていたのはほんの小一時間ほど。
 僕は本当ならこの近所に点在する曾我兄弟縁(ゆかり)のお寺など古刹も巡ってみたかったのだけど、両親はそんなものにはあまり関心無し。ま、どうせ初めからたくさんの距離は歩けないって分かってたけどね。


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 仕方無いや、それはまた今度にしよう。その気にさえなれば、家からそんなに遠い場所じゃなし。それに、満開の梅林越しに、こんなにも近くに富士山が眺められたしね。梅まつりも、なかなか悪くないもんだ(^^。



 
 さて、おなかを空かせて向かったのは小田原市街。
 本当は箱根方面へ行きたかったのだが、湯本で渋滞4キロとのインフォメーションを聞いてあっさり計画変更。で、小田原だったらここで食べようと事前にPCで調べて情報までプリントアウトしてお店の準備をしてあったのだが、いざ電話を掛けようと改めてよくよく見てみれば、何と日曜日はお休みだった・・・。どうしよう[がく~(落胆した顔)]


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 ま、こんな時は闇雲にウロウロせずに、地元の人に訊くのが一番だよね。
 これまたお土産を買いに立ち寄った老舗蒲鉾屋さんの丸う田代http://www.maruu.com/)で、この辺りで駐車場があるところで、お昼に和食を食べるとしたらお薦めはどこ?と尋ねると、「すぐそばに有名なお店がありますよ」と教えてくれたのがこのだるまやさん。まぁ~、なんてレトロな佇まいなんざんしょ(^^。

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 店内に入ると、これまた更にすんごいレトロなムード満載。相当な人気店らしく、お店はお客さんでいっぱいだ。丸うでは和食屋さんと訊いたわけだから、確かに何の間違いも無いんだけど、ズラリとテーブルが並んで活気有るこのお店は「食堂」って雰囲気だね。これにはなんだかパリのシャルティエ(過去記事→ http://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2006-05-07)を思い出しちゃうよ(笑)。

 しかし、我々が案内されたのはその活気有るテーブル席ではなく、たまたま空いた順番で店の奥に位置する座敷席へ。


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 懐石弁当の様なものだと期待して、和食御膳と云うのような名のメニューをオーダーしてみたのだが、ズラズラ~っと全ての料理がいっぺんに運ばれ、テーブルいっぱい、所狭しと皿が並べられた。・・・をいをい(苦笑)。


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 味の方も実際シャルティエだったかも(笑)。ま、それはともかく、昭和初期のようなノスタルジックな雰囲気満載の和空間なお店で面白かったデス。自分たちのメニュー選択のせいもあって、小田原で獲れ獲れ新鮮な地魚料理を満喫!と云う当初の目的とはちょっとだけ違う方向へ行っちゃったワケだけど、たまにはこう云った如何にも観光地風の名物店に入るのも、それはそれで結構楽しいもんだよね(^^。



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