牡丹咲く / pivoine 2012 [花図鑑]
今年も牡丹の咲く頃になりましたね。同じ花をどう撮影したって、僕の進歩の無い写真が去年とどこか変わるわけじゃないけれど(^^;、今年も懲りずに牡丹の花を写しに出掛けました。好く晴れた青空と、爽やかにそよぐ風。ふんわりと花のいい匂いが運ばれて来て鼻をくすぐります。なんて清々しいんだろう~。1年の内で、今が一番に心地好い季節だものね。
3年ほど前、牡丹や芍薬について色々と検索していた内に、牡丹を題材とした俳句を扱うサイトに行き当たり、与謝蕪村(1716-83 ※または84)の詠んだ幾つかの句に出会いました。
・牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片
その中でも、この句だけは唯一以前にも目にした事があったのですが、デジイチを買って牡丹の花に夢中になるまでは、その情景がまるで僕には思い浮かべることが出来ず、心に強く残るものとは云えませんでした。
それでも今は、これだけの短い言葉の内で、時の移ろう儚い情景をこんなにも美しく切り出してみせた蕪村の牡丹に対する愛情の深さに共感し、しみじみと、花びらが落ちるその瞬間に思いを馳せる様になりました。
そうして、もし、僕が牡丹を自分で育ていたなら、切り花を花瓶に生けたなら、きっと同じ様に思うのだろうと、次の句を読んで、自分で自分を少し笑ってしまうのです。
・牡丹切って気のおとろえし夕(ゆうべ)かな
蕪村って、本当に牡丹が大好きなんですね(^^。
でも、気持ち解るなぁ。
今はこうして見頃を迎えているけど、もうじきに、今年の牡丹の季節も終わってしまう。うっとりと眺められるのは、本当にごく僅かな時間しか与えて貰えないのですから。
さすがに、蕪村ほどには牡丹“だけ”を偏愛していない僕には「気のおとろえし」は大袈裟になるのですが(^^;、それは、例えば僕にとってはまるで海外に居て年に1度しか会えない友人との時間にも似ています。楽しい時間が終わりに近付いて、また暫しの別れを迎えなくてはならない様な気持ち・・・ってトコ。また1年だもの、長いよね、って。それでも気持ちが救われるのは、花と同じ、季節が巡ればまた必ず会えるって解っているから。
◎その他の蕪村が詠んだ牡丹の句
・閻王(えんおう)の口や牡丹を吐かんとす
※波翻舌本吐紅蓮(舌本を波翻して紅蓮を吐く)・・・「閻魔大王が赤い舌を出す」とは、仏弟子の真に嘘偽りの無い事を意味するんだそうです。
・寂として客の絶間(たえま)のぼたん哉
・地車のとゞろとひゞく牡丹かな
・ちりて後おもかげにたつ牡丹哉
・山蟻のあからさま也白牡丹
・広庭のぼたんや天の一方に
◆2012年04月29日撮影 レンズ:TAMRON SP AF60mm F/2 Di II LD