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翼を持つライオン [ART]

Orsay2005_061.jpg

 ふと思い出した、2005年に旅した際にオルセー美術館で撮った1枚の写真。猛々しいライオンの横で、ご夫婦らしき年配のお二人が仲睦まじく座って居られる光景。

 この時の僕は、当初、ただこの彫刻作品だけを撮影するつもりでファインダーを覘いた。でも、こんな会話が聞こえてきそうな気がし始めて、お二人を入れた構図で写真を撮りたくなった。

 「大きい美術館だねぇ、何がどこに飾ってあるのか、まるで分からんよ」。収蔵品リストと睨めっこするご主人の隣で奥さんが呟く。「こんなにも広いと疲れちゃうわねぇ」・・・なんてね(^^。




 迂闊にも、僕はこの時、この彫刻作品の作者もタイトルも控えずに帰って来てしまった。

 あれからオルセー関連書籍を色々と手にしたけれど、残念乍らその中でこの作品に触れている本は1つもない。いつかまた再訪するだろうからその時に調べれば・・・なんて思ってはみたけど、あれからもう18年(※実際は翌2006年も続けてオルセーを訪れてはいるのですが^^;)が経ってしまったんだなぁ。光陰矢の如し、です。

 今回改めて写真を眺めていたら、ふと思った。
 ライオンに跨がる男性の被る帽子のデザインは中世イタリア風?。そうしてライオンは何やら手でがっしりと書物らしき巻物を押さえつけている。

 イタリア、中世、書物。この3つのワードを並べて僕が思いつく物事なんてそう多くはない。ダンテか!?。ひょっとして、彼の『神曲』について調べたら、この翼を持つライオンにまつわる何かヒントが見つかるかも?。

 すると、今度はそれまでさして気にしたことも無い箇所に見落としていたものが在ったことに気付いた。そこには何やら巻物に文字が刻まれているではないか。写真を拡大して見たところ、不鮮明で今ひとつ正確ではなさそうだけど、どうやら「EVANGILE」とある様だ。それはフランス語で「福音」を意味する言葉だそう。

 これをヒントにまたネット上で調べてみた。結果、ダンテ説はあっさり空振り(※因みに神曲にはライオンに触れた記述が結構あるらしい)。だけど、その課程でヴェネツィアの地で羽の生えたライオンがシンボリックな聖獣とされているって情報に行き当たった。ヴェネツィアのライオンは聖マルコのライオンと呼ばれているそう。とすると、オルセーのライオンが押さえつけている巻物はどうやら間違いなく福音書である様だ。

 その方向で狙いを付けてオルセー美術館の収蔵品に検索を掛けてみたところ、意外とあっさり判明致してしまった[わーい(嬉しい顔)]。作家はギュスターヴ・ドロワ(Gustave Deloye :1838生まれ~1899年没 wiki→https://fr.wikipedia.org/wiki/Gustave_Deloye)で、作品名は『聖マルコ』(https://www.musee-orsay.fr/fr/oeuvres/saint-marc-1430)。

聖マルコ福音記者(伊=San Marco Evangelista)→ Wiki
 ヴェネツィアには9世紀から聖マルコの聖遺物が保管され、聖マルコが守護聖人とされた。マルコ及びマルコの福音書はライオンがシンボルとされ、当時のヴェネツィア共和国の国旗には聖人マルコを表す金色をした有翼のライオンと共に、その手には聖書(福音書)が描かれている。



 実はね、今回のこのお話、書き始めは「判らない」って、これまで同様の結論点有りきでスタートしたんですが、書きながら「あれっ?」って気付きが幾つか、こんなふうに見つかって、そこから紐解いていったら予想外に答が見つかってしまい、考えていた筋書きとは別物になってしまった、と云う結末でした(^^;。以前に調べた時は未だ、ネット上にこんなにも美術関係の情報が豊かじゃなかったからなぁ。オルセーのサイトも充実して、今なら写真入りで収蔵作品が見られるけど、こんなにも便利に検索できるページは当時は用意されていなかったから。なんだか隔世の感が有りますね~。でも、ようやく判って、嬉しいな(^^。




<オルセー美術館関連過去記事> 
※以下は日本国内での展覧会記事を除く、現地訪問時のお話のみとなります

 ◆「帰国当日の朝~オルセー美術館へ行く」:https://ilsale-diary.blog.ss-blog.jp/2006-08-19

 ◆「オルセー美術館へ行く#2」:https://ilsale-diary.blog.ss-blog.jp/Orsay-2

 ◆「オルセー美術館に行く#3~印象派の画家たち」:https://ilsale-diary.blog.ss-blog.jp/Orsay-3

 ◆「オルセー美術館のアール・ヌーヴォー」:https://ilsale-diary.blog.ss-blog.jp/2009-09-19

 



 最後にライオン繋がりで、こんな楽曲をご紹介[わーい(嬉しい顔)]


◆Gregory Porter / Be Good (Lion's Song)
 


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