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続・ハルノハナガサイタヨ [散歩道の景色]

09年04月19日(日曜)
090419_Top02.JPG

 念願のデジイチ(EOS KISS-X)を買ってから2度目の日曜日。好く晴れて暖かく、まさに春うららかな陽気の中、先週に引き続いて公園に「練習」へ出掛ける。そう、またもや花の写真を撮るために。今までの僕は、花なんてとてもじゃないけど気にする柄じゃなかった。それなのに、カメラが面白くなって来た最近では様相は一変。街中を歩いていても、道路脇の花壇に植えられた小さな花にさえごく自然に目が行くようになっていて、「ああ、今週末、ウチの近所の公園では何が咲くのかなぁ」などと思い浮かべて、楽しみにニヤついてしまっている。我ながらハマると本当に熱しやすいタチなんだなぁ。こう云う時、普段は血液型なんて全く信じていないクセに、改めて自分の中にAB型の1つの典型を見る気がするのデスね(^^ゞ。

同じ公園の1ヶ月前の花模様はこちら↓
・ハルノハナガサイタヨhttp://ilsale-diary.blog.so-net.ne.jp/2009-03-22





 実は、二週も続けてまたもやこの同じ公園にやって来たのには理由が有った。前の週、あれこれと花の写真を撮っている僕を見て、花壇の手入れをしていた公園の職員のおじさんが「来週はこれがきっと見頃になるよ」と、花の蕾を指差しながら声を掛けて来てくれたのだ。

 「花が大きいからね。一斉に開くと、それはそれは見応えがあるんだよ」。

ぼたん_蕾01.JPG

 おじさんの指先に在った「これ」とは、牡丹(ボタン)の蕾のこと(12日撮影)。分かりにくい横浜ローカルな例えで申し訳ないけど、大ぶりなその蕾は、まるで中華街で売ってる“桃まんじゅう”を思わせる様な色形をしている。中身には蓮のあんこが入ってる?(笑)。

ぼたん_赤04.JPG

 実際、その時もボタンの花は既に幾つかが花が開いていたけれど、花1輪だけ見ても大きくて確かに立派。これが一斉に咲いていたら、それはさぞかし見事だろうなぁ。


 で、家に戻ってその晩早速調べてみる。

 何をって?。

 もちろん、牡丹の花が描かれた琳派作品(^^ゞ。

抱一_流水四季草花図屏風_部分.jpg 抱一_流水四季草花図屏風_牡丹部分.jpg
酒井抱一 / 『流水四季草花図』(江戸時代後期) ※なお上記写真は作品の部分を掲載
 二曲一双、紙本金地着色、162×172cm、個人蔵
※クリックすると別ウインドウで写真が拡大表示されます。

 探してみると、牡丹の描かれた作品はすぐに幾つも見つけられた。この花は俵屋宗達以来、尾形光琳・乾山も好んだ琳派得意のモティーフで、当然、光琳に私淑した抱一も何度も描いていて、僕がここに掲載した『流水四季草花図』(なんと羨ましい、個人所蔵品です)はその中でも特に色鮮やかで美しい作品だ。赤い立葵、青く染まり始めた紫陽花の下に一際目立って大輪の牡丹が蕾も合わせて5輪も描き込まれている。

 ああ、来週はちょうどこんな具合に咲いているところが見られるんだなぁ。


水上景邨_唐獅子図屏風.jpg
水上景邨 / 『唐獅子図屏風』 (江戸末期~明治初期) プライス・コレクション
※クリックすると別ウインドウで写真が拡大表示されます。

 面白いところでもう1枚。唐獅子に牡丹

 そう。高倉健主演映画ですっかり任侠物の代名詞になってしまったかの様なモティーフ。唐獅子牡丹と聞けば、僕などすぐにコワい職業の方々の刺青の柄に直結させて考えてしまうんだけど(^^;、元々の縁起由来は古くから中国の文物に登場するもの。獅子は当然に動物の王として、牡丹もその豪奢な容姿から花の王とされていたことから、勇壮かつ華麗で高貴な取り合わせとして好まれて来た。日本では鎌倉時代以降、特に甲冑や刀剣などの武具装飾として多く用いられたそうで、どうやらそれが「武士=戦う男」のイメージとしてそのまま任侠の世界に踏襲され、映画のヒットが決定打となって広く一般に浸透してしまったんだね。因みに絵画の画題としては、獅子と牡丹が同一画面に描かれることはあまり無く、むしろ珍しいものなんだとか。

 この作者、水上景邨(みなかみけいそん)と云う画家は僕のblog初登場。幕末から明治初期にかけて活動した江戸琳派の流れを汲む画家で、あまり多くの記録は残されていないものの、抱一の弟子の一人と云われている。この『唐獅子図屏風』が出展された2006年のプライス・コレクション展の図録解説に拠れば、景邨は浅草に住んでいたそうで、その界隈の任侠の元締め、現代でも劇中に登場する事もしばしばある新門辰五郎とも交友があったと記してあるけど、それに無理矢理こじつけて、ひょっとして「唐獅子に牡丹」って、江戸末期には既に任侠好みのモティーフとして確立されていたのかも(?)、なんて要らない想像もしてみたりして(^^;。


★ ★


 さて、絵の話はこれくらいにして、そろそろ実物の花、ボタンのお話に。それは事前に想像していた以上の光景で、僕は思わず「うわ~」と感嘆の声を口から洩らしてしまったくらいだった。ホントに見事なんだもの、一斉に花開いてるボタンって。おじさんのおオススメに従って大正解だったなぁ。

ぼたん_ピンク01.JPG

 子供の、いや小柄な大人の女性の頭くらいの大きさは優にあるのではないだろうか。こんなのがボン、ボンと並んでいるんだから全く驚いてしまう。あの桃まんじゅうが、ねぇ・・・(笑)。


ぼたん_赤02.JPG ぼたん_赤01.JPG

 赤いタイプはブライトな色目と若干紫がかったものの2色が在って、何だかまるでブルゴーニュとボルドーのワインを見比べているみたい(?)。


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 抱一の『流水四季草花図』にも描かれている真っ白な花。ピンクからも赤からも、それぞれ花の王と呼ばれた風格が充分に感じられたけど、この純白の花はより一層高潔な気品を醸し出している気がして、その堂々とした咲きっぷりは「王の王」とでも云ったところだろうか。


ぼたん_ピンク03.JPG ぼたん_ピンク02.JPG

 散歩の途中立ち寄ったらしいベビーカーに赤ちゃんを乗せた若いママが、隣にいた自分の母親に興奮気味に話していたのには、立ち聞きするつもりはなかったけど、ついつい吹き出してしまった。

 「ね~、お母さん、私ボタンの花って初めて見るのかもしれないわ。だって、こんなゴージャスなお花[ぴかぴか(新しい)]今まで見た記憶が無いもの。でも、見ようによっては、ちょっと犬のチャウチャウの顔みたいよね~。」

 ゴージャスだ、って今褒めてたそばからもうチャウチャウかい!(笑)。


ぼたん_赤03.JPG

 でも、その彼女の言葉で僕もはたと思ってしまったのだ。僕だって、見知ってる気で居ただけで、以前最後にボタンの花を見たのは何時何処でだっただろう?。子供の頃の我が家の庭で?、園芸店の店先?、それともニュース映像?。確かに、こんなゴージャス(笑)な咲きっぷりを目の当たりにした経験は以前には覚えがないもの。見ていたとしても、その時は花なんかには全く興味が無かったから、気にも留まらなかっただけなのだろうか。僕の花に対する記憶も、ほんと、アテにならないよなぁ・・・(苦笑)。


★ ★ ★


 この日はボタン以外の花も盛りだくさん。

ヤエザクラ_01.JPG

サトザクラ_01.JPG
サトザクラ

 一週間前にも既に咲いていたけれど、ここのサトザクラ(ヤエザクラ)は今が満開。ふくよかなボリューム感有る薄いピンクの花が鈴なりになって咲き誇っているのを眺めていると、何とも穏やかな気持ちでいっぱいに満たされて来る。サクラとしての国民的人気は圧倒的にハラハラと散り際の潔いソメイヨシノなんだろうけど、どことなくおっとりとした豊かさのようなものを感じさせてくれる八重桜も僕は捨てがたい。なんだか、たわわに下がるこの花の付き方を見ていると、まるでサクランボがいっぱいに実ってくれる様な錯覚もして来るでしょ?(^^ゞ。


ツツジ_01.JPG ツツジ_02.JPG
ツツジ

シャクナゲ_02.JPG シャクナゲ_03.JPG
セイヨウシャクナゲ(・・・たぶん^^;)

 ツツジとシャクナゲって花の形も色の具合もとてもよく似ているのに、大きさが違うとこうも印象が変わってくるものなのかなぁ・・・とつくづく。どこか楚々として奥ゆかしいツツジの花からは、控えめでも甘く優しいイメージを感じるのに、このシャクナゲの強烈なまでの色の赤さと咲きっぷりはどうだろう。余りに自己主張が強くて、まるで妖しい毒婦の様とまで云ってしまったら、少々云い過ぎだろうか?。

 それでも、80年代後半にはこんな真っ赤な色した口紅が流行ったこともあったよね。その頃の話、食事の終わり頃に席を立ってお化粧を直して来た女友達をつかまえて、「まぁ~、随分と綺麗に口紅引き直して来たことね~」とからかったら、「そ。ヒト1人食って来たから」と、シレっとした顔で返された事があったっけ[がく~(落胆した顔)][あせあせ(飛び散る汗)]


ハナズオウ_01.JPG ハナズオウ_02.JPG
ハナズオウ

 3月に見た時は、まだ枝から小さな赤紫の芽の様なものしか付いていなかったハナズオウ。どんな花が咲くのだろうと思っていたら、枝から延びることなく直接こんなふうな花(マメ科だけに花の形状も豆っぽい)が咲くんだね。おもしろーい。


ベニハナトキワマンサク.JPG
ベニハナトキワマンサク

 そのハナズオウのお隣も変わった花。こちらも一面ムラサキ色で、この写真だと更に葉なのか花なのかよく分からないと思うんだけど、葉が赤紫色で花がピンクに近い紫をしている。その色のコントラストがなんとも云えず綺麗な花なのだ。トキワマンサクって、そもそもは黄色の花を咲かせるんだそうだけど、これはその変種なんだって。


★ ★ ★ ★


 以下は今回の“名前が分かりませんでした”シリーズ。

原種系チューリップ.JPG
◆原種系チューリップ

 ヒョロっとした赤と黄色の原種系チューリップは、オランダ在住のチューリップ姫ことInatimyさんのお話だと、やっぱりクルシアナ・シンシアとのことで解決済みなのですが・・・


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 その脇に咲いてるこの↑黄色い花がなんだか判らないのです。野生ランとかの一種なのかなぁと調べるも手懸かり無し。


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 もう1つは白いサクラソウのようなんだけど、netで「白いサクラソウ」を画像検索するともっと花心が黄色いんですよねぇ。

 実は前回の花の記事ではサクラソウなんてどうせ琳派の絵には無いだろう、などと気軽にいい加減なことを書いてしまったのだけれど、江戸時代にはサクラソウの栽培、品種改良もアサガオと同様に凄く流行ったんだそうな。もとより小さい花なので図録などで見ても判別は難しそうなんだけど、琳派の絵に描かれていたとしても少しも不思議じゃない様です。失礼しました~[ふらふら]


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コメント 8

cide

お久しぶりです(^-^)/
黄色いのは「キバナエビネ」ではないでしょうか?
ラン科エビネ属の多年草

実家で自生してたので馴染みの花なんですけど、名前はしっかり聞かずに過ごしていたので、
覚え違いって事もあるかも。
by cide (2009-06-03 20:31) 

pistacci

これだけたくさんの牡丹の花は見ごたえあるでしょうね~。
色も、素敵。たしかに“ゴージャス”!
美人の代名詞ですものね~♪
できることなら、すぐにでも行ってみたい衝動に駆られます。
・・・ぅふふ、このシリーズ、とうぶん、続きますかね(笑) 
景邨をのせてくださるところ、さすがです。
結構、突き詰めちゃうところ、お互いにありますからね~by AB型同盟
(あ!なんか、ホームズの赤毛同盟を思い出しちゃった♪)


by pistacci (2009-06-03 23:28) 

yk2

げげっ、cideさま、久し振り~って、どうしてこんなトコ見てんの~~?(苦笑)。
SちゃんとEりん、亀ちゃんが以前の音楽onlyのblogを知ってただけくらいだから、まさかここにcideさんがコメントしてくれるだなんて思いもしなかったよ~(滝汗)。それも全く音楽ネタじゃないから、何だか無性にハズカシかったりして・・・(うひゃ~)。
#いつから知ってた~?。

キバナエビネ、教えてくれてありがとう。画像検索したら同じ花の写真がちゃんと出て来たから間違いないでしょう。

2月のごはん会が流れちゃったまま(あれからEりんがぷっつり・・・なんだ)なので、改めてまた会いましょうね。連絡入れます。昨日みなとみらい・・・てか、横浜美術館のすぐそば歩いてたから、どうしてるかな?と思い出してたトコでした(^^。

by yk2 (2009-06-04 01:04) 

yk2

pistaさん、こんばんは。
そう。なんかね、妙にのめり込むんですよねぇ、血のせいなのか(苦笑)。

花はやっぱり1年は続くかも。だって、最低でも四季草花図の分くらいは植物覚えたいし(笑)。でも、これは半分自分のお勉強みたいなもんなので、あんまり皆さんに読んで貰うには適さない気がして、お話自体も少し前のことだし今回も極力目立たないようにこっそりUPしたつもりだったのですが・・・(苦笑)。

pistaさんは推理物がお好きなんですね。
僕は事件が起きるものや人が死んじゃう話は昔からあまり読まなくって、ホームズの赤毛同盟も読んだことないのです。そんなワタクシですが、梅雨時が憂鬱なクセっ毛同盟ってのがこの世に存在してたなら、今すぐ会長にしてもらえるかも・・・(って何のこっちゃ・・・^^;)
by yk2 (2009-06-04 01:25) 

pace

はまってるね~!!
今度は南京街で蓮餡だね!!
by pace (2009-06-04 06:19) 

Inatimy

チューリップ姫と言われると、かなり照れますね・・・
桃饅頭は、チューリップだけではなく、牡丹のツボミもそうだったとは。
美味しそうな。 いいなぁ。
唐獅子牡丹ならぬ、チャウチャウ牡丹の屏風も可愛いかも♪
ほのぼのだ・・・。
で、そうそう、この白いサクラソウは、もしかして、
「雪車(ユキグルマ)」という品種ではないかしら。 
当たったら、いつか、日本で桃饅頭ひとつ、お願いします♪
by Inatimy (2009-06-04 16:55) 

バニラ

牡丹のつぼみってその時点から迫力満点ですね。
風情があってすてきな公園、写真を撮りながら過ごすとあっというまに
時間がたってしまいそう。
by バニラ (2009-06-06 09:11) 

yk2

コメント頂きありがとうございます。

◆paceさん :

ハマってるのは、リンパと花とカメラの複合的なもんです(笑)。
桃まんじゅうは、実を云うとあんこが多すぎて普段は1人で1個持て余し気味だったりします(^^;。


◆Inatimyさん :

桃まんじゅう、好き?。僕は甘い物は結構平気なんだけど、中華のお饅頭類とか月餅とかって、ボリュームあり過ぎるんだもの。気軽に食後に1個、って感覚じゃないよね。食べきるのが大変(^^;。

チャウチャウ牡丹、ほのぼのしてる?(笑)。

ユキグルマ、画像検索してみました。出て来たのがまさにこれと同じだね。教えてくれてありがとさんです。じゃ、日本に帰って来た時は忘れずに桃饅頭差し上げますから、横浜に寄ってってね(^^。


◆バニラさん :

本格的に花を撮ってる人は三脚立てて、ワンショット撮影するのにすごい時間掛けてるんですよ。こう云う人たちは写真が「作品」って感覚なんでしょうね。僕なんかは、自分で撮った写真並べて図鑑のようにしたいだけなので全く別次元。ササッと撮ってハイおしまい。一眼レフなんて持ってるのが申し訳ないくらいです(^^ゞ。
by yk2 (2009-06-11 00:08) 

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